2次避難先 食事提供なく 避難所戻る人も【被災地の声 26日】

「いつまで避難生活が続くかわからないので…今は2次避難を断念せざるをえないという心境です」

断水が続く能登町で、避難所に身を寄せている男性の話です。

「食事の提供を受けられる施設がない」と聞いて、2次避難所への移動を断念するしかなかったと言います。

NHKのニュースポストには「いったん2次避難したもののサポートがなく、もとの避難所に戻ることにした」という情報も寄せられています。

「被災地の声」です。

能登町 2次避難を希望したものの

能登町の30代の男性は、地震で夫婦2人で暮らす自宅が半壊しました。

最初の数日は車中などで過ごしましたが、今は近くの小学校の避難所に身を寄せています。

避難所では炊き出しなどで食事は3食、提供されていますが、断水が続いて衛生環境に不安があり、プライバシーも限られています。

今月23日、県のコールセンターに相談しました。妻と共にホテルなどの2次避難所への移動を希望することにしたのです。

しかし、県からの説明は、次のようなものだったと言います。

「食事を提供できる施設はなく、施設によっては駐車場代も自己負担になる」

「断念せざるをえない」

男性は持病があるため病院に通うことが欠かせません。また、職場は珠洲市にあります。

通院と通勤ができる範囲で2次避難したいという希望を伝え、現在、県からの返答を待っています。

それでも、食事や駐車場などにかかる費用を考えると、2次避難所に移動することを断念せざるえないと考えているといいます。

食事の提供があると考えていたので、通勤や通院など生活できる範囲での2次避難を申し込みました。先が見えない、いつまで避難生活が続くか分からないとなると、生活再建のために費用面などを抑えておきたいです。

2次避難所に行ったとしても食事のある1次避難所に戻りたいとなったときに、仮に一度出たら戻れないとなったとしたらどうしようと不安が先に出てくる。2次避難所の情報が不足しているので、飛び込むのが非常に怖くて、やはり断念せざるをえないなという心境です。

志賀町 車中生活から避難所へ

いったん2次避難先へ移ったものの、その後被災した自治体の避難所に戻って生活を続けているという人もいます。

志賀町の70代の両親について、娘の40代の女性がニュースポストに情報提供してくれました。

以下、投稿の内容です。

70代の両親が志賀町在住で被災しました。はじめの3日くらいは泥棒、これ以上の倒壊など家が気になるとのことで、車中生活をしてました。

その後、女性は車中生活を長く続ける両親が心配で、避難所へ行くよう強く伝えました。

災害関連死が心配で避難所に行くよう伝えたけど、ひと目が気になってゆっくりできない…とのことで、なかなか行きたがらなかったです。でも健康面が心配だったので、半ば強制的に避難所に送り届けてきました。

避難所の支援物資

避難所では断水が続き、洗濯や入浴はできません。そのため両親は車で20分ほどかけて町外のコインランドリーや銭湯に行っていたということです。

2次避難でホテルに しかし…

避難所生活で疲れた体を少しでも休めてもらおうと、女性は2次避難の予約をしました。金沢市内のホテルに今月14日から25日までの滞在予定で両親に入ってもらったということです。

ホテルでは衣料品や日用品など、支援物資が用意されていました。しかし、両親は不安な様子でした。

オートロックや電気ケトルなど設備の使い方がよくわからず、女性がひとつひとつ説明してようやく覚えました。

知らない土地で外に出るのも不安な様子で、部屋にこもりがちになりました。母親は滞在中、急に足腰が弱り、歩く際につえが必要な状態になったということです。

また、食事の提供もないため、父親がホテル近くのコンビニで購入するなどしていたということです。

「地元に帰りたい」

結局、「地元に戻りたい」という両親の訴えから、予定よりも5日早い1月20日には志賀町の避難所に戻りました。

女性に取材すると「両親がホテルに泊まれて2次避難はとてもありがたかったです」と話していました。

一方、両親の心境については、次のように話していました。

両親にとっては、家が今どうなっているかが不安な中で、知り合いもいない知らない土地での生活は不自由だったようです。避難所に戻ってからは「地元のほうが落ち着く」と話していて、自宅の様子を見に行くことで母の足も少しずつ回復しています。両親は今は「1番最後になっても避難所で生活したい」と考えているようです。

そのうえで。

初日は私が付き添ったのでなんとか生活できましたが、高齢者だけでホテルで生活するのは難しいのではないかと思いました。2次避難先でも少しお手伝いしてくれるボランティアさんなど、生活面でのサポートがあればよかったと思います。

