災害関連死 “我慢で高まるリスク 体力あるうちに対策を”

地震の揺れや津波による直接的な被害で亡くなるのではなく、その後の避難生活で病気が悪化したり体調を崩したりして命が失われる「災害関連死」。

8年前の熊本地震では、地震で直接死亡した人の4倍を超え、大きな課題になりました。

これからの犠牲を1人でも少なくするために。「災害関連死」のリスクと対策は。

能登半島地震でも「災害関連死」が

10日午後2時の時点で、石川県内で206人の死亡が確認され、このうち珠洲市の6人、能登町の2人のあわせて8人が「災害関連死」の疑いとされています。

能登町では80代の男性が、中学校に避難していた9日に心肺停止の状態になり、町内の病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されたということです。

男性に持病があったかどうかや、詳しい死因は分かっていません。

石川県の馳知事は、9日の段階で県内で2万6000人を超える人が避難生活を送っている現状を踏まえ、今回の地震での災害関連死を防ぐために旅館やホテルへの2次避難の取り組みを進める考えを示しました。

石川県 馳知事
「災害関連死を防ぐためにも、高齢者や要支援者を1.5次避難所や2次避難所に速やかに移送することが重要だ。現地の公立病院や福祉施設でも医師や看護師、保健師が足りない。彼らも被災していて、人手が足りず、全国から応援に入ってもらっているが、それでも足りない」

熊本地震 死者の8割が災害関連死

「災害関連死」は過去の災害でも大きな課題になっています。

2016年に発生した熊本地震で犠牲になった人は、熊本県内で合わせて273人でした。

このうち「災害関連死」と認定された人は218人と、8割近くを占め、地震で直接死亡した人の4倍を超えています。

70代以上が約8割

熊本県のまとめによりますと、この218人の「災害関連死」の年代別の割合は
▽80代が最も多く34.4%で
▽70代以上の高齢者が全体のおよそ8割を占めています。

また、薬を服用していたり、要介護認定を受けたりするなど、なんらかの病気を過去に経験していた人が、およそ9割にのぼっています。

発災3か月以内の犠牲者 8割以上に

災害発生から死亡までの期間を見ますと、

▽1週間以内が24.3%
▽その後、1か月以内が32.6%
▽さらにその後3か月以内が24.3%と、

地震から3か月以内に亡くなった人が8割以上となっています。

避難生活の長期化で「災害関連死」が増えるおそれがあり、注意が必要です。

“体力が落ちる前に対策を“

地域の災害対策に詳しい跡見学園女子大学の鍵屋一教授は、特に「災害関連死」のリスクが高いのは持病があったり、ふだんから医療や介護のサポートを受けたりしている高齢者だとして、より注意が必要だとしています。

また「災害関連死」が起きやすくなる状況として、次のような例を挙げています。

高齢者が
トイレに行きたくないと、水や食料をとるのを我慢する
ふだんから飲んでいた薬が手に入らなくなる
避難先を変えるために長時間、頻繁に移動する
地域のつながりが薄い環境で新しい生活を始める

こうした状況を防ぐ対策が必要だと指摘しています。

鍵屋教授
「地域のつながりが失われると、今後さらに関連死が広がるおそれがあります。サポートが必要な人は、体力が落ちる前に適切な避難先に移れる仕組みを整え、避難の際は、移動の回数を少なくして地域で見知った人と一緒に移動できるとよいと思います。高齢者は周りを気にして、つい我慢しがちなので、ふだんからの声をかけて体調の変化に注意してつながりを維持しておくことが大切です」