【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月11日)

パレスチナのガザ地区での戦闘休止をめぐるイスラエルとイスラム組織ハマスの交渉に進展が見られない中、イスラエルの戦時内閣は南部ラファでの作戦の拡大を決めたと地元メディアなどが報じました。ラファでは多くの住民がさらなる避難を強いられ、人道危機の深まりが懸念されています。

※中東情勢に関する日本時間5月11日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 掃討作戦で数十人殺害と主張

イスラエルとハマスは、ガザ地区での戦闘休止と人質解放に向け仲介国のエジプトで交渉を続けていましたが、大きな進展が見られないまま、双方の交渉団はエジプトを離れました。

こうした中、イスラエル軍は100万人以上の住民が身を寄せている南部ラファでの作戦を続けていて、10日はラファの東側でハマスを対象にした掃討作戦を行い、数十人を殺害したと主張しました。

さらに地元メディアなどは、イスラエルの戦時内閣がラファでの作戦の拡大を決めたと報じました。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、市内の病院に入院している患者も避難を強いられているほか、イスラエル軍が掌握しているエジプトとの境界の検問所から今月5日以降、支援物資の搬入が許可されず、食料や医薬品の不足が深刻になっていると伝えています。

アメリカのバイデン大統領がラファへの大規模な地上作戦を行えば砲弾などの武器を供与しないと警告する中でも、イスラエル側は強硬姿勢を崩しておらず、人道危機の深まりが懸念されています。

国連総会 パレスチナの国連加盟を支持する決議案 採択

国連総会でパレスチナの国連加盟を支持する決議案の採決が日本時間の11日午前0時半ごろ行われ、
▽日本を含む143か国が賛成
▽イギリスなど25か国が棄権
▽反対はアメリカやイスラエルなど9か国にとどまり、
決議は圧倒的多数の賛成で採択されました。

国連への加盟には安全保障理事会による勧告決議が必要であることから、現時点でパレスチナの加盟が実現する見通しは立っていませんが、総会で140を超える国が加盟を支持したことで、イスラエルとそれを擁護するアメリカの孤立が際立った形です。

地上作戦への不安から多くの住民が避難

ガザ地区南部ラファでは、イスラエル軍が大規模な地上作戦を行うのではないかとの不安から、多くの住民が避難を始めています。

NHKガザ事務所のサラーム・アブタホンカメラマンが10日、ラファ市内で撮影した映像には、車やロバの荷車に家財道具を載せて避難をする人たちの様子が写っています。車いすに荷物を載せて徒歩で避難している人の姿もありました。

現地ではイスラエル軍から退避を通告されたラファ東部の住民だけでなく、市の中心部の住民のなかにも避難を始める動きが出ていて、多くの人がラファの西部やラファよりも北の地域に向かっているということです。

避難を始めた男性は「きょうも午前1時から砲撃などの音がやみませんでした。住民たちはラファへの侵攻を恐れて、すでに避難したり避難する準備をしたりしています」と話していました。

イスラエル軍がラファでの限定的な地上作戦や空爆を続けるなか、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は10日、これまでに推計で11万人がラファから避難したと発表していて、さらに多くの人が避難を強いられることが懸念されています。

国連「ガザ地区に5日間支援物資が入らず」

こうした中、ユニセフ=国連児童基金は10日、ラファから担当者がオンラインで会見を行い「ガザ地区には5日間、燃料や支援物資が搬入されていない」と訴え、人道支援活動が停止するおそれがあると明らかにしました。

また、OCHA=国連人道問題調整事務所やWFP=世界食糧計画によりますと、国連が提携しているガザ地区南部の12のパンの販売店のうち燃料や在庫の不足で8か所が閉鎖し、残る販売店も13日には在庫が尽きるとしています。

さらにWFPなどが配布する食料も11日には底をつく可能性があると警告していて、人道状況のさらなる悪化が懸念されています。

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は10日、イスラエルに対し、人道支援物資の搬入ができなくなり、人々がさらに苦しんでいるとして一刻も早く検問所を開放するよう求めました。

また、イスラエル軍がラファへの攻撃を続けていることについて限定的な作戦だという認識を示した一方で、「われわれは懸念を持ちながら見ている。罪のない人々の命を今以上に危険にさらすことがないように慎重かつ正確であるよう強く求める」と述べました。

米 イスラエルに供与の武器「国際人道法に矛盾する形で使用」

アメリカのバイデン政権は、イスラエルのガザ地区への攻撃をめぐり、イスラエルに供与した武器が「国際人道法に矛盾するかたちで使用されたと評価するのが妥当だ」とする報告書をまとめました。

報告書は、去年1月からことし4月までの間に起きた攻撃について、イスラエルやアメリカの情報機関などの情報をもとに分析し、10日、バイデン政権が連邦議会に提出しました。

この中では、アメリカが供与した武器について「国際人道法の義務や民間人の被害を軽減するための最良の方法に矛盾するかたちでイスラエルの治安部隊によって使用されたと評価することが妥当である」と指摘しています。

ただ、十分な証拠を集めることが難しいことから、現時点で、国際人道法に違反したと結論づけることはできないとして引き続き調査を行うとしています。

アメリカがイスラエルと交わした覚書では国際人道法への違反が確認された場合、武器の供与の見直しなどの措置をとるとされていることから注目が集まっていました。

バイデン大統領は、イスラエルがガザ地区南部ラファへの大規模な地上作戦を行った場合、砲弾などの武器を供与しない考えを示していて、武器の供与をめぐるアメリカの対応が焦点の1つとなっています。

“指導者 ラファに潜伏していない” 作戦の意義問われる可能性も

ガザ地区での作戦を続けるイスラエル軍は11日、100万人以上の住民が身を寄せる南部ラファで、中心部などの住民に退避を求める新たな通告を出し、攻撃の範囲を拡大する構えを見せています。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、イスラエル軍がラファの東側などを空と地上から攻撃し、市民に犠牲者が出ていると伝えています。

こうした中、イスラエルのメディア「タイムズ・オブ・イスラエル」は11日、複数の当局者の話として、イスラム組織ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル指導者はラファに潜伏していないと伝えました。

現在の潜伏先は特定できていないものの、ラファから8キロほど北のハンユニス周辺の地下トンネルにいるという情報機関の分析があるとも伝えています。

イスラエルはこれまで、シンワル指導者が去年10月7日のハマスによる大規模な奇襲攻撃の首謀者だとして、その殺害を軍事作戦の主要な目標に掲げてきました。

ラファでも精密なテロ掃討作戦を行っていると主張していますが、攻撃の拡大によって住民のさらなる犠牲は避けられず、イスラエル軍の作戦の意義が問われる可能性もあります。