イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で半年となりましたが、イスラエル側は人質の奪還とハマスの排除を掲げて戦いを続ける構えを崩していません。
戦闘が長期化するなか、ガザ地区を撮影した衛星画像を分析したところ、ことし1月13日時点で一部の道路しか確認できなかった場所に、2月14日の画像では南北にのびる地区を分断するように、東西を横断する道路が整備され始めているのが確認できます。
ガザ地区 衛星画像で東西横断道路を確認 管理政策の転換か
イスラエル軍が攻撃を続けるガザ地区で地区内を分断するように東西を横断する新たな道路が建設されていることが、衛星画像の分析から分かりました。専門家は、イスラエル軍が今後、ガザ地区を内部から南北に2分割して管理することを見据えている可能性を指摘し「その場合、この20年の管理政策が大きく転換したことになる」と分析しています。
分断するように東西を横断する道路
そして3月12日の画像で、さらに道路は延伸していて、地区の西端の地中海まで伸びています。
また、この東西を貫く新たな横断道路と地区内を南北に貫く主要道路「サラハディン通り」が交差するさら地に、3月20日の画像では、車が集まっている様子や構造物が建設されているのがわかります。
4月4日の画像ではさらに建設が進み、壁のような構造物が確認できるほか、2本の細長い工作物が整備されているように見えます。
専門家「管理政策が大きく転換」
イスラエル側が整備を進めている一連の道路や構造物についてイスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センター鈴木啓之特任准教授はヨルダン川西岸でも同じような施設がみられるとして「攻撃用のインフラというよりは戦後を見据えた治安維持のために建設していると考えられる。ガザ地区を南北に分割して機動性のある車両で抗議デモなどがあった際に迅速に対応するとともに、道路が交差する場所には人や物の行き来を管理する検問所のようなものが建設されている可能性がある。今後さらにコンクリート製の分離壁と呼ばれるようものや監視塔のようなものが建設されるのかどうかが注目される」と分析しています。
その上でイスラエルのネタニヤフ首相がことし2月に戦時内閣に戦後のプランを示し、ガザ地区の治安に関してはイスラエルが担うとしたと伝えられていることを挙げて「この道路を見るかぎり、ガザ地区を内部から分割して人や物の行き来を管理するインフラと考えるのが妥当だ。2005年以降、イスラエルはガザ地区を外から封鎖する形で管理をしてきたが、この道路の建設によって地区内部に部隊が展開し、治安維持を担うことになれば、これまでの20年間のイスラエルによる管理政策が大きく転換したことになる」と指摘しています。
ラファ周辺では
イスラエル軍のガザ地区南部のハンユニスからの撤収が発表される中、イスラエル軍は、今後、どのような作戦に踏み切るのか。
その動向を不安な思いで見ているのが地区南部に避難を余儀なくされた多くのパレスチナの人たちです。
ハマスによる越境攻撃をうけて去年10月7日に始まったイスラエル軍の軍事作戦。イスラエル軍の攻撃は、当初の地区北部から一時的な戦闘休止が終わった12月からは南部のハンユニスや中部などにも広がりました。
戦線の拡大とともにガザ地区の南の端、エジプトとの境界に近いラファに多くの人が押し寄せました。
付近をとらえた衛星画像をみると、去年11月中旬の時点では国連施設の近くにテントが集まっていましたが、ことし1月上旬には周辺の土地に膨大な数のテントが立てられたことがわかります。
4月1日の画像を詳しくみると、テントは市街地に隣接した250ヘクタール以上に及ぶ土地に立てられているほか、ラファの市街地でも住宅の間にある農地などを利用して隙間に入り込むように広がっています。
また、一部では道路を覆う形でテントがひしめいているのも衛星画像から見てとれます。
人口25万ほどのラファに、国連はガザ地区全体の人口の半数以上にあたる150万もの避難民が押し寄せ、施設に身を寄せたり、テントで暮らしたりしているという見方を示しています。
多くのテントがインフラのない場所に立ち、生活環境は劣悪で、感染症の拡大などが指摘されています。
専門家「避難生活そのものが非人道的な状態」
鈴木特任准教授は「収容できる人数の限界を超え、避難生活そのものが非人道的な状態にある」と述べ、テントなどで暮らす人たちはすでに命が危ぶまれる状況だと指摘しました。
今後の展開については「今回のガザ地区への軍事作戦が始まったときと同様イスラエル側が明確に宣言をせずに段階的に攻撃を強めることも想定される。ラファに地上部隊が展開されれば、避難している人々の命を直接危険にさらすことになる」と述べ、さらに危機が拡大することへの懸念を示しました。