中学1年生の森銀治郎さんは地元の町立松波中学校に通っていました。
「一緒に卒業するんやぞ」地震で失った級友へ【被災地の声】
「銀治郎のことを忘れるな、一緒に卒業するんやぞ」
能登町の中学1年生、森銀治郎さんは1月1日の地震による自宅の倒壊で亡くなりました。
授業中、みんなが理解できるよう率先して質問していたこと。
ソフトテニス部の練習に励んで大会で活躍していたこと。
通っていた中学校の同級生や先生たちが銀治郎さんへの思いを話してくれました。
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能登町 銀治郎さんのクラスで
学校は1月22日から授業を再開しましたが、クラスに銀治郎さんの姿はなく、席には花が置かれています。
クラスの担任で、所属していたソフトテニス部の顧問でもある教諭の玉置海斗さん(26)の印象に残っているのは、授業中に周囲の生徒を気遣う姿です。
ある日の授業中、銀治郎さんは自分はわかっているのに手を上げて質問をしたことがあったということです。
授業後、玉置さんが聞きました。
「なんでわかっとるのに質問したんや」
すると銀治郎さんは、こう返したと言います。
「周りにわかってない子がいたと思ったので、質問しました」
担任の玉置海斗教諭
「やっぱり周りが見えていて、周りのことを考えられる子なんやなって思ったことが思い出されます。気が利くので、周りの子の困っていることも気がつけるということだったと思います」
みんなが「銀治郎、銀治郎」と
また、誰とでも分け隔てなく接し、慕われていたということです。
「銀治郎としゃべれない子はいないというか、クラスの中では、女の子も『銀治郎、銀治郎』って呼んで関わってたし、男の子ももちろん一緒にテニスしたり、本当に仲よく慕われる存在やったと思います」
部活は玉置さんの勧めもあって、ソフトテニス部に入部しました。
去年9月、奥能登の新人大会では、銀治郎さんのペアの活躍で団体戦で3位に入賞。
ひたむきに練習に取り組む姿が印象に残っています。
「ほとんど休むことがなかったですね。お母さんに聞いたら、部活動がある日は家族の用事があってもできるだけ部活動に来るって言うぐらい一生懸命で」
「2年生の子たちは『スーパールーキー』と呼んでいました。人に気をつかえる分、試合でもよく考えてプレーしていたと思います。相手はここが苦手そうだからここに打つとか、『こういう考えがあったからです』ってそのプレーを説明できる、そういう子でした」
「能登町を自慢できる町に」
去年、コンクールで優秀賞を受賞した作文も残っています。
テーマは「私が町長だったら」。
銀治郎さんの作文の題は「能登町自然いっぱいの都会化計画」です。
「僕は、もともと金沢市の都会に住んでいて、八年前、能登町に移住してきました」(書き出しの文)
家族で移住してきた経験をもとに、自分が感じた町の魅力について書いていました。
そして「皆さんで能登町がさらに自慢できるような町にしていきましょう」と呼びかけています。
担任の玉置さんは、この作文を書いていた時、銀治郎さんが真剣に書き進めながら、少し冗談めかして話していた様子を覚えていました。
「隣でボソッと言ってたんですけど『僕、町長と肩組みたいんです』って。たぶん、半分冗談のつもりだったと思うんですけど。『僕町長と肩組みたいんで、作文書いたら組めますかね』って言って、一生懸命書いていたなって思って。『実際に表彰式のときに、組めるか確認してください』って」
「思い出はいっぱいすぎて」
銀治郎さんのクラスは1年生14人です。
同級生たちも、人柄について話してくれました。
保育園の頃からの友人 山下あいさん
「おもしろくて優しい友達でした。忘れ物をしたときには貸してくれたり、休み時間にはおもしろい話をしてくれたり、いつもそんな感じです。ことしの体育祭では、一緒のチームでソーラン節とか一緒に練習したのが楽しかったです。わからないところの振り付けとかあったら優しく教えてくれたのが思い出です」
学級委員で同じクラス 西谷内虎心(にしやち・こうしん)さん
「授業中とか、すごい難しいところがあると、わからんことあると教えてくれたりしてくれました。思い出はいっぱいすぎて、1つに絞れない」
そして去年9月、ソフトテニスの新人大会で団体戦3位に入賞した時に銀治郎さんとペアを組んでいた竹原多偉良(たいら)さんは、2人の信頼関係を話してくれました。
ソフトテニス部でペア 竹原多偉良さん
「銀治郎は前衛で、どんな難しい球も取ってくれて、どちらかが点をとったら『ナイス』と声をかけ合って、信頼できる友達でした」
「僕とペアをやってくれてありがとう、これからも、銀治郎の分も頑張る、頑張ってテニスをやっていくっていうことを伝えたい」
担任の玉置さんは、クラスのみんなにこう伝えているということです。
「銀治郎のことを忘れるな。銀治郎も一緒に松波中から卒業するんやぞ」
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