石川県“食事提供を施設側にお願い 別の方法も検討”

石川県は災害関連死を防ぐとともに、当面の落ち着いた生活環境を確保するため、住民に被災地以外の避難所に移ってもらう「2次避難」を進めています。

石川県によりますと、「2次避難所」として、25日までに県内外の1078のホテルや旅館を確保していて、3万657人の受け入れが可能になっているということです。

これまでに2次避難所で受け入れた人は3890人、26日の時点で滞在している人は3364人となっています。

石川県は、あらかじめ避難する人からの条件を聞き取り、できるだけ希望に沿う施設に入ってもらえるよう調整しています。

この2次避難をめぐり、施設での食事の提供がないことを理由に被災地の避難所にとどまる人もいることについて石川県は。

「そうした声があることは十分に認識しているが、ふだんのサービスが異なる旅館とビジネスホテルでは一律の対応が難しいのが現状だ。実際に、食事の提供がない施設に入ることに消極的な人のマッチングには苦慮している。

なんとか食事を提供してもらえないか施設側にお願いしているし、別の方法でできることがないかも検討している」

また、2次避難している人たちへの現地でのサポートについては。

「基本的には施設がある自治体に対応をお願いしている。これについてもすべての避難所で一律に対応するのは難しい」

2次避難先での食事提供 法律では…

内閣府によりますと、災害対策基本法には「災害応急対策責任者は避難所における食糧の配布など、被災者の生活環境の整備に必要な措置をとる」ことが努力義務とされ、都道府県や自治体が食料の確保をするほか、指針では一定期間が経過したあとは栄養バランスなど食事の質を確保することも求めています。

「2次避難所」は法律で明確な位置づけはありませんが、国は避難所として機能しているため、法律の対象になるとしています。

また、自治体がホテルなどを借り上げて避難所とする場合、災害救助法が適用されるとその費用は国が負担する仕組みで、これまでは施設側に支払う利用額の基準は1泊1人あたり上限が7000円でしたが、25日、政府の対策本部がまとめた支援パッケージでは、特例的に上限を1万円に引き上げるとしています。

内閣府
「能登半島地震では一般の避難所で生活することが難しい高齢者が多く、これまでの災害と比べても2次避難のニーズが高いと感じている。2次避難先となったホテルが食事を用意できなければ自治体が炊き出しでカバーするなど、食事を必要とする被災者がいるかぎり、自治体がバランスをとれた食事を提供しなくてはならないと考えている」

なぜこのような事態に?専門家は

被災者支援に詳しく、被災した人の避難について石川県にアドバイスなどを行っている大阪公立大学の菅野拓准教授は、次のように話しています。

大阪公立大学 菅野拓准教授
2次避難先となっている旅館やホテルは食事の提供体制が整っているところから先に埋まってしまい、現在、受け入れ先の候補として多く上がっているビジネスホテルなどでは、3食作って提供する設備や体制がそもそも手薄な施設が多い。代わりの弁当の手配にも業者の調整や事務処理に時間がかかり、供給体制が整っていないことが要因で起きている.

問題は県や国も把握していて対応を進めているが、食事の提供がなければ避難できないなどのそれぞれの事情に合わせて避難先をマッチングできずに混乱が起きている。3食提供できる施設を増やすなどして、解決していかなければならない.

また、2次避難が進んでいないことについては。

食事の問題のほかに、被災者が今後の生活再建を見通すことができる分かりやすくまとまった情報発信が極めて重要だが、情報が届いておらず、避難をためらっている人が多いとみられる。

高齢者や障害者など支援が必要な人が、断水状態など命の危険がある状況で壊れた自宅などに残ったまま2次避難を決断できずにいるおそれがある。情報や支援が届かないことで、災害関連死の増大が懸念される.

また、今回、被災した地域では支援が必要な高齢者などに対して、支援者の数が圧倒的に不足しているということで、被災者の広域避難をサポートする体制をどう進めていくかが課題だとしています。

住民票を移さなくても避難先の自治体で住民サービスが利用できたり、地元に戻らない選択をしても必要な支援が受けられるなど、どこにいても情報や支援が届き、安心して避難生活を送ることができるよう、法整備を含めて政府が主導して行っていく必要がある。

※避難生活での困りごとや悩みごと、相談できずに困っていることなども含めて、こちらの「ニュースポスト」へ情報をお待ちしています。

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