高校野球 センバツ 常総学院が日本航空石川に勝ち2回戦へ

センバツ高校野球は大会6日目。1回戦最後のカードとなった第1試合は、茨城の常総学院が日本航空高校石川に1対0で勝って2回戦に進みました。
能登半島地震で大きな被害を受けた日本航空高校石川、初戦突破はなりませんでした。中村隆監督は「本当にたくさんの方々に支えられて、きょう、この舞台に立つことができた。最高の景色に感謝を感じずにはいられなかった」と話しました。

常総学院が接戦制す 日本航空石川チャンス生かせず

常総学院は6回、1アウト三塁のチャンスで4番の武田勇哉選手の犠牲フライで1点を先制しました。

投げてはエースの小林芯汰投手が鋭く落ちる変化球を効果的に使い、9つの三振を奪って完封し常総学院が1対0で勝って2回戦に進みました。

一方の日本航空石川は、先発した2年生の猶明光絆投手が8回途中まで投げて1失点に抑える好投を見せましたが、9回1アウト一塁三塁の同点のチャンスを生かせず、及びませんでした。

《常総学院 監督・選手談話》

島田監督「自分たちらしい試合ができた」

茨城の常総学院の島田直也監督は「なかなか先制点が入らず苦しい試合だったが、守備からリズムをつくり、自分たちのペースで自分たちらしい試合をすることができた」と試合を振り返りました。
また、9つの三振を奪って完封したエースの小林芯汰投手については「去年から新しい変化球なども覚えて投球の幅が広がり、その練習の成果が出た。エースらしい投球をしてくれた」と話していました。
そして「あまり先のことは考えずに、しっかりと準備をしたうえで自分たちのペースで試合ができるように運んでいきたい」と次の試合について話していました。

若林佑真主将「平常心を保ってプレー」

常総学院のキャプテン、若林佑真選手は「結果は勝ってうれしいですが、石川県の方々に元気を与えられていたら、一番いいなと思います」と話しました。
1点リードの9回、1アウト一塁三塁の場面では「『1点取られても同点なので、落ち着いて』ということばをかけられたので、平常心を保ってプレーしました」と振り返りました。
そして、ショートを守る若林選手が打球を捕り、鮮やかなプレーでダブルプレーにして、試合を終えた場面については「一か八かボールをセカンドに投げました。ダブルプレーになったときは安心しました」と話しました。
また、今後の戦いに向けて「日本航空高校石川と試合をやって絆が生まれたと思うので、日本航空高校石川の思いも背負って、全力でプレーしていきたい」と力強く話していました。

小林芯汰投手「自分のボールが投げられてうれしい」

9回を投げて9つの三振を奪って完封した、常総学院の小林芯汰投手は「変に力まずに、自分のボールが投げられて、うれしいです。自分の長所であるストレートとカットボールがしっかり投げきれました」と話していました。
1点リードの9回に1アウト一塁三塁のピンチを抑えた場面について「伝令から1人ずつ1人ずつ、自分のテンポで投げるように言われて、落ち着いて投げられました。本当にほっとしました」と話していました。
そして、2回戦に向けて「自信があるストレートを生かして、しっかりといい投球をしていきます」と力強く話していました。

武田勇哉選手「得点につながってよかった」

6回に先制点となる犠牲フライを打った武田勇哉選手は「せめて外野フライを打とうという意識で打席に入りました。『浅いかな』と思いましたが、ランナーの池田翔吾選手が走ってくれて、得点につながってよかったです。相手の投手も事前に映像で見るよりもよくて、苦しい場面もあったが、最後は守り切れてよかったです」と話していました。
2回戦に向けては「きょうのような限られたチャンスの場面で粘り強いバッティングをしてどんな形でもいいから打点を稼ぎたい」と話していました。

◇常総学院“磨きをかけてきた変化球”で9奪三振の完封

9つの三振を奪って完封しチームを勝利に導いた常総学院の小林芯汰投手。光ったのはこの冬、磨きをかけてきたカットボールでした。

秋の関東大会で準決勝で敗退したあと小林投手は、島田直也監督からの「ストレートを生かすには変化球も覚えなさい」というアドバイスも参考に変化球に磨きをかけてきました。

特にカットボールは、親指の握り方を変えたり、腕の振り方を変えたりするなど試行錯誤したことで、曲がり幅が大きくなって空振りも取れるようになったといいます。

一冬を越して自信を深めて臨んだこの大会の初戦。7回1アウト三塁のピンチではカットボールで左バッターから空振り三振を取ってピンチを脱しました。

さらに9回には1アウト一塁三塁と長打が出れば、一気に逆転負けとなる場面。ここで右バッターに対して選択したのもカットボールでした。

ダブルプレーに打ちとって9つの三振を奪っての完封。

小林投手は「日本航空高校石川がストレートをねらっていると思いましたし、相手の4番バッターにはカットボールが合っていないと思いました。カットボールは左打者には空振りもとれるし、右バッターにはゴロを打たせられる球で、冬に練習した成果が出てよかったです」と振り返りました。

