【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(3日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる3日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナ軍事評論家 複数戦線で反転攻勢のねらいを語る

ウクライナの軍事評論家はウクライナ軍が南部ヘルソン州やザポリージャ州など複数の戦線で反転攻勢を進めていることについて、「ロシア軍を翻弄することができる」と述べ、敵をかく乱させたうえで、いずれかの戦線で前進を図り、突破口を開くねらいがあるという見方を示しました。

ウクライナ軍の作戦に自身も参加する軍事評論家のタラス・ベレゾベツ氏が先月31日、ウクライナの首都キーウでNHKのインタビューに応じました。

この中で、ロシア軍が大規模な戦力を集中させている東部ドネツク州のアウディーイウカについて、「ロシア軍にとってこの地域で最大のロジの拠点になる場所だ。州内最大の都市に近く、『ドネツクの門』とも呼ばれている」と述べ、ロシア軍にとって戦略的に重要な場所で、掌握することに固執していると指摘しました。

そのうえで、「彼らは常に歴史的な日付に執着している」とも述べ、ロシア側はソビエト時代の革命記念日にあたる今月7日までにアウディーイウカを掌握し、ロシア国民に戦果を誇示したいねらいもあるとしています。

ただ、「ロシア軍がここで成功することはないだろう」と述べ、ウクライナ軍が強固な陣地を築くなどして防御を固めていると強調しました。

また、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で、ドニプロ川を渡ってロシア側が占領する東岸の地域で作戦を続けていることや、ザポリージャ州で拠点のトクマクに向けて部隊を進めようとしていることについて、「ある地域で作戦を展開しているように見せかけることでロシア軍を翻弄できる」と述べ、複数の戦線で反転攻勢を進めることで敵をかく乱させるねらいだとしています。

そのうえで、「どこかで最大の攻撃が始まるだろう。どの地域でもありうる。数週間のうちにいい話があると思っている」と述べ、いずれかの戦線で前進を図り、突破口を開くねらいがあるという見方を示しました。

そして、ベレゾベツ氏は「われわれはウクライナの気候、土壌、季節を知り尽くしているので、どんな時期でも防衛と攻撃の両方を行うことができる」と述べ、冬が到来しても反転攻勢を継続できると強調しました。

また、ロシア軍については「われわれから多くを学んでいる。軍事用の無人機の活用がそのいい例だ。われわれは非常に危険で能力のある敵に直面しているのだ」と述べました。

一方、イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫するなか、アメリカなどでウクライナへの支援をめぐって慎重論が出始めていることについて、「ウクライナが取り残されることはない。アメリカはロシアに勝利するまでウクライナを支援する」と述べました。

キーウ市民 “イス・パレ情勢”で欧米側支援の影響懸念

イスラエル・パレスチナ情勢に国際社会の関心が集まる中、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの首都キーウでは、ウクライナに対する欧米側の支援に影響が出ないか懸念する声が多く聞かれました。

子どもを連れて公園を散歩していた45歳の女性は「私たちは欧米の支援に大きく依存しているので、悪い影響が及ぶ可能性があるのではないか」と話していました。

また、46歳の男性は「これは現在のウクライナにとって非常に大きな危険になると思う。世界におけるウクライナの今後の立ち位置が決まるのではないか」と話し、ロシアに勝利して欧米諸国の一員になるという将来の計画に影響を与えるのではないかと懸念していました。

67歳の男性は「世界が私たちの戦争に関心を失いつつあることは私たちにとって痛手だ。注目度が下がっていると率直に言わなければならないが、世界がウクライナで起きていることにまったく無関心だというわけではないと思う」と話していました。

一方、47歳の女性は「国際社会がウクライナへの関心を失ったとは思わない」と話した上で、ロシアのプーチン大統領がイスラエルによるガザ地区への地上侵攻に懸念を示したことについて、「彼はウクライナでどれだけの人が亡くなったか考えていない。ウクライナの領土にミサイルを撃ち込み、民間人を殺してきたということを考えたくもないのだろう」と批判しました。

