石川で孤立状態の地域相次ぐ 自衛隊ヘリも 孤立地区の現状は…

地震の影響で道路が通行できなくなるなどして、石川県では孤立状態になっている地域が相次いでいます。

珠洲市では自衛隊のヘリコプターが物資を運んだほか、寸断された道路が通れるようになるなど物資が届き始めたところもありますが、孤立状態が続いている地域からは支援を求める声が聞かれます。

孤立状態 少なくとも約780人(4日午後3時時点)

石川県によりますと、4日午後3時現在、能登地方の5つの市と町の30の地区で、少なくともおよそ780人が孤立状態になっているということです。

道路が通れなくなるなどして孤立状態になっているのは次の地域です。

【珠洲市】
大谷町でおよそ300人、折戸町でおよそ110人、馬緤町でおよそ100人、高屋町でおよそ90人、川浦町でおよそ50人、折戸木ノ浦でおよそ40人、宝立町大町泥木でおよそ15人です。
狼煙町横山も孤立状態になっていますが、人数など詳しい状況は確認中となっています。
また、真浦町の8人は自衛隊による救出活動が行われています。

【七尾市】
中島町河内地区で5世帯およそ10人

【穴水町】
麦ケ浦地区でおよそ20人、北七海地区で1人

【能登町】
北河内地区で16世帯20人、桐畑地区で5世帯9人、田代地区で3世帯7人が孤立状態になっているほか、十郎原地区も孤立状態になっていて、人数など詳しい状況は確認中だということです。

【輪島市】
14の地区が孤立状態になっていて、人数など詳しい状況は確認中です。
孤立状態になっているのは▽町野地区、▽鵠巣地区、▽西保地区、▽大屋地区、▽南志見地区三井地区、▽仁岸地区、▽小山地区、▽諸岡地区、▽小石地区、▽本郷地区、▽浦上地区、▽七浦地区、▽河原田地区です。

珠洲市 自衛隊がヘリコプターで孤立地区に物資

自衛隊は4日、珠洲市の孤立状態となっている地区に向けてヘリコプターで物資を届けました。珠洲市の孤立状態にある地区に物資を届けるのは初めてです。

珠洲市によると、大谷地区にヘリコプターで支援物資を届けたと報告を受けたということです。

また、寸断されていた道路の一部が通れるようになり、これまでたどりつけなかった日置地区の狼煙町にある「道の駅狼煙」に市がトラックで支援物資を運んだということです。

珠洲市で孤立の男性 “飲み水と燃料 すぐに支援してほしい”

石川県珠洲市の真浦町では、輪島市方面と珠洲市方面とを結ぶトンネルが2つとも崖崩れによって封鎖され、孤立状態が続いています。

町内で旅館を経営し、4日朝の時点でも残っていた和田丈太郎(51)さんによりますと、水道や電気などのライフラインが確保できていない状況だということです。

和田さんは知人から充電用のバッテリーを借りることができ、携帯電話などはまだ使える状態だということですが、飲み水とガソリンや灯油などの燃料については不足している状態だということです。

和田さんは「去年5月にも大きな地震がありましたが、そのときよりも大きな揺れを感じました。町ではあちこちで建物や道路が崩壊しています。今はすぐに避難できるように町内の高台に避難して車中泊をしています。夜間も地震が続いているので不安です。食料はまだ少し余裕がありますが、飲み水と燃料についてはすぐに支援をしてほしいです」と話しています。

孤立状態の地域 衛星画像では…(2日時点)

NHKは民間の測量会社「パスコ」の協力を得て、フランスの人工衛星が今月2日に撮影した衛星画像をもとに周辺の状況を確認しました。

衛星画像から確認できた孤立地域の周辺の状況です。
家屋の倒壊や道路の寸断など大きな被害が出ていることがうかがえます。

輪島市長井町

輪島市長井町を映した画像では倒壊しているように見える家屋が複数確認できます。このほかにも被害が出ている家屋はこの周辺で多く確認され、大きな被害が出ている状況が分かりました。

輪島市鳳至町

火災があった「朝市通り」近くにある輪島市鳳至町でも孤立状態だという情報があります。周辺では多数の家屋が倒壊している様子が確認でき、あちこちで道路がふさがれています。

