衆参補選“1勝1敗” 岸田首相 衆院解散は「今は考えていない」

与野党が対決する構図となった衆参2つの補欠選挙は、衆議院長崎4区で自民党が議席を維持した一方、参議院徳島高知選挙区では野党側が議席を獲得し、与野党の1勝1敗となりました。

これについて岸田総理大臣は、23日朝、総理大臣官邸で記者団に対し、結果を真摯に受け止め、今後の対応に万全を期す考えを示す一方、衆議院の解散については「先送りできない課題に専念すべき時で、今は考えていない」と述べました。

衆議院長崎4区の補欠選挙の開票結果です。

▽金子容三 自民 新 当選 5万3915票
▽末次精一 立民 前 4万6899票

自民党の新人で公明党が推薦した金子氏が、初めての当選を果たしました。

金子氏は長崎市出身の40歳。父親は長崎県知事や農林水産大臣を務めた金子原二郎氏で、証券会社に勤務したあと、今回の補欠選挙に立候補しました。選挙戦で金子氏は、民間での経験や行動力をアピールするとともに、物価高騰対策や革新的な技術をいかした地方の活性化などを訴えました。

金子氏は「厳しい戦いの中で勝利することができた。物価高、そして経済対策を喫緊の課題として県北における地域の現状、苦しみを私が受け止めて国に届けていかなければいけない」と抱負を述べました。

投票率は42.19%で、過去最低だった平成26年の衆議院選挙と比べて10.25ポイント低くなり、過去最低を更新しました。

参議院徳島高知選挙区の補欠選挙の結果です。

▽広田一 無所属 元 当選 23万3250票。
▽西内健 自民 新 14万2036票。

無所属の元参議院議員で衆議院議員も務めた広田氏が、野党4党の支援を受けて3回目の当選を果たしました。

広田氏は高知県土佐清水市出身の55歳。これまで参議院議員を2期、衆議院議員を1期務めました。選挙戦で広田氏は、元議員としての実績や経験をアピールするとともにガソリン税の減税といった物価高騰対策や児童手当の拡充など子育て支援の充実を訴えました。

広田氏は「政治に緊張感をつくっていこうという皆さんの思いが結集をして、一つの大きな力になって勝利することができた。物価高騰対策の一丁目一番地はガソリンの高騰対策だ。今こそガソリン税の減税をやっていかないといけない」と抱負を述べました。

投票率は、去年の選挙と比べて14.37ポイント低い32.16%で過去最低となりました。

今回の2つの補欠選挙は、与野党が対決する構図となり、自民党や立憲民主党などの幹部が相次いで応援に入るなど、激しい選挙戦が展開されました。

その結果、衆議院長崎4区では自民党が議席を維持した一方、参議院徳島高知選挙区では野党側が議席を獲得し、与野党の1勝1敗となりました。

岸田首相「結果を真摯に受け止め 今後の対応に万全期す」

今回の衆参2つの補欠選挙について岸田総理大臣は、23日朝、総理大臣官邸で記者団に対し「結果を真摯に受け止め、地域の政治情勢や、『合区』の影響をしっかり分析したうえで、今後の対応に万全を期していきたい」と述べました。

一方で、記者団から、今回の結果を受けて年内に衆議院を解散する考えはあるか問われたのに対し「緊迫する国際情勢や物価高から国民生活を守り、安心や豊かさを次世代にしっかりと引き継いでいくために先送りできない課題に一つ一つ向き合い、取り組んでいかなければならない」と述べました。

そのうえで「今はそれに専念すべき時であり、それ以外のことは今は考えていない」と述べました。

松野官房長官「先送りできない課題に全力で取り組む」

松野官房長官は、臨時閣議のあとの記者会見で「選挙結果やその要因について、政府の立場でコメントすることは控えたい。民主主義の根幹である選挙は国民の意見を聞く貴重な機会であり、選挙を通じていただいたさまざまな意見をしっかりと受け止めたうえで、引き続き先送りできない課題に一つ一つ全力で取り組みたい」と述べました。

また、選挙戦で論戦が交わされたガソリン価格の高騰対策について「急激な物価高が国民生活や経済活動に与える影響を踏まえると、負担軽減に向けた取り組みは当面、継続していく必要がある」と述べました。

立民 泉代表「野党議席の最大化へ さらに努力」

立憲民主党の泉代表は記者団に対し「岸田政権に対するマグマがたまっていることを実感した。参議院徳島高知選挙区で勝利できたのは、保守地盤が強いと言われる地域でも無党派や県民のうねりを起こせたからだ。敗北した衆議院長崎4区でも、終盤までもつれる戦いができた」と述べました。

また、次の衆議院選挙に向けた野党間の連携について「野党議席の最大化に向けてさまざまな政党とできるかぎりの連携をして、力を合わせていくことが立憲民主党の認識だ。さらに努力しなければならない」と述べました。

立民 安住国対委員長「内閣への不満 はっきりした」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「野党の候補者が一本化して、政権に対する批判の受け皿をきちんとつくれば、大きな政治的変動を起こしうる可能性があることを示唆している。岸田内閣の物価高対策のスピード感の無さや、旧統一教会に対する対応で不満や疑問を持っている方がたくさんいることがはっきりした。そうした声を臨時国会でしっかりぶつけたい」と述べました。

また、今回の結果が岸田総理大臣による衆議院解散の判断に与える影響については「大きな変更があったとは思っていない。所得税の減税だけ打ち出して選挙をやりたいという気持ちはまだ消していないと思うので、緊張感を解かないで対応したい」と述べました。

維新 馬場代表「国民の自民党に対する見方厳しく」

日本維新の会の馬場代表は記者会見で「わが党は候補者を擁立できず、まだまだ全国で戦う体力がないことを改めて感じた。結果は自民党が1勝1敗で、国民の自民党に対する見方が厳しくなってきているあらわれだ。岸田総理大臣は解散について非常に悩ましい状態になっているのではないか」と述べました。

一方、馬場氏は、次の衆議院選挙に向けた野党間の連携について、「野党が共闘して短期的に与党を揺さぶったり、政権を転覆させたりすることは可能かもしれないが、短期で終わることは歴史が証明している。単独政権を目指して、独立独歩で選挙を戦う方針はこれからも変わらない」と述べました。

公明 山口代表「与党として結果を謙虚に受け止める」

公明党の山口代表は記者団に「有権者の示した投票行動をしっかり受け止めて分析し、今後に生かしたい。与党として結果を謙虚に受け止めることが重要だ」と述べました。

また、岸田総理大臣が選挙前に所得税減税の検討を与党に指示したことは結果に影響したかと問われたのに対し「影響したとは思っていない。与党が足並みをそろえられるよう布石を打つことに重点があったのではないか」と述べました。

共産 志位委員長「市民と野党の共闘の力発揮」

共産党の志位委員長は記者団に対し、「参議院徳島高知選挙区で圧勝したのは非常に大きな成果だ。衆議院長崎4区はあと一歩だったが追い上げる結果になり、全体として岸田政権に対する国民の厳しい審判が下された選挙だった。市民と野党の共闘の力が発揮され、次につながる意味もある。今後は、できるだけ各党の力が最大限発揮できるような共闘にしていく努力がそれぞれ必要だ」と述べました。