女子マラソン 安藤友香が優勝も五輪代表内定は前田穂南

女子マラソンのパリオリンピック最後の代表選考レース、名古屋ウィメンズマラソンが行われ、29歳の安藤友香選手が自己ベストを更新する2時間21分18秒のタイムで優勝しました。

ただ、代表内定の条件となっていた前田穂南選手の日本記録更新はならず、前田選手が2大会連続のマラソンオリンピック代表に内定しました。

安藤友香が優勝も パリ五輪出場は前田穂南に

ことしの名古屋ウィメンズマラソンはパリオリンピックの女子マラソン代表の最後の1人の枠をかけた選考レースを兼ねて行われ、ことし1月の大阪国際女子マラソンで前田選手がマークした2時間18分59秒を切って、日本選手の最上位に入ることが代表内定の条件でした。

レースは日本歴代8位のタイムを持つ安藤選手や、東京オリンピックのマラソン代表の鈴木亜由子選手、それに去年の世界選手権代表で25歳の加世田梨花選手が海外選手とともに先頭集団を作り、序盤は日本記録に迫るペースで進みました。

25キロすぎには鈴木選手が先頭集団から離され、その直後に安藤選手と加世田選手も徐々に海外勢から遅れました。

安藤選手は33キロすぎの登りでペースを上げて抜け出して日本選手トップに立ち、その後も粘り強い走りで、39キロすぎにトップのバーレーンの選手に並びました。

41キロすぎにラストスパートをかけてトップに立った安藤選手は、自己ベストを18秒更新する2時間21分18秒でフィニッシュし、優勝を果たしました。

ただ、日本記録には届かなかったため、前田選手が2大会連続のオリンピックマラソン代表に内定しました。

2位にはバーレーンの選手が入り、3位には終盤に粘りの走りで順位を上げた鈴木選手が自己ベストを更新する日本歴代9位の2時間21分33秒で入り、加世田選手が4位でした。

安藤友香「優勝できよかった とにかく諦めず前だけ見た」

岐阜県出身で、愛知県の高校を卒業した安藤友香選手は優勝したあとのインタビューで「ここまで来るのにお世話になった人がたくさんいて、ここで走れているので、感謝の気持ちでいっぱいだ。パリオリンピックには行けないが、優勝することができてよかった」と話すと、会場から大きな拍手が送られました。
レースについては「途中、離れた時は苦しかったが、とにかく諦めずに前だけ見て走っていたら追いつけた。最後は絶対に優勝したいという気持ちで走った」と、今大会にかけた思いを話しました。
そして、自己ベストを更新したタイムについては「7年ぶりに記録を更新できて、優勝という形で終えることができたので、きょうをスタートにまた頑張りたい」と前を向いていました。

安藤友香選手は岐阜県出身の29歳。両腕を下げて腕の振りが少ない独特のフォームが特徴で、スピードを生かして前半から積極的にレースを進める思い切りのよさが持ち味です。陸上の強豪、愛知の豊川高校出身で、全国高校駅伝では2回の優勝に貢献しました。

その後、実業団に進み、2017年の名古屋ウィメンズマラソンで初マラソンの日本最高記録となる2時間21分36秒をマークして注目を集めました。東京オリンピックでは10000メートルに出場して22位でした。

去年10月のマラソン代表選考レース、MGC=マラソングランドチャンピオンシップでは9位に終わっていました。今回の最後の選考レースに向けては「ゴールした時にもう出しきれないぐらいの気持ちになれるように、やりきったレースをしたい」と話していました。

3位 鈴木亜由子「沿道からの応援で最後まで走ることができた」

粘りの走りで終盤に順位を上げ、3位に入った地元愛知県出身の鈴木亜由子選手は「目標に届かなかったのは力不足で悔しいが、やることはやってきたので、挑戦できたことや支えてくれた人に感謝でいっぱいだ」と話しました。
そのうえで「中盤で前の選手と離れてしまい、もどかしい気持ちでいっぱいだった。応援があったので気持ちを切らさずに最後まで走ることができた」とレースを振り返り、沿道からのたくさんの応援に感謝していました。

代表内定 前田穂南「誇り持ち 自分のパフォーマンスを」

パリオリンピックの日本代表に内定した前田穂南選手はコメントを発表し「2大会連続でオリンピックの舞台で走れることに誇りを持ち、世界でしっかり自分のパフォーマンスを発揮したい。そのために今までの経験を生かし、これから継続して練習に取り組んで準備していきたい」と決意を示しました。

◇前田穂南“1月に日本記録更新 2大会連続五輪へ”

2大会連続のマラソンオリンピック代表に内定した前田穂南選手は兵庫県出身の27歳。ことし1月の大阪国際女子マラソンで2時間18分59秒のタイムをマークして、19年ぶりに日本記録を更新しました。

駅伝の強豪、大阪薫英女学院出身で、高校時代は控えで目立った成績は残せませんでしたが、卒業後に実業団に入ってから実力を伸ばしました。豊富な練習量に裏打ちされたスタミナや勝負強さが特長で、東京オリンピックの代表選考レースとなった前回、2019年のMGCで優勝して、東京大会の代表となりました。初めてのオリンピックとなった東京大会では中盤から遅れて33位でした。

パリ大会を目指した2回目のMGCでは中盤で積極的な仕掛けを見せたものの、最後は失速して7位に終わり、2大会連続のオリンピック出場を目指して、ことし1月の大阪国際女子マラソンに出場しました。そのレースでは中間地点を過ぎたところで、ペースメーカーよりも前に出てレースを引っ張る積極的な仕掛けで、19年ぶりにアテネオリンピックの金メダリスト、野口みずきさんの日本記録を更新していました。

日本陸連 瀬古利彦氏「実りある大会 全選手の健闘たたえたい」

レース後の会見で、日本陸上競技連盟の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーは「前田穂南選手の2時間18分59秒という記録に果敢に挑戦した、全選手の健闘をたたえたい。記録更新はできなかったが、いろんなプレッシャーがありながら挑戦したと思う。安藤友香選手が自己ベストのタイムで優勝したのは見事だった。鈴木亜由子選手も3位だが、自己ベストということで、実りのある大会だったと思う」と今大会を総括しました。

そのうえで、パリオリンピックの代表に内定した3人の選手について「気温はどうなるかわからないが、パリは涼しくないと思う。日本の選手たちで、特に前田穂南選手は5年前のMGCで暑い中で独走していて、すごく向いているコースだと思う。一山麻緒選手は前回の東京オリンピックでしっかり入賞しているし、あの夏の暑い中でも走れたので期待できる。鈴木優花選手は若さで、しっかりと走りきってほしい。パリオリンピックのコースは日本人向きのコースだと思っているので期待したい」と話していました。

日本陸連 高岡寿成氏「本当にいいメンバーで挑戦できる」

日本陸上競技連盟の高岡寿成シニアディレクターは「私たちが望んでいる選手たちが代表に内定したと思っている。MGCでは安定感のある強い選手が2人、そしてプラス1人ではスピードのある選手が内定した。一山さんと前田さんはオリンピックを経験していて、パリでは期待できる。本当にいいメンバーで挑戦できると思う」と期待を寄せました。