輪島市西保地区

輪島市西保地区の大沢町では、集落に繋がる少なくとも2つの道路が、斜面崩落などで完全に通れなくなっている状況が確認できました。

輪島市諸岡地区

輪島市諸岡地区の門前町道下でも、複数の家屋が倒壊していて、大きな被害がでている家屋は、少なくとも10軒ほど確認できました。また地域の公園の広場には大きな亀裂が入っている状況も確認できました。

輪島市浦上地区

輪島市浦上地区です。門前町浦上では傾いたり、倒れている家屋が複数ありました。また地域にかかる橋や付近の道路にも亀裂や段差があるように見えます。

輪島市河原田地区

輪島市河原田地区です。西脇町を通る県道はあちこちに亀裂が入っている状況が確認できました。

珠洲市蛸島町

珠洲市蛸島町では、地域のあちこちで倒壊したとみられる家屋や、それによって寸断された道路が確認できました。蛸島小学校のグラウンドには多数の車が止まっていて、多くの人が避難しているとみられます。

NHKにも孤立の情報寄せられる(4日午後7時時点)

NHKの情報提供窓口「ニュースポスト」などには、石川県の輪島市や珠洲市、それに能登町などで孤立状態になっている地区があるという情報が複数寄せられています。

4日午後7時の時点で、NHKが確認できている情報は以下のとおりです。

【輪島市】
▽町野町広江、▽町野町寺山、▽長井町、▽深見町一乗地区、▽門前町七浦地区、▽門前町皆月地区、▽白米町、▽空熊町前田、▽空熊町別所、▽滝又町、▽別所谷町、▽稲屋町、▽小池町

【珠洲市】
▽川浦町、▽笹波町

【能登町】
▽小間生地区、▽十郎原地区

これらの地区の住民の親族や友人などから投稿が寄せられました。

輪島市 山あいの3集落で道路寸断

石川県輪島市の山あいにある別所谷町空熊町、それに滝又町の隣接する3つの集落が、道路が寸断されて孤立状態になっているという情報が寄せられています。

NHKに情報を寄せた空熊町に実家があるという岡山県に住む女性によりますと、3つの集落には、あわせて70人ほどが住んでいるということです。

3つの集落に入る道は、国道249号線と、県道51号線、県道269号線の3つがありますが、女性の弟が確認したところ、いずれも土砂崩れの影響で寸断されているということです。

弟が撮影した写真では、木や土砂のほか、大きな岩が道に落ちてきて道路を完全にふさいでいる様子がうかがえます。女性によりますと、住民とは固定電話や携帯電話でも連絡を取ることができないということで、女性も地震発生後から、空熊町に住む両親と祖母と連絡が取れない状態が続いています。

この女性は「正月だったのである程度食料はあるとは思いますが、それもどこまで持つのか、暖を取れているのか、何も情報がなく不安です。とにかく早く救助してほしい。集落の中の様子が知りたいです」と話していました。

輪島市白米町 道の駅に60人避難

輪島市白米町にある「道の駅千枚田ポケットパーク」では、およそ60人が孤立状態となっています。

この道の駅にいる堂下真紀子さんによりますと、ほとんどが観光客で、外国人もいるとしています。物資が不足するなか、道の駅の食材を使ったりサザエなどを拾ったりして食料を確保していて、建物や車の中で寝泊まりしているということです。

別の避難者が撮影した写真

また停電が続き、車のガソリンもほとんど残っていないため寒さをしのぐことが難しくなってきているということです。

堂下さんは「水や食料、燃料をとにかく早く届けてほしい」と話しています。

輪島市稲屋町に親族が住む女性は「地震の直後に連絡がとれたあと、連絡がつかなくなり心配しています。この地域以外にも被災地の山あいでは少人数の集落で孤立している地域がたくさんあると思うので、そうした地域にも目を向けて支援をしてもらいたいです」と話していました。

輪島市小池町に親族が住む女性は「近くに住む家族が確認に行きましたが、道がふさがっていて入ることができませんでした。高齢者も多い地域なのでぜひとも早い救助をお願いしたいです」と話していました。

輪島市町野町寺山の住宅で知人の家族4人が取り残されているという女性は「山の中に住宅があり、地震による土砂崩れで周囲の倒木がすごく、水や食事も届かないようです。助けも来ないので、知人の家族はこれから近所の人たちとチェーンソーで倒木を切りながら、町の中心部に歩いて向かうと話していましたが、1時間以上かかるうえ、90歳を超える家族もいる中、無事に移動できるか心配です」と話していました。

