土砂の中から弟の写真「早く顔を見せて」【被災地の声 30日】

輪島市の捜索現場で、土砂の中から見つかった赤ちゃんの写真。

今は56歳になる弟の、幼いころの姿です。

弟は土砂災害に巻き込まれたと見られ、今も安否が分かっていません。

「本当に、早く顔を見せてくれよ」弟の帰りを待つ男性が、思いを話してくれました。

輪島市市ノ瀬町 地震で大規模な土砂災害

今月(1月)1日の地震で、輪島市市ノ瀬町では大規模な土砂災害が発生、複数の住宅が巻き込まれる甚大な被害が出ました。

この地区で暮らし、瓦屋根職人だった弟の垣地英次さん(56)は土砂災害に巻き込まれたとみられ、いまも安否が分かっていません。

英次さんの兄、垣地弘明さん(58)は2歳離れた弟の帰りを待っています。

金沢市に住む弘明さんですが、今月11日から地区の避難所で待機して捜索の様子を見守り続けています。

警察と消防による捜索活動は、発生から4週間を迎えた29日も周辺の広い範囲で行われました。

垣地弘明さん
連日200人を超える警察・消防の方が一生懸命、英次を捜していただいて、1人のためにこれだけの人数を割いていただいて。「絶対捜す」という声をかけながら、泥だらけになりながら探していただいて、本当に恐縮して感謝でいっぱいなんです。

弘明さんによると、弟の英次さんは当時ひとり暮らしでした。

住宅か隣接する納屋付近にいた可能性があるということですが、確かな情報はないということです。

都会と違って密集した住宅地でもないし、人が少ない街なんで。お正月の夕暮れでみなさんなかなか出歩かないときの地震だったので、しっかり見たとか確認できる情報がないんです。東京ドームくらいの土砂の中から1人を捜すような、そのへんで苦労なさってるのかなと思います。

「まだ見つからんか」

弘明さんは、生まれ故郷の小さな町の変わり果てた姿に、驚きを隠せずにいます。

そうした中で、家族のようにつきあってきた地域の人たちが、よく声をかけてくれるといいます。

本当にショックでならないですね。ここで生まれてまさかまさかこんな。あんなに高い山からこんな土砂が崩れるなんて誰も思ってなかったと思うんで。

倒壊されたり家が流されてる方々、僕の家だけじゃないんで。今後どうするか、本当は自分のことも心配しんならんとこをね、いつも僕の顔を見るたびに「まだ見つからんか、まだ見つからんか」って声かけていただいて、心配してくれてます。

本当にありがたいことに親身になって、家族じゃないですけどやっぱりね、小っちゃい町で、なおさら生まれた町ですから。みんな小さい時から知ってる人たちばっかりだもんでね、わが子のように声かけてくれて。(弟・英次さんも)それを思ってか、困ったことがあったらやっぱり世話しに行っとったみたいですよ。

「早く顔を見せてくれよ」

これまでの捜索で、幼いころの兄弟の写真を集めたアルバムが見つかりました。

英次さんのあどけない表情や兄弟で仲よく写る姿が残されていました。

ふつう弟って少しやんちゃなとこがあると思うんですけど、全然やんちゃなとこもなく、僕が言うのもなんですけど、優しくて面倒見のいい、本当におふくろのことを思っとったやつかなと思います。

本当に、早く顔を見せてくれよ、ということですよね。僕も1月1日から時間が止まったような感じで、弟が見つからんことには次になかなか踏み出せないかなって。うちの弟だけじゃなくてね、まだ見つかってない方もいらっしゃる中、本当に早く見つかってほしいと思ってます。

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