国連 衛星センター“ガザ地区 全体の建物の35%が被害”と分析

国連の衛星センターは、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が去年10月7日に始まって以降、ガザ地区ではことし2月までに全体の建物の35%が被害を受け最も被害が大きい北部の地域では半分以上の建物が被害を受けたとする分析を明らかにしています。

専門家は「近年のガザ地区での戦闘と比べても桁違いの被害が出ている」と指摘しています。

国連の衛星センターは、ガザ地区の衛星画像を使って建物の被害の分析を行い、去年10月7日以降、その結果を5回、発表しています。

これらをもとにNHKが地図に可視化しました。

ピンク色で示したのが建物の被害が確認された場所で、濃い赤色ほど被害の程度がひどかった場所を示していて、建物の被害が戦線の拡大に伴って北部から南部に広がっていく様子が分かります。

ことし2月29日の画像に基づく最新の分析では、建物の被害は8万8000棟余りに上り、衛星センターは、ガザ地区全体の建物の35%に上ると指摘しています。

地区内の県別では、
▼北ガザ県で51%と建物の半数以上が被害を受けているほか
▼ガザ市を含むガザ県で45%
▼ハンユニス県で44%の建物に被害が出ているということです。

被害が急増したのは去年11月26日からことし1月上旬の1か月余りにかけてで、全体の3分の1余りの建物の被害が集中しています。

この時期、イスラエルは11月24日から7日間の戦闘休止のあとの12月1日に戦闘を再開し、南部ハンユニスへの激しい攻撃を行うとともに北部でも戦闘を続けていました。

イスラエル・パレスチナ情勢に詳しい東京大学中東地域研究センター鈴木啓之特任准教授は「ガザ地区全域の建物を壊すような激しい戦闘だということがみてとれる。過去の2008年から2009年、2014年の戦闘と比べても桁違いの被害と言える。イスラエル軍が遮蔽物を嫌って、地域を一掃していることやハマスなどに圧力をかけるため地区全体に空爆を続けていることが被害につながっているとみられる」と指摘しています。

その上で「国際社会がイスラエル軍の行為を止められなかったことはガザの人々に大きな失望をもたらし、国際規範や国際法への信頼を大きく毀損したと言わざるをえない。パレスチナの人々は将来への希望や正義が実現される可能性があったからこそ、社会的道徳や秩序を保ってこられた側面は否めない。日本を含む国際社会は戦後復興にこれまで以上に主体的かつ大胆に関与していく必要がある」と強調しました。