来年度予算案 閣議決定 一般会計総額 2年連続110兆円超

一般会計の総額が112兆717億円となる来年度・2024年度予算案を決定しました。過去最大だった今年度の当初予算は下回ったものの、2年連続で110兆円を超え、財源の3割以上を国債に頼る厳しい財政状況が続いています。

22日夕方の臨時閣議で決定された政府の来年度予算案は、一般会計の総額が112兆717億円となります。

過去最大だった今年度の当初予算を2兆3095億円下回るものの、2年連続で110兆円を超えて過去2番目の規模となりました。

高齢化や少子化対策の強化に伴い、社会保障費が37兆7193億円と今年度の当初予算より8506億円増えたほか、将来の防衛力強化にあてる資金を除いた防衛費も7兆9172億円と1兆1292億円上回りました。

さらに、これまで発行した国債の償還や利払いにあてる国債費は、長期金利の上昇を反映して1兆7587億円多い27兆90億円となっています。

一方、通常の予備費とは別に今年度の当初予算で5兆円を計上していた物価高騰などに対応する予備費は4兆円減額して1兆円としました。

歳入では、税収を今年度の見通しとほぼ同額の69兆6080億円と見込んでいますが、税外収入を加えても不足する34兆9490億円は新たに国債を発行して賄う計画で、財源の3割以上を国債に頼る厳しい財政状況が続いています。

政府はこの予算案を来年の通常国会に提出することにしています。

主な歳出項目 社会保障費が3分の1占める

▽全体の3分の1を占める「社会保障費」は、37兆7193億円と今年度の当初予算よりも8506億円増えて過去最大となりました。

診療報酬の薬価の引き下げなどによる効率化で伸びを1400億円程度の抑えたものの、▽高齢化による給付の増加に加えて、▽少子化対策の強化や▽医療従事者の賃上げなどで大幅な増加となりました。

▽防衛費は5年以内に抜本的強化を目指す中、1兆1292億円増えて7兆9172億円となりました。

また、今年度は、将来の防衛力の強化のための資金への繰り入れが3兆3000億円余りありましたが、来年度は繰り入れを計上しませんでした。

▽地方自治体に配分する地方交付税交付金などは、17兆7863億円。

この中には、定額減税による住民税の減収を補填(ほてん)する分が含まれていて、今年度よりも1兆3871億円多くなっています。

▽「予備費」は通常の予備費の5000億円に加えて、来年度も物価高騰対策などとして1兆円を計上します。

今年度はコロナ対策などとして5兆円の予備費を計上していましたが、骨太の方針で「歳出構造を平時に戻す」という方針が示される中、4兆円の減額となりました。

このほか、
▽「公共事業費」は6兆828億円、
▽「文化、教育、科学技術関連予算」は5兆4716億円で、いずれも今年度の当初予算とほぼ同じ水準です。

▽これまでに発行した国債の償還や利払いにあてる「国債費」は、1兆7587億円増えて27兆90億円と過去最大となりました。

国債の発行残高の増加に加え、長期金利の上昇を反映し、利払い費の想定金利を今年度の1.1%から1.9%に引き上げたことが要因です。

歳出全体のほぼ4分の1が国の借金の返済にあてられることになります。

来年度予算の一般会計では、「社会保障費」と「地方交付税交付金」、それに「国債費」の3つの経費が歳出全体の73.6%を占めました。

高齢化や国債の発行残高の増加に伴って、ほかの政策に使える予算の余地がどんどん小さくなり、財政の硬直化が進む状況となっています。

歳入の3割以上が国債

一方、歳入のうち、税収は69兆6080億円と補正予算段階の今年度の見通しとほぼ同額を見込んでいます。

企業業績の回復傾向を反映し、法人税の税収は、今年度を2兆3840億円上回る17兆460億円と見込んでいるほか、堅調な消費や物価の上昇をふまえて消費税も8310億円多い23兆8230億円と見込んでいます。

一方、所得税は定額減税で2兆3000億円の減収が想定されるため、3兆3900億円減って17兆9050億円としています。

税外収入は7兆5147億円。

それでも不足する34兆9490億円は新たに国債を発行して賄う計画です。

今年度の当初予算よりは6740億円減るものの、歳入全体に占める割合は31.2%と、財源の多くを国債に頼る厳しい財政状況が続いています。

基礎的財政収支 2025年度黒字化の目標達成は難しい状況

政府は、政策に必要な費用を借金に頼らず、税収などでどれだけ賄えているかを示す「基礎的財政収支」を財政健全化の指標の1つとしています。

来年度予算案では、この基礎的財政収支が一般会計で8兆3163億円の赤字となっています。

政府は地方も合わせた基礎的財政収支を再来年度・2025年度に黒字化する目標を掲げていますが、達成は難しい状況が続いています。

国債の発行残高も増え続けています。

来年度予算案でも34兆9490億円の新たな国債の発行を計画しています。

今年度の当初予算は下回りますが、最近は、巨額の補正予算の編成によって年度途中に追加で国債を発行する例も相次ぎました。

新型コロナの感染が拡大した2020年度から3年間、政府は景気の落ち込みなどに対応するため、20兆円から30兆円規模の補正予算の編成を重ね、多くを国債の発行で賄いました。

こうしたこともあって、普通国債の発行残高は来年度末には1105兆円余りにまで膨らむ見込みです。

国債の償還や利払いにあてる費用も増えるなか、今後は長期金利の動向も焦点になります。

日銀が金利操作の運用を見直し、長期金利が上昇したことを反映して、来年度予算案では、歳出の国債費のうち利払いにあてる金額として、今年度の当初予算を1兆2187億円上回る9兆6910億円を計上しました。

国債の発行残高が積み上がる中、今後、金利が大きく上昇すれば利払い費がさらに増える可能性もあります。

財政健全化に向けて、徹底した歳出改革や経済成長による歳入の増加が必要になります。

岸田首相 “予算案 早期成立に努力”

岸田総理大臣は22日夜、総理大臣官邸で記者団に対し、「物価に負けない賃上げを実現するための予算面からのさまざまな対応を最大限、図るとともに『こども未来戦略』に基づく『加速化プラン』をスピード感をもって実施する。あわせて新規国債発行額を減額するなどメリハリのきいたものとした。年明けの通常国会で成立を早期に図るべく努力していきたい」と述べました。

林官房長官 “歳出・歳入の改革進める”

林官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で、「諸外国を見渡しても、また過去を振り返っても、日本の財政状況が極めて厳しい状況にあることは変わりない」と述べました。

そのうえで、「政府としては、2025年度におけるプライマリーバランスを黒字化するとともに、債務残高や対GDP比を安定的に引き下げるという財政健全化の目標の達成に向けて必要な政策対応はしっかりと行い、引き続き、歳出・歳入両面の改革を進めていく」と述べました。

鈴木財務相 “財政健全化への1つの道筋は示せた”

鈴木財務大臣は臨時閣議のあとの記者会見で、「歴史的な転換点の中、先送りのできない課題に挑戦し、よい変化の流れをつかみ取るための予算だ。歳出規模や新規の国債発行額を前の年度に比べて減額でき、財政健全化に向けた1つの道筋は示すことができたのではないか」と述べました。

また、国債の償還や利払いにあてる国債費が長期金利の上昇を反映し過去最大となったことについて、「今後も金利が上昇し、利払い費が増加すれば、財政状況が悪化し、政策的経費が圧迫されるおそれもある。メリハリある予算編成や重要な政策課題についての安定財源の確保を通じ、国債発行をできるだけ抑制し将来の利払い費を抑える努力をしていく必要がある」と述べました。