フィギュア 鍵山優真 “技の完成度”で接戦制す【勝因 解説】

フィギュアスケートのNHK杯で3年ぶりの優勝を果たした鍵山優真選手。
ケガをした自分自身と向き合う中で磨いてきた“技の完成度”でライバルとの接戦を制しました。
(スポーツニュース部 記者 福島康児)

自身の演技の粗さに気付いて…

鍵山選手は去年7月に負った左足のケガの影響が残り現在も「トーループ」「サルコー」「ループ」の習得している3種類の4回転ジャンプのうち、ループについては実戦で跳ぶまでの状態に戻せていません。

そんな状況のなか、今シーズン、鍵山選手がこだわってきたのが1つ1つの“技の完成度”を上げ、表現力に磨きをかけることでした。

実戦練習が思うように積めない中で自分の演技を映像で見返す機会も増え、自身の演技の“粗さ”に気付いたと言います。

新たなコーチとともに

その弱点を補うため演技の美しさに定評があったソチオリンピックの女子シングルの銅メダリスト、カロリーナ・コストナーさんをコーチに招きました。

カロリーナ・コストナーさんに学ぶ

例えば、腕の上げ方、ひとつをとっても、ただ腕だけをあげるのではなく、肩甲骨や上半身全体を使ってあげることで演技を大きく見せるなど基礎から見直しました。

また、ジャンプに関してもケガをする前のように闇雲に長時間練習するのではなく、1本1本を丁寧に跳んで、その都度課題を潰していく方法に変えました。

NHK杯で手応えつかみ

迎えたNHK杯、前半のショートプログラムで今シーズンの世界最高得点をマークし首位に立った鍵山選手。

追いかけるのは大会3連覇を目指すライバルの宇野昌磨選手、差はわずか5点余りです。

フリーで鍵山選手の演技構成は、4回転ジャンプが宇野選手より2本少なく、基礎点の合計は10点近く下回っていました。

それでも冒頭の4回転サルコーを完璧に跳んで、出来栄え点で4.3という高い加点を得ると、その後も転倒したトリプルアクセルを除き、すべてのジャンプで回転不足や踏み切りのミスを取られることなく出来栄え点を獲得しました。

スピンとステップもすべてレベルフォーにそろえ、表現力などを評価する「演技構成点」も去年、採点方式が変更されているため厳密な比較はできないものの、銀メダルを獲得した去年の北京オリンピックに近い得点まで戻しました。

宇野昌磨選手

難しい構成に挑んだ宇野選手がすべての4回転ジャンプで回転不足を取られるなど細かいミスが続き得点を伸ばしきれなかったのに対して、鍵山選手が“完成度の高さ”で着実に得点を重ね、ショートプログラムのリードを守り切りました。

鍵山優真選手
「前半は落ち着いてできたと思いますし、後半のステップからスピンにかけても曲にしっかりと乗りながらやることができたと思うので、いい収穫になった」

そのうえで、手応えも口にしました。

「コストナーさんに教えていただくようになってから表現の細かい部分であったりとか、体の使い方とかを凄く丁寧に教えてくれたので、それが生かせられていたらいいなと思います」

鍵山選手は12月、ライバルの宇野選手とともにグランプリファイナルに臨みます。

磨いてきた“技の完成度”に加え状態がさらに回復すれば、まだ見ぬ世界の頂点への道が見えてきます。