大舞台で冷静さ光った最年少【解説】鈴木優花 マラソン MGC

「ポテンシャルの高さは、これまで見てきた選手の中でもかなりのものがある」

パリオリンピックのマラソンの代表選考レースMGC=マラソングランドチャンピオンシップ。女子のレースを制した鈴木優花選手を実業団で指導する、元マラソンランナーでバルセロナオリンピック4位入賞の山下佐知子さんは、その可能性の高さを指摘しました。
(スポーツニュース部記者 古堅厚人)

マラソン3レース目で…

鈴木優花選手は今大会に出場した選手の中で、最年少の24歳で、初マラソンは去年3月。

それでもレース後のことばからは、わずか3レース目でオリンピックの代表内定を勝ち取ったとは思えない余裕が感じられました。

まず口にしたのは「予想どおりの展開だった」ということばでした。

大東文化大時代には全日本大学女子駅伝で3年連続で区間賞を獲得するなどエースとして活躍。卒業後はマラソンでのオリンピック出場を目指し、山下さんが監督を務める実業団に進みました。

山下佐知子監督(右)

山下監督は去年マラソンに転向したばかりの教え子について、次のように評価しました。

山下佐知子監督
「大学時代から押していく能力、怖がらずに突破しようとする姿勢やそのまま最後までもってしまうところ、持久力というところかもしれないが、メンタルも含めて、駅伝や1万メートルで感じていた」

山下監督の指導で変化があった“思考回路”

一方の鈴木選手は山下監督に指導を受けてからの自らの成長について「一番変わったのは思考回路」と分析します。

鈴木優花選手
「大学の時から駅伝だと前を追って最初からガツガツ行って、全員抜いてやるぐらいの気持ちで毎回走っていたが、マラソンは全然違うと思って、最初は本当に身を潜めるぐらいの走り、レース運びが大切。監督をはじめとするスタッフの皆さんから『冷静にいけよ』と指導してもらう中で、冷静さを身につけることができた」

終盤に一山麻緒選手を逆転

そのことばのとおり、鈴木選手は一時、先頭集団に離されながら冷静に前を追いかけて、終盤でトップを捉え、逆転しました。

最年少の24歳が一発勝負の大舞台で“冷静さ”を発揮し、雨が降り続く厳しいコンディションの中で見事に自己ベストのタイムをマークしました。

初の五輪へ 経験豊富な監督とともに

会心のレースを振り返った鈴木選手は伸びしろの豊かさも感じさせました。

鈴木優花選手
「正直タイムはそこまで気にしていなくて、勝負に勝つことだけに徹していた。ただこういう形で自己ベストが出たということはもっとタイムが狙えるという自分の可能性も信じていきたいなと改めて思うことができた」

山下佐知子監督
「ポテンシャルの高さはこれまで見てきた選手の中でもかなりのものがあると感じている。体作りをしておけばある程度は戦える。きょうのところはそこが当たった」

オリンピアンの大先輩とともに挑む初めてのオリンピック。

鈴木選手は力強く見据えました。

鈴木優花選手
「山下監督との初めての挑戦ということで、まだまだ始まりに過ぎない。ただ世界に挑戦するなら、せっかくの機会なので思い切り楽しんで迎えたい。初めてのオリンピック挑戦だからこそ何も恐れることなく正々堂々と勝負していきたい」