【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月8日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる8日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、およびロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア軍がミサイルや無人機で大規模攻撃 発電所など被害

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、SNSでキーウ州や南部ザポリージャ州など7つの州で、ロシア軍による50発以上のミサイルや20機以上の無人機による攻撃を受けたと発表しました。

地元メディアによりますと、キーウ州ではインフラ施設が損傷し、2人が入院したということです。

ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相は、各地で発電所や送電施設が攻撃されたとしたうえで「敵は、電力の供給能力を奪おうとしている」としてロシアを非難しました。

ハルシチェンコ・エネルギー相は先月、NHKとのインタビューで「火力発電所のおよそ80%が損害を受けた」と述べていて、ウクライナではエネルギー関連施設の被害が深刻な状況になっています。

国営のロシア通信は8日、ロシア軍が西部リビウ州にある鉄道施設や欧米諸国から供与されるF16戦闘機の受け入れ準備が進められていた軍の飛行場を攻撃したとしていて、民間施設と軍事施設の双方への攻撃が強まっています。

プーチン大統領の元側近 “戦争は権力維持の手段”

ロシアのプーチン大統領の元側近の1人、ミハイル・カシヤノフ元首相はNHKの取材に対して「戦争は権力を保持するためのものになっている」と述べ、ウクライナ侵攻はプーチン氏の権力維持の手段になっているとして、戦時下の強権的な体制は長期にわたって続くという見方を示しました。

カシヤノフ氏は、2000年から始まったプーチン大統領の1期目に首相をつとめましたが、政策をめぐる対立などから解任され、その後は野党勢力の一員として、政権の批判を行ってきました。

去年11月、ロシア政府から外国のスパイを意味する「外国の代理人」に指定され、現在はロシアを離れてラトビアで暮らしています。

今月3日、NHKのオンラインでのインタビューに応じたカシヤノフ氏は、ウクライナへの軍事侵攻について「西側諸国とウクライナに即座に交渉のテーブルにつかせ、プーチンが成し遂げたことを固定化するために戦線を大規模に突破し、再び首都に向けて攻勢をかけるのではないか」と述べ、プーチン政権は、ロシアに有利な形での侵攻の終結を目指し、ウクライナ側への圧力を強めていく可能性があると指摘しました。

そのうえで「政権内で高い地位にある人たちのほとんどは戦争に反対している」としましたが「この戦争は権力を保持するためのものになっている」と述べ、プーチン大統領にとって、ウクライナ侵攻は権力維持の手段になっているとして、戦時下の強権的な体制は長期にわたって続くという見方を示しました。

カシヤノフ氏はプーチン大統領の新たな任期に関連して「彼の周囲の中に信頼する人物がいることは確かだ」と述べ、後継者の選定も意識される可能性に言及しました。

ただ「民主主義的な国への道に戻すのは簡単ではない。プーチンさえいなくなれば、次の日から平穏な暮らしや民主主義があらわれるというわけではない」と述べ、後継の体制も同様に、強権的になる可能性があると悲観的な見方を示しました。

一方、カシヤノフ氏は先月、ショイグ国防相の側近のイワノフ国防次官が収賄の疑いで逮捕されたことについて「ショイグ国防相に対する深刻で強いシグナルだ」と述べ、強固な関係と言われるプーチン氏とショイグ氏の関係に変化がでないかなど表面化する政権内の動きの背景に注視していく必要性を強調しました。

ゼレンスキー大統領などの暗殺計画に関わったか 2人拘束

ウクライナ保安庁は、ロシア側に協力しゼレンスキー大統領をはじめ政府高官の暗殺計画に関わった疑いでウクライナで要人警護を担当する部署の幹部2人を拘束したと発表しました。

ウクライナ保安庁の7日の発表によりますと、拘束されたのは、ウクライナで要人警護を担当する国家警備局の大佐2人で、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁に機密情報を漏らし、政府高官の暗殺計画に関わった国家反逆などの疑いが持たれています。

ロシアが暗殺の対象にしていたのは、ゼレンスキー大統領のほか、ウクライナ保安庁のマリュク長官、ウクライナ国防省のブダノフ情報総局長などの政府高官だったということです。

暗殺計画は、ウクライナ側の工作者が対象となる人物の行動を観察してロシア側に情報を提供し、ロシア軍がその人物がいる建物にミサイルや無人機による攻撃を仕掛けるなどの内容だったとしています。

ウクライナ保安庁のマリュク長官はSNSでロシアのプーチン大統領の新たな任期が始まったことを踏まえ「就任祝いとして贈られるはずだったテロ攻撃は失敗に終わった。しかし、われわれは敵が強力で経験豊富だということを忘れてはならず、侮ることはできない」としてロシアによる工作活動に警戒感を示しました。

プーチン大統領 通算5期目となる任期始まる 2030年まで6年間

ロシアのプーチン大統領は7日、モスクワのクレムリンで行われた就任式で宣誓し、2030年までの通算5期目となる任期が始まりました。

演説を行ったプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻に参加する兵士たちに謝意を示すとともに「われわれは結束した偉大な国民だ。あらゆる国難を乗り越えて、計画したことをすべて実現する。共に勝利しよう」と呼びかけました。

プーチン大統領は8日、旧ソビエトの各国首脳を招いて「ユーラシア経済同盟」の会議を開くほか、9日は、第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを記念する式典に臨む予定です。

プーチン大統領としてはウクライナ侵攻で欧米との対立が深まる中、友好国との連携をアピールするとともに、国民に改めて結束を呼びかけるものとみられます。

死亡したナワリヌイ氏の妻 SNSでプーチン政権を非難

プーチン大統領の就任式に合わせて、死亡した反体制派の指導者ナワリヌイ氏の妻のユリアさんは7日、SNSで動画を公開し「プーチン政権はうそと腐敗から成り立っている。私たち全員から日々盗んでいる巨額の金を使って、平和な都市を攻撃したり、治安部隊が警棒で人々を殴ったり、うそのプロパガンダを広めたりしている」と述べ、プーチン政権を厳しく非難しました。

そして「私たちの国は今、うそつきでぬすっとで殺人者でもある人物によって支配されているが、これは絶対に終わることになる。諦めないで。真実は勝つ」と述べ、プーチン大統領に対する戦いを続けるよう支持者に呼びかけました。

ナワリヌイ氏がことし2月に死亡したあと、妻のユリアさんはロシア国外を拠点に夫に代わってプーチン政権への批判を続けています。

ロシア ベラルーシ 核戦力巡って連携の動き 欧米をけん制か

ロシア国防省は今月6日、プーチン大統領の指示を受けて戦術核兵器を扱う部隊による軍事演習の準備を開始したと発表しました。

これに続いて7日、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのフレニン国防相はルカシェンコ大統領から戦術核兵器を扱う部隊の点検作業を行うよう指示があったと明らかにしました。

ロシアのプーチン政権は、ベラルーシでロシアの戦術核兵器の配備を進めていてベラルーシの安全保障会議の高官は今回の措置はロシア軍の演習に合わせた動きだと説明しています。

ベラルーシの国営通信によりますと、ルカシェンコ大統領は7日に行った演説で、ベラルーシに配備された戦術核兵器は抑止目的だと主張したうえで、欧米側が軍事的な挑発行為を行っていると非難しました。

そのうえで、ルカシェンコ大統領はモスクワで8日にプーチン大統領と会談し、今後の演習について協議するとしています。

ロシアとベラルーシは、核戦力を巡って連携した動きを見せることで欧米側へのけん制を一段と強めるねらいがあるとみられます。