ウクライナ反転攻勢 ロシアは東部で攻勢も激しい消耗戦続く

反転攻勢を進めるウクライナ軍は南部などで一部の集落を奪還したものの、ロシア側の防衛で大きな前進が阻まれています。

一方、ロシア軍も多大な損失をいとわず、東部を中心に攻勢を強めていますが、期待する戦果は得られず、激しい消耗戦が続いています。

ことし6月から反転攻勢を進めるウクライナ軍は、南部ではザポリージャ州などで一部の集落を奪還した上で、ロシア側の拠点トクマクに向けて戦闘を続けるとともに、ヘルソン州でドニプロ川を渡る作戦を遂行し、ロシア側が占領する東岸で作戦を展開しているとされています。

また、アメリカから供与された射程の長い地対地ミサイルATACMSなどでロシア軍の補給や攻撃の拠点となる飛行場を攻撃するなど、ロシア側の戦力を低下させようとしています。

一方、ロシア軍は南部などでウクライナ軍の前進を阻む防衛線を強化するとともに、先月に入って、東部の各前線で大規模な攻勢に乗り出しています。

このうちドネツク州では、ウクライナ側の拠点アウディーイウカ周辺に4万人規模とされる部隊を投入したとみられています。

受刑者などで構成された「ストームZ」と呼ばれる突撃部隊も含まれ、ロシア側は多大な損失や犠牲もいとわず、この街の掌握に固執しているとされています。

また、冬が迫る中、ロシア軍はイラン製や自国製の無人機、ミサイルも使って発電所などのインフラ施設への攻撃を強化するのではないかという見方も出ています。

経済誌フォーブスのウクライナ版は、ロシア軍によるミサイルの発射数はことし9月には132発だったのが、先月は31発と大きく減ったと指摘し、「ロシアが冬の攻撃に向けてミサイルを蓄積しようとしている」と警告しています。

さらに、ロシアは関係を強化している北朝鮮から大量の弾薬などを供与されているとみられ、戦闘の長期化に備える動きもみせています。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は1日付けのイギリスの経済誌「エコノミスト」で、「第1次世界大戦と同様にこう着状態に陥る段階だ」と指摘するなど、双方ともに期待する戦果は得られず、激しい消耗戦が続いています。

ロシア軍 夜間に各地を無人機で攻撃

ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は夜間、各地を無人機で攻撃し、東部や南部で火災などが起きていて、被害が相次いでいます。

ウクライナ軍は3日、ロシア軍が夜間、イラン製の38機の無人機やミサイルでウクライナ各地に攻撃を行ったと発表しました。このうち24機の無人機などを撃墜したとしています。

しかし、東部ハルキウ州ではガソリンスタンドや住宅が破壊され、大規模な火災が起きたほか、南部オデーサ州でもインフラ施設が損傷したとするなど、被害が相次いでいます。

ロシアは東部ドネツク州のアウディーイウカなどでも攻勢を強めていて、ウクライナのゼレンスキー大統領は2日、動画での演説で東部戦線で戦う兵士を激励したうえで「ウクライナが必ず勝つと確信している」と強調しました。

イギリス国防省 ロシア側の防空能力が弱まる可能性を指摘

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は2日、「ウクライナ軍は南部ヘルソン州のロシア軍司令部を巡航ミサイルなどで攻撃した」と指摘し、ウクライナ側は南部で反転攻勢を続けています。

また、イギリス国防省は2日、ロシア軍は東部ルハンシク州や南部クリミアなどの支配地域で、ウクライナ軍の攻撃によって少なくとも4基の長距離地対空ミサイルの発射装置を失ったとし、ロシア側の防空能力が弱まる可能性があると指摘しています。