能登町十郎原で友人が被災しているという女性は「この地区では避難所につながる3本の道が土砂崩れでどこも通れなくなっていて、近隣の家族が集まって20人くらいが駐車場で車中泊をしているということだ。電波も入らないそうで、友人が時々、携帯電話がつながる場所まで徒歩で移動して電話をしてくれるのでかろうじて連絡がとれている。ようやく重機が入り出したようだ」と話していました。

輪島市長井町に家族3人で帰省した際に被災したという男性は、2日夜、友人に対し「近くの道路が地震で寸断されて孤立状態になっている。両親と合わせ5人で避難所に行ったが人が多くて入りきれず、自宅が倒壊したため車の中や農業用ハウスで寒さをしのいでいる。これからの雨が心配です」と話していたということです。

輪島市深見町一乗地区にいる60代の女性は、県外にいる娘に対し「地震で道路が寸断され、地区にいるおよそ50人が孤立状態になっている。停電や電波障害が発生し、外部とのやりとりが困難で情報が入らず不安だ。地区は高齢者ばかりで厳しい寒さのなか耐えていて、単1や単3の電池、ガソリンや灯油、それに食料がなくなってきている」と話していたということです。

能登町小間生地区に暮らす母親から孤立状態になっていると聞いた男性は「小間生地区には道路が崩れるなどして、車で出入りができないと聞いている。3日朝、固定電話がつながったようで、一度、母から無事だと連絡があったが、その後は連絡が途絶えている。役場に聞いてもこの地区についてはほとんど情報がなく、支援物資も届いていないようなので心配だ」と話しています。

輪島市門前町皆月地区に暮らす父親と連絡が取れないという男性は「皆月地区まで2つのルートがあるが、両方とも山崩れで乗用車が通れず孤立状態にあると聞いている。電気も電波も使えない状態で、安否の確認もできず心配だ」と話しています。

輪島市門前町七浦地区に自宅がある東栄一さん(72)は地震発生時、別の場所にいて2日午後、歩いて自宅に戻りましたが、この地区に向かう道路は隆起していたりトンネルの一部が崩れ落ちたりして、乗用車で通ることはできないということです。

東さんは「自宅近くの避難所で妻の無事を確認できたが、飲料水や食料、毛布も十分になく、給水車やトラックも入れないため支援物資が届いていない。携帯電話がつながらず、地区の外からは安否の確認も状況の確認もできない。地区の区長会から市への要望書を託されたので、きょう歩いて地区から出てきて市の担当者に手渡した。明日の朝、被災した自宅の地域に戻ることになっているが、この先、連絡が取れない中、支援が来るのかとても不安だ」と話していました。

輪島市空熊町別所の実家に帰っていた知人と地震のあと連絡がとれない状態になっている女性は「空熊町の別所と前田に支援に向かった人からは『道路の状況がひどくて引き返してきた』と聞きました。お年寄りだけでなく親戚の子どもも数人いるようなので、早く連絡が取れることを願っています」と話していました。

珠洲市笹波町で親戚が住む集落が孤立状態になっているという女性は「いとこの家族4人が住んでいて、集落にはほかにも20人くらいいるそうです。山の中にある集落で、海や町なかに行くための唯一の道路が土砂などで通れなくなっているということで、市役所にも情報を伝えて助けを求めていますが、現時点で支援の手は届いていないようだ」と現地の状況を訴えました。

その上で「車中泊をしていて、携帯電話の充電も車でしているようですが、ガソリンも少なくなっているようです。ほかにも灯油や水が足りないと言っていました。食料も少しは家にあるものの、底を尽きかけているようで心配です」と話していました。

SNSにも支援求める投稿(4日午後3時時点)

地区や集落が孤立状態になっているとして支援を求める投稿は、SNS上にも相次いでいます。

石川県穴水町比良に住む高校3年生の男性によりますと、地区の外につながる主要な2本の道路は土砂崩れや路面の陥没などで車の通行が難しい状態だということで、地区が孤立状態にあるということです。

