ことしの日本シリーズの全7試合を振り返り、興味深い数字が出てきました。
阪神の「9」に対してオリックスの「12」。
盗塁の数でもヒットの数でもありません。
試合終盤、7回以降の失点の合計です。
わずかに見える3点ですが、短期決戦ではリリーフ陣が関わる失点の差が勝敗に大きく影響していました。
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阪神 日本一【解説】盤石リリーフに右腕の復活 ルーキー成長も
連覇を狙うオリックスとの対戦を制しプロ野球の今シーズンの日本一となった阪神。38年ぶりの歓喜を成し遂げた要因は、リリーフ陣が終盤に役割を果たしたことに加えて、日本シリーズの流れを大きく変えた“右腕のピッチング”でした。
さらに攻撃陣では“ルーキー”が叱咤(しった)激励を受けながら結果を出しました。
(大阪放送局 記者 中村拓斗)
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リリーフ陣の踏ん張りでつかんだ日本一
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阪神のリリーフ陣のレギュラーシーズンの防御率は12球団トップの「2.37」。先発からつないだリードをリリーフ陣が守ってそのまま勝ちにつなげる。
これが勝ちパターンの1つです。
▽今シーズン途中に先発から中継ぎに転向し、岡田彰布監督から“スペードのエース”と称された桐敷拓馬投手。
▽プレッシャーのかかる場面で力を発揮してきた島本浩也投手。
▽さらに3年目で自己最多の44試合に登板し防御率1.35をマークした石井大智投手。
そして湯浅京己投手の離脱によりシーズン途中から抑えを託され、最多セーブのタイトルを獲得した岩崎優投手らが、1年間、安定したピッチングを続けてきました。
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日本シリーズでも見られたのが、この盤石なリリーフ陣のピッチングでした。
第1戦は8回の加治屋蓮投手と9回の岩貞祐太投手がいずれも無失点。サヨナラ勝ちをした第4戦や8回ウラに一挙6点を奪って逆転勝ちをした第5戦。石井投手や島本投手、抑えの岩崎投手らは、シーズン同様の安定感を見せてシリーズを通してほぼ無失点で、打線の終盤の勝負強さへの“リズム”を守りから作っていきました。
右腕の“復活の1球”が流れを変えた!
こうしたリリーフ陣のピッチングに加えて、忘れてはいけない投手が1人います。
湯浅京己投手です。
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この右腕の“復活の1球”がシリーズ全体の流れを大きく変えました。
昨シーズン飛躍を果たし、ことしのWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの日本代表にも選ばれ、世界一に貢献しました。
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しかし、今シーズンはたび重なるケガの影響で、1軍での登板は6月15日を最後にありませんでした。2軍での生活が続く中、1軍のマウンドを目標にリハビリや調整をひたすら続けてきました。
日本シリーズでは1勝2敗で迎えた第4戦で初めてベンチ入りし、いきなり同点の8回、2アウト一塁・三塁の大ピンチで岡田監督にマウンドを託されました。
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名前がコールされた瞬間、甲子園の雰囲気が一変しました。
大歓声に包まれるなかマウンドに上がった湯浅投手は、およそ5か月ぶりの1軍のマウンドでもブランクを感じさせませんでした。
持ち味の力のあるストレートで“わずか1球”でピンチを切り抜けました。
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翌日の第5戦でも同点の8回を無失点に抑え、そのウラの逆転へとつながりました。
第7戦も5回の2アウト一塁二塁の場面で島本投手がマウンドに上がり、ピンチを切り抜けるなど鉄壁のリリーフ陣がリードを守りました。
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リリーフ陣がリーグ優勝を果たしたシーズンどおりの力を発揮して、終盤の7回以降の失点をオリックスよりも3点少なく抑えただけでなく、ファンが待ち望んでいた“球場の雰囲気を変える”と言われている右腕が復帰し、日本シリーズの流れも大きく変えたことが、38年ぶりの日本一につながりました。
“叱咤(しった)激励”で成長のルーキー 森下翔太
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第5戦で逆転タイムリースリーベースを打つなど、日本一に大きく貢献したルーキーの森下翔太選手はエラーやミスもあり、岡田彰布監督の“叱咤(しった)激励”を受けながら結果を出した初めての日本シリーズでした。