ウクライナ大統領選 大統領府元顧問が立候補の意向と報道

ウクライナの地元メディアは1日、大統領選挙が来年の春に実施された場合、ウクライナ大統領府元顧問のアレストビッチ氏が立候補する意向を示したと報じました。

また、別の地元メディアは2日、アレストビッチ氏が訴える政策について伝え、ウクライナのNATO=北大西洋条約機構への加盟をめぐって、「ロシアに占領された土地は武力ではなく、政治的な手段によってのみ回復させる」などと主張しているとしています。

これはロシアによるウクライナの領土の占領を事実上認める内容で、すべての領土の奪還を訴えているゼレンスキー大統領とは対照的なことから、「ロシアの手先だ」などといった批判も出ています。

アレストビッチ氏はことし1月に東部ドニプロでアパートにミサイルが着弾し、多くの犠牲者が出た際、ウクライナの防空システムが迎撃したロシア軍のミサイルが落ちたものだと説明しましたが、ウクライナ軍が否定したことからSNSで謝罪し、大統領府顧問を辞任していました。

ウクライナでは当初の予定では来年の春が大統領選挙の実施時期ですが、ロシアの軍事侵攻が続き、戒厳令が出されたままの場合は選挙は行われないことになっています。

ウクライナ 徴兵逃れや密出国あっせんのグループを摘発

ウクライナ保安局は2日、徴兵の対象となる年齢のウクライナの国民を違法に海外に出国させていたとして、国際犯罪グループを摘発したと発表しました。

ウクライナではロシアによる軍事侵攻以降、総動員令が出され、18歳から60歳の男性が徴兵の対象となり、出国が禁じられています。

ウクライナ保安局の発表によりますと、摘発した犯罪グループは徴兵を逃れようとする人を救急車で国境まで運び、その後、森を通り抜けて、隣国に密出国させていたということです。

保安局は犯罪グループのメンバー2人を拘束し、協力していた救急車の隊員も起訴される予定だとしています。

犯罪グループは密出国1人当たりで4800ドル以上、日本円にして70万円以上を受け取っていたということです。

また、保安局は前日の1日も、徴兵逃れや密出国をあっせんしていたとして犯罪組織の摘発を発表していて、この組織は徴兵対象から外れるために偽の身体障害の証明書を作り、1人当たり最大1万ドル、日本円で150万円余りを受け取っていたということです。

組織には国内各地の医療機関の幹部や弁護士、それに徴兵事務所の責任者などが関わっていたということです。

ウクライナでは徴兵を逃れるため、徴兵事務所の責任者に賄賂を送るなどの汚職が後を絶たず、社会問題化しています。

ゼレンスキー大統領はことし8月、汚職対策として、すべての州の徴兵責任者を解任するなど、組織改革を進めているとアピールしていました。

“ロシア軍が受刑者などで構成の部隊 突撃の可能性”米研究所

ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州のウクライナ側の拠点アウディーイウカの掌握をねらって、多くの兵士の犠牲を出しながら攻撃を続けています。

アウディーイウカの戦況についてアメリカのシンクタンク「戦争研究所」は1日の分析で、「ロシア軍は歩兵を中心とした、消耗の激しい地上攻撃を再び仕掛ける準備をしているとみられる」とした上で、受刑者などで構成された部隊を突撃させる可能性があるとの見方を示しました。

前線のウクライナ軍の報道官も2日、地元メディアに対して、ロシア軍がアウディーイウカ周辺で新たな攻撃に向けて部隊の増強など準備をしているとする見方を示し、警戒を強めています。

ロシア国防省“ザポリージャ原発の近くで無人機を撃墜”

ロシア国防省は2日、ロシアが占拠を続けるウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の近くで、ウクライナ側の無人機9機を撃墜したと発表しました。

また、ロシア外務省はザハロワ報道官のコメントを発表し、2機が近くの宿泊施設を直撃したと主張した上で、「IAEA=国際原子力機関の専門家が交代する時期であり、無責任な挑発行為だ」と、ウクライナ側を一方的に非難するなど、揺さぶりを続けています。