“イスラエル ラファでの作戦拡大決定” 多くの住民が避難

パレスチナのガザ地区での戦闘休止をめぐるイスラエルとイスラム組織ハマスの交渉に進展が見られない中、イスラエルの戦時内閣は南部ラファでの作戦の拡大を決めたと地元メディアなどが報じました。ラファでは多くの住民がさらなる避難を強いられ、人道危機の深まりが懸念されています。

イスラエルとハマスはガザ地区での戦闘休止と人質解放に向けて仲介国のエジプトで交渉を続けていましたが、大きな進展が見られないまま、双方の交渉団はエジプトを離れました。

こうした中、イスラエル軍は100万人以上の住民が身を寄せている南部ラファでの作戦を続けていて10日、ラファの東側でハマスを対象にした掃討作戦を行い数十人を殺害したと主張しました。

さらに地元メディアなどは、イスラエルの戦時内閣がラファでの作戦の拡大を決めたと報じました。

ラファではこの日、多くの人たちが車やロバの荷車、それに車いすにまで荷物をいっぱいに載せ、避難していました。

また、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、市内の病院に入院している患者も避難を強いられているほか、イスラエル軍が掌握しているエジプトとの境界の検問所から今月5日以降、支援物資の搬入が許可されず、食料や医薬品の不足が深刻になっていると伝えています。

アメリカのバイデン大統領がラファへの大規模な地上作戦を行えば砲弾などの武器を供与しないと警告する中でも、イスラエル側は強硬姿勢を崩しておらず、人道危機の深まりが懸念されています。

現地国連職員「5日間支援物資が搬入されず」

イスラエル軍がガザ地区南部のラファへの攻撃を続ける中、現地の国連職員は10日、5日間支援物資が入っていないと明らかにするなど、人道状況の悪化が続いています。

ユニセフ=国連児童基金の担当者は10日、ラファからオンラインで会見を行い「ガザ地区には5日間、燃料や支援物資が搬入されていない。状況が改善されなければ燃料不足で人道支援活動が停止するおそれがある」などと訴えました。

またOCHA=国連人道問題調整事務所やWFP=世界食糧計画によりますと、国連が提携しているガザ地区南部の12のパンの販売店のうち燃料や在庫の不足で8か所が閉鎖を余儀なくされ、残る販売店も13日には在庫が尽きるとしています。

さらに、WFPなどが配布する食料も11日には底をつく可能性があると警告していて、人道状況の悪化が続いています。

米高官「大規模な地上作戦示すものとまでは言えない」も懸念

イスラエル軍がガザ地区南部のラファへの攻撃を続けていることについて、アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は10日、記者団に対し「われわれがこの24時間で見てきたものは大規模な地上作戦を示すものとまでは言えない」と述べて、限定的な作戦だという認識を示しました。

一方で「われわれは懸念を持ちながら見ている。罪のない人々の命を今以上に危険にさらすことがないように慎重かつ正確であるよう強く求める」と述べました。

また、人道支援物資の搬入ができなくなり、人々がさらに苦しんでいるとしてイスラエルに対し、一刻も早く検問所を開放するよう求めました。

イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放に向けた交渉の状況については「明らかに合意に達しておらず非常に残念だ。われわれは双方が議論を継続するよう懸命に努力している」と述べ、働きかけを続ける考えを示しました。