日本一が決まったあと、森下選手はライトのポジションからマウンドに向かって走って、歓喜の輪に加わり選手たちと抱き合いながら喜びを分かち合いました。
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ドラフト1位で入団したルーキーの森下選手は、力強いスイングが魅力で開幕戦で先発出場しました。
その後“プロの壁”にぶつかり、4月中旬から2回の2軍生活を送りましたが、7月下旬からは主に3番で出場し優勝争いを続けるチームのクリーンアップを担ってきました。
1年目で出場をつかみとった日本シリーズでしたが、出だしは苦しいものとなりました。
ミスが相次ぎ 指揮官も厳しいことば
第1戦の第1打席。
1アウト一塁の場面で、追い込まれてからストライクを見逃して三振。盗塁を試みた一塁ランナーの中野拓夢選手もアウトになり、いわゆる“三振ゲッツー”でチェンジ。テレビに映し出された指揮官の表情には、怒りがこみあげているように見えました。
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この日は第5打席にようやく1本ヒットが出たものの、翌日の第2戦ではまたも1回、1アウト一塁の場面。今度はエンドランのサインでライトフライに終わりました。
第2打席はノーアウト一塁でショートゴロのダブルプレーとなってチャンスを生かせませんでした。
この日の試合後、指揮官はあきれたような表情で、厳しい言葉を口にしました。
岡田監督
「ずっと森下がキーになっている。初回にしても。何でゴロを打たんのやろうな。初回から流れが変わってしまう。どういう考えで打っているのか」
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それでも、このまま終わらないところがルーキーで3番を務めた森下選手でした。
「切り替えてやるしかない」と強く決意し、臨んだ第3戦で今シリーズ初めてのタイムリーヒット。
続く第4戦は、第1戦と第2戦で“流れを変えてしまっていた”1回でした。
先制のタイムリーツーベースを打ち、ここでも結果を出しました。
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この試合でサヨナラ勝ちをしたあと、指揮官はグラウンドで行われた勝利監督インタビューでファンを笑わせました。
岡田監督
「森下は、ちょっと怒らないといけないですね。怒ると発奮しますね」
ところが、対戦成績を2勝2敗として迎えた第5戦。森下選手はまさかのミスをしてしまいます。
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0対1とリードされた7回の守り、2アウト一塁からセカンドゴロを中野拓夢選手がエラー。カバーに入った森下選手はボールに駆け寄り、そのまま素手で拾おうとしましたがボールが手につきませんでした。
この間にランナーがホームインして痛い失点となり、貴重な追加点を与えてしまったのです。
“転んでもただでは起きない”ルーキー
甲子園球場の阪神ファンを大きく落胆させました。
それでも…。
転んでもただでは起きないのがやはり森下選手でした。
劣勢に立っていた阪神は8回に1点を返し、続く1アウト二塁三塁のチャンス。
森下翔太選手
「エラーをして迷惑かけたので、絶対にかえすという強い思いで打席に立ちました」
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追い込まれてからファールで粘って7球目。
低めのきわどいボールを振り抜いた打球は、外野の頭を越えて逆転のタイムリースリーベースとなりました。
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ランナーを出迎えた際、涙をこらえているようにも見えた岡田監督。
試合後、森下選手について、褒めたたえました。
岡田監督
「全然だめなほうだったが、最後の最後にやっと3番らしい働きをした」
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第6戦ではノーヒットでしたが、第7戦では5回に貴重な追加点となるタイムリーヒットと9回にダメ押しのタイムリーツーベースを打つなど3安打で日本一に貢献した森下選手。
森下翔太選手
「呼吸するのを忘れるような試合ばかりで、体も精神的にもきつかったですが、最後報われたのでよかった」
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全7試合という短期決戦のなかで、指揮官から連日“叱咤激励”の愛情を受けて成長した森下選手。ルーキーで38年ぶりの歓喜を味わった経験が、今後のプロ野球人生に大きく生きることに違いありません。
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