最速149キロのストレートに加えて、カットボールにも磨きをかけてきた小林投手。兵庫の報徳学園との2回戦に向けて「きょうの投球からもっとレベルを上げて無失点で抑えられるように準備していきます」とさらなる活躍を誓いました。

《日本航空石川 監督・選手談話》

中村隆監督「たくさんの方々に支えられ 最高の景色に感謝」

敗れた日本航空高校石川の中村隆監督は「展開としては、粘り合いの試合で理想的だった。しかし、あと1本ヒットを打つことができなかった。チームを勝たせることができなかったのは、監督の私の責任だ」と目に涙を浮かべながら話していました。
元日の被災から初戦までの日々については「本当にたくさんの方々に支えられて、きょう、この舞台に立つことができた。最高の景色に感謝を感じずにはいられなかった。最終回のピンチの場面でも積極的な守備で切り抜けることができたのは、応援で選手たちの背中を押していただいたからだと思う。打撃を鍛えて勝負どころでヒットを打てるようなチームにして必ずまた夏に戻ってきたい」と気持ちを切り替えていました。

寳田一慧主将「この舞台を楽しむことができた」

敗れた日本航空高校石川のキャプテン、寳田一慧選手は「悪天候ではありましたが、自分たちはこの舞台を楽しむことができました。勝てなかったことは悔しいですが、最後まで諦めずにプレーできたことは夏に向けての大きな収穫になりました」と悔しさをにじませながらも充実した表情で振り返りました。
そのうえで、震災のあと多くの人たちから支援を受け、また、25日も大勢が応援に駆けつけたことについて「被災した輪島市からも駆けつけて応援してくれましたが、声が大きくてすごく励まされました。自分たちもプレーで被災した人たちに勇気を与えたいという気持ちでした。きょうの敗戦の悔しさを糧に、夏にはまたこの舞台で野球ができるよう頑張ります」と次の目標を見据えていました。

◇応援に輪島高校の野球部員の姿も

日本航空高校石川のアルプススタンドには、石川県などから2500人近くの観客が駆けつけ、その中には、輪島市の輪島高校の野球部員13人の姿もありました。

輪島高校のキャプテン、中川直重投手は、元日の能登半島地震では自宅で被災し、今も断水が続くため、家族とともに金沢市に避難して生活しています。ほかの部員たちも、金沢市や輪島市などに別れて生活しているため、輪島高校の野球部は、週末だけ金沢市の高校に交ざって練習をしています。

厳しい生活環境の中で訪れた甲子園のアルプス。それでも憧れの舞台を目にして、中川投手には自然と笑顔が広がっていました。

「日本航空石川の選手からは“こんな大変なときに野球を続けてもいいのか”という声も上がったと聞いたことがあります。でも、彼らは高校野球をしている仲間で、能登の仲間でもあります。だから僕らのためにも頑張ってほしいんです」と中川投手。

日本航空石川の生徒たちと一緒になって応援していました。

思いを託した日本航空石川の勝利こそかないませんでしたが、中川投手は「負けてはしまいましたが、9回の最後の最後までいいプレーばかりで、熱い気持ちで応援していました。能登には元気が届いたと思いますし、自分たちも被災地を勇気づけるプレーをするなど、今できることを頑張りたいです」とスタンドで思いを新たにしていました。

◇日本航空石川の練習拠点 山梨の系列校からも声援

能登半島地震で石川県にある学校が被災し、練習拠点を山梨県の系列校に移していた日本航空高校石川がセンバツ高校野球の初戦を迎え、山梨県甲斐市では、系列校の野球部の選手などがテレビ中継を見ながら声援を送りました。

能登半島地震で石川県輪島市にある学校やグラウンドが被災した日本航空石川は、山梨県甲斐市にある系列校に移り、練習してきました。

25日、センバツ高校野球の初戦を迎え、山梨県の系列校では日本航空石川を応援しようと学校内の会場には系列校の野球部の選手などおよそ80人が集まりました。

試合は5回まで両チーム無得点のきっ抗した展開となり、日本航空石川が粘り強い守備でアウトを重ねると、系列校の選手などはメガホンをたたいて大きな歓声をあげていました。

そして1点を追う9回、同点のチャンスを迎えると会場はこの日いちばんの盛り上がりとなりました。

試合は0対1で敗れましたが、選手たちには会場から大きな拍手が送られていました。

系列校の野球部の選手は「選手たちには『お疲れさま』と伝えたいです。地震のあと一緒に自主練習などをした選手が甲子園で活躍する姿を見て、自分たちも次に向けて頑張ろうと思いました」と話していました。

また、日本航空石川の山田千夏教頭は「選手たちの戦う姿から勇気をもらい、希望を持てたことにとても感謝しています」と話していました。