背番号「1」と「10」 “2枚看板”でつかんだ初優勝 健大高崎

「佐藤の指が心配なので、まだ投げさせてください」

センバツ高校野球の決勝で先発し、8回2失点の力投でチームを初優勝に導いた高崎健康福祉大高崎高校(群馬)の背番号「10」石垣元気投手のことばです。
「佐藤」とは佐藤龍月投手。大会中に指のまめをつぶしたエース番号「1」です。互いに高め合ってきたライバルの存在が大舞台での好投につながりました。
(甲子園取材班 山内司)

2年連続7回目のセンバツ出場の健大高崎は、佐藤龍月投手と石垣元気投手の2年生の「2枚看板」で決勝の舞台にたどりつきました。

2人はよきライバルとして得意の球種を教え合うなどして、ともに成長を続けてきました。

背番号「1」 佐藤龍月 投手

この大会、背番号「1」をつける佐藤投手は準々決勝までの3試合に先発。

19イニング無失点と好投していましたが、準々決勝の途中で中指のまめがつぶれ、長いイニングを投げることが厳しい状況となりました。

背番号「10」石垣元気 投手

一方、背番号「10」の石垣投手は準々決勝まではリリーフで、準決勝は佐藤投手に代わって先発を任されましたが、コントロールが定まらず再三のピンチを招くなど納得のいかないピッチングが続いていたといいます。

こうした状況で初優勝をめざす決勝の先発を託されたのは石垣投手。準決勝で116球を投げて疲れがたまっていました。

石垣元気 投手
「佐藤に負けたくない」

気合いを入れて臨んだ大舞台。

1回に報徳学園に2点を先制されたものの、その後は粘りのピッチングを見せます。

6回にはノーアウト二塁三塁のピンチを招きましたが、自信があるというストレートやカットボールで三振を奪って切り抜けました。

ここで監督から交代の目安と言われていた100球を超えましたが、石垣投手は…。

石垣元気 投手
「佐藤の指が心配なので、まだ投げさせてください」

志願のマウンドへ。

「自分もいるんだということを証明したかった」と7回、8回と2イニング続けて三者凡退に抑え、相手に流れを渡しませんでした。

8回を投げ、ヒット7本を打たれながら2失点と要所を締めた背番号「10」。127球の力投でした。

そして、投球練習を行う佐藤投手のもとへ駆け寄り「あとは頼んだ」と勝利を託しました。

その佐藤投手、指のまめから血が出て痛みはありましたが、9回のマウンドに上がりました。

佐藤龍月 投手
「石垣がふんばって投げてくれていたので、2人あわせてのベストパフォーマンスを決勝の舞台で出したかった」

最後のバッターを得意のスライダーで三振にしとめると、2人で守り続けた甲子園のマウンドは、健大高崎ナインの歓喜の輪に包まれました。

試合後、背番号「10」の石垣投手は、早くも夏に向け、闘志を燃やしていました。

石垣元気 投手
「甲子園が始まる前から佐藤と2人で日本一という目標を掲げていたので本当にうれしいです。甲子園で22イニング連続無失点の佐藤はすごいの一言につきます。負けたくないので今度は僕が背番号『1』をつけて甲子園のマウンドに、また戻ってきたいです」

一方、背番号「1」の佐藤投手は…。

佐藤龍月 投手
「(石垣投手は)苦しい展開だったと思いますが、よく粘って2回以降、無失点に抑えてくれてかっこよかったです。夏は『2人で』甲子園無失点という目標を掲げて一緒に頑張って、絶対に優勝したいです」

切磋琢磨しながら成長を続ける2年生の「2枚看板」で、今度は春・夏連覇を目指します。

《決勝 投手成績》

▽石垣 8回 127球 7安打 8三振 四球2 失点2
▽佐藤 1回 17球 0安打 2三振 四球1 失点0

(3月31日「サンデースポーツ」で放送)