【記者解説】衆参補欠選挙 与野党1勝1敗 どう見る?年内解散は

与野党対決の構図となった衆参2つの補欠選挙は与野党の1勝1敗となりました。

このうち衆議院長崎4区の補欠選挙は、自民党の新人で公明党が推薦した金子容三氏(40)の初めての当選が確実になりました。また参議院徳島高知選挙区は無所属の元参議院議員で野党4党が支援した広田一氏(55)の3回目の当選が確実になりました。

激しい争いとなった長崎4区ではどのような選挙戦が繰り広げられたのか。
国政や、岸田首相の衆議院の解散戦略への影響は?
記者解説をQAでまとめました。

《長崎4区 激しい争い》長崎局・谷口真央記者

Q.自民の新人、金子氏の勝因は

A. 支持基盤を固める組織型の選挙戦が功を奏したということだと思います。NHKの出口調査では金子さんは、自民党支持層からは70%台半ば、推薦を受けた公明党の支持層からは80%台半ばの支持を得ています。

選挙戦では地元の自民党の県議会議員や市議会議員が支援を呼びかけたほか、党本部の幹部も相次いで応援に入り、選挙戦中盤には、岸田総理大臣も現地入りしました。また、幅広い企業・団体からも支援を受け、組織戦を展開しました。

Q.敗れた末次さんの戦いぶりをどう見る

A. 善戦したといえるかと思います。注目されるのは無党派層の支持です。NHKの出口調査で末次さんは、無党派層の60%台半ばから支持を得ました。

一方、金子さんへの無党派の支持は30%台半ばにとどまっていて、末次さんは金子さんの2倍近い支持を得る形となりました。末次さんは選挙戦の中盤以降、有権者の7割近くを占める佐世保市に連日入り、無党派層にターゲットを絞って、支持を呼びかけました。こうしたことによって、激しい戦いが展開されたということだと思います。

《与野党の1勝1敗》政治部・山田康博記者

Q.今回の結果をどう見る

A.
2つの選挙区はもともと自民党の議席でしたので、与党にとって喜べる結果とは言えないと思います。実際、自民党の茂木幹事長は「長崎で勝ったのは大きいが厳しい選挙戦だったのは間違いなく、結果を謙虚に受け止めて臨時国会に緊張感を持って臨みたい」と話しています。

内閣支持率が30%台にとどまる中、自民党は次の衆議院選挙に向けて態勢の立て直しを余儀なくされることになりそうです。

一方、野党側は攻勢を強めるきっかけとしたい考えです。立憲民主党の幹部は2勝こそ届かなかったものの、参議院の補欠選挙で勝利したことは「十分な成果だ」と話しています。

臨時国会では、今週から物価高対策などをめぐって論戦が交わされる見通しで、野党側は岸田政権の対応を厳しくただしていく方針です。

Q.岸田首相の衆議院の解散戦略に影響は

A. 影響は避けられないと思います。永田町では依然「臨時国会での解散もあるのではないか」といった臆測がくすぶっています。しかし、今回の結果を受けて、自民党内には、「1勝したとはいえ、年内の解散は難しいのではないか」という見方も出ています。

一方で、岸田総理が所得税の減税を検討するよう指示したことを捉えて、「解散の布石ではないか」と話す自民党幹部もいます。岸田総理は、内閣支持率の推移や所得税を減税する方針への世論の反応などを見極めながら、解散のタイミングを探るものとみられます。

《各政党のコメント》

自民 茂木幹事長「結果を謙虚に受け止め国会に臨みたい」

自民党の茂木幹事長は党本部で記者団に「参議院徳島高知選挙区は残念だったが、衆議院長崎4区でいい結果が出せた。長崎で勝ったのは大きいが厳しい選挙戦だったのは間違いなく、結果を謙虚に受け止めて国会に緊張感を持って臨みたい。政権として訴えるべきことを明確にし、丁寧に訴えることで 国民の信頼を確保していきたい」と述べました。

立民 大串選対委員長「次の衆院選でどう戦うか前向きに議論」

立憲民主党の大串選挙対策委員長は、22日夜、党本部で記者会見し「1勝1敗という結果だが、ともに自民党が持っていた議席を1つもぎ取り、参議院徳島高知選挙区は圧勝した。衆議院長崎4区も保守地盤の非常に強いところで接戦に持ち込めた。今後は党内で、何が足りなかったか、よく反省しながら、次の衆議院選挙でどう戦うか前向きに議論したい」と述べました。

また記者団が「岸田総理大臣が補欠選挙の投開票日の前に所得税の減税を検討するよう指示したことが選挙に影響したか」と質問したのに対し「私の感覚ではむしろマイナスに働いた。国民は選挙対策だと見透かしている」と批判しました。

維新 馬場代表「既存野党に対する期待も強いものではない」

日本維新の会の馬場代表は、コメントを発表し「自民党が1勝1敗という結果は現政権への不満や疑問が国民の中で根強く感じられる一方、既存の野党に対する期待も決して強いものではないと解釈する。日本維新の会は、与野党とも、是々非々の立場で対じし続けており、次の衆議院選挙で、まずは野党第一党、そして将来的な政権奪取を目指して着実に進んでいく」としています。

公明 西田選対委員長「物価高対策などへの期待 あらわれた」

公明党の西田選挙対策委員長はコメントを発表し「岸田内閣2年の中間評価が問われ、コロナ禍の克服や構造的賃上げに向けた取り組みなどが評価され、足元の物価高対策などへの期待が一定程度あらわれたと思う。参議院徳島高知選挙区は敗因をよく分析し、次の選挙で勝利したい。衆議院長崎4区の金子氏は、選挙戦で訴えた政策の速やかな実行に向けて全力で取り組むことを期待する」としています。

共産 小池書記局長「岸田政権に対する国民の批判のあらわれ」

共産党の小池書記局長は、22日夜に党本部で記者団に対し「岸田政権に対する厳しい国民の批判のあらわれだ。参議院徳島高知選挙区は、議席が自民党から野党に変わった意味はとても大きい。衆議院長崎4区は、当初の予想を覆して接戦まで持ち込む結果をつくった。野党が候補者をひとつに絞る効果がはっきり出たと言えるのではないか。国会でも引き続き、岸田政権を徹底追及する立場で 臨む」と述べました。

国民 浜野選対委員長「厳しい民意が示されたと考える」

国民民主党の浜野選挙対策委員長はコメントを発表し「補欠選挙とはいえ、最近の政権運営に対し厳しい民意が示されたものと考える。 特に参議院徳島高知選挙区は前議員の不祥事により行われ、与党には猛省を促す。物価高騰対策や緊迫する国際情勢への対処など、内外の諸課題は山積しており、待ったなしの状況だ。臨時国会で政策の実現に向け尽力していく」としています。