男性は「周囲にはふだんは90人ほどが住んでいますが地震発生時には55人ほど自宅の寺に避難してきました。その後、避難した人は自宅に戻ったり車中泊をしたりしていて、いまは家族だけで寺に残っています」と話しました。

被害の状況については「周囲の家は2、3軒ほどが倒壊していて、屋根の瓦も確認できるだけで10軒近くは被害を受けています。寺は鐘楼が傾き、次に大きな地震がきたら鐘が落ちてしまうかもしれません。地震がおさまってほしいです」と話しました。

その上で「水道や電気、ガスなどのライフラインが確保できておらず、携帯電話の電波もほぼつながりません。一般の方が水や食糧などを届けてくれましたが、水は2週間ほど食糧は1週間から10日もつかどうかという状況です。早く電気が復旧してほしいです」と話していました。

石川県能登町黒川でも、集落に続く道に大きな亀裂が入るなどして寸断していて、車での行き来が難しく、物資などを運び込むのが難しい状態だということです。

Xに投稿した女性によりますと、地区にある公民館や宿泊施設に30人ほどが避難しているほか、車中泊をしている人も多いということです。

高齢者が多く歩いて集落から出ることは難しいということで、女性は「介護用のオムツや薬などが足りなくなっている。早く支援の手が届いてほしい」と話していました。

石川県輪島市西山町の山あいでは、集落に続く道路が寸断されているということです。

情報を投稿したのはこの集落に祖父母と父、それに弟が住んでいるという20代の女性で、電気も復旧していないため、1日の夜以降、連絡がとれない状態になっているということです。

女性は「西山町は高齢者が多く、避難したくてもできない人が50人以上いるのではないかと思います。水や食料、燃料の備蓄がいつまで持つか、何より健康状態が心配です」と話していました。

DMAT医師 “道路の寸断で医療が十分届かず”

今回の能登半島地震で被災地に派遣された医療チームの指揮をとる医師は、道路の寸断で避難所や在宅の患者が孤立し医療支援が十分届いていないとして、孤立の解消が急務だと指摘しています。

災害派遣医療チームDMATの指揮をとる近藤久禎医師によりますと、被災地では4日の時点で中部地方を中心におよそ80の医療チームが活動しています。

被災地では断水したり、スタッフが不足したりしている医療機関も多く、これまでに1か所の病院から46人の入院患者を金沢市など他の病院に搬送したほか、今後も複数の病院でおよそ150人の患者の避難を進める予定だということです。

また、断水の影響で搬送が必要な透析患者が100人余りいて、5日までに全員避難させることにしています。

医療機関は支援できている一方、道路の寸断で孤立した避難所や在宅の患者に医療が十分届いていないとしています。

酸素を吸入する機器を自宅で利用している患者およそ40人と連絡がとれていないほか、孤立した避難所や高齢者施設で治療が必要な患者がどれくらいいるか把握できていないということで、道路の復旧が急務だとしています。

近藤医師は「交通が遮断されている中、ライフラインも被害を受け、多くの人が苦しんでいる。病院だけでなく高齢者施設や避難所に対して、水や食料、暖房とともに、医療を提供できる環境を整備していく必要がある」と話しています。

専門家分析でも 孤立訴える声 多数

一方、インターネットのセキュリティーに詳しい慶応大学の武田圭史教授がSNS上に発信された情報などをもとにまとめたところ、県が公表している地区以外にも孤立を訴える声が多数、寄せられていることがわかりました。

武田教授のまとめをもとに作成 孤立状態とみられる主な地区

3日午後4時までの情報では
珠洲市三崎町笹波町高屋町馬緤町若山町蛸島町狼煙町
輪島市町野町門前町縄又町南志見地区鳳至町西保地区上山町尊利地町
穴水町
能登町
内灘町となっています。

武田教授はSNS上に寄せられた投稿から、同じ地域で孤立の情報が複数寄せられているものや、画像などを元に孤立しているとみられる地区を割り出し、自身のX(旧ツイッター)で公開しています。

これらの中にはすでに孤立が解消していたり、重複していたりする可能性もあるため、最新の情報を確認したうえで支援に活用してほしいとしています。

武田教授は「今回の地震では特にSNS上に孤立を訴える人たちの声が多く寄せられているが、どうしても公的機関からの公表には時間がかかってしまう。集めた情報を被災地で支援活動にあたる人たちに活用してほしい」と話していました。