“まだやれる”背中を押してくれた方たちに感謝 鈴木聡美 33歳

「“まだやれる” “オリンピックにも絶対に行ける”と強く声をかけてくれた監督やトレーナーには心から感謝している」

2大会ぶり3回目のオリンピックの切符をつかんだ競泳の鈴木聡美選手。コロナ禍では競技を続けていいのか悩むなど、苦しい時期を乗り越えた33歳は、“継続力”“負けず嫌い”で再びオリンピックの舞台に返り咲きました。
(スポーツニュース部 記者 松山翔平)

2012年のロンドンオリンピックで3つのメダルを獲得するなど、世界の舞台で活躍してきた鈴木選手。

ロンドン五輪(2012年)

しかし、競技人生を揺るがせたのは新型コロナウイルスの感染拡大でした。

スポーツの在り方も問われる事態となった当時について鈴木選手は次のように振り返ります。

「このまま競技をやっていていいのかとか、引退して社会のために仕事をしたほうがいいのかなと思うこともあった。水泳をやりたくないと思ってしまうくらい、出たかったオリンピックも出たくないと思ってしまうくらい、心をかき乱していた」

東京オリンピックは出場を逃し、競技を続けるかどうかまで悩んでいたとき、支えになったのは長年、指導を受ける山梨学院大の水泳部監督、神田忠彦コーチや身近にいたトレーナーのことばでした。

「“大丈夫だぞ” “できるから”ということばを投げかけられるたびに『私はまだできるのか、なら信じてみよう』と自信になった」

鈴木選手は、再びオリンピックを目指す気力を取り戻しました。

そこから発揮されたのは、自身も認める持ち前の“継続力”“負けず嫌い”

大学生に交じっての厳しい泳ぎ込みやウエイトトレーニングを重ね、去年は50メートル平泳ぎで日本新記録を、100メートル平泳ぎで自己ベストを更新するなど、日本競泳陣が低迷するなかベテランとして進化を見せました。

神田コーチも、その努力を評価しています。

神田忠彦コーチ
「本来は器用な選手ではないし、泳ぐ才能もそれほど持っていないと思う。それでも継続して取り組むというところで才能のある選手に勝ってきた。それはすごく大事なことだ」

そして「水泳人生で一番コンディションがいい」と臨んだ今大会。

女子100メートル平泳ぎの予選から好タイムをマークし、決勝でも持ち味のテンポのいい泳ぎで、隣のレーンを泳いだライバル・青木玲緒樹選手との接戦を制し、わずか0秒02の差で優勝。

タイムも自己ベストをさらに更新して、念願だった1分5秒台をマークし、パリオリンピックの切符をつかみました。

レース後、鈴木選手はここまでの道のりを振り返り、改めて周囲への感謝を口にしました。

「長かったなという思いもあるし、あの当時、心が腐ったままで終わらないでよかったと思う。“まだやれる” “オリンピックにも絶対に行ける”と強く声をかけてくれた監督やトレーナーには心から感謝している。そのことばがなければここまで来ることはできなかった」

ライバル 青木玲緒樹選手とパリ五輪へ

苦しみを乗り越え、進化を続ける33歳。

表彰台をねらうと意気込むパリでの泳ぎに注目です。

鈴木選手が代表内定を決めたレースの模様はNHKプラスで配信中↓↓↓(2024年3月26日まで)