【15日詳細】ガザ地区死者2300人超“最後の地上侵攻時上回る”

イスラエル軍は15日、「作戦の次の段階に備えている」としていて、ガザ地区への地上侵攻を含む大規模な軍事作戦に向けた準備を進めているものとみられます。こうした中、ガザ地区の保健当局はこれまでに2300人余りが死亡したと発表し、イスラエル軍がガザ地区に最後に地上侵攻した2014年を上回る規模で犠牲が広がっています。

現地の状況を中心に随時更新してお伝えします。

目次

イラン外相 ハマス最高幹部と会談 今後も協力継続を確認

ハマスを支援してきたイランのアブドラヒアン外相は14日、カタールの首都ドーハを訪れ、ハマスの最高幹部 ハニーヤ氏と会談しました。

イラン外務省の声明によりますと、アブドラヒアン外相は「イスラエルの戦争犯罪からガザ地区の人々を守るため、われわれは努力を続ける」と述べ、今後も協力を続けることを確認しました。その上で「イスラエルがガザで戦争犯罪を続けるなら、この地域で何が起きてもおかしくない」として、改めてイスラエルをけん制しました。

これに対しハニーヤ氏は、イランによるこれまでの支援に感謝した上で「イスラエルによる残虐な殺人や家の破壊などにもかかわらず、パレスチナの抵抗勢力は強さを保っている」と述べ、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。

イスラエル軍 14日の「艦砲射撃」の映像を公開

イスラエル軍は14日、ガザ地区に向けて地中海から艦砲射撃を行ったとする映像を公開しました。映像には軍艦から砲弾が連続で発射され、建造物が建ち並ぶ場所に当たって破片が飛び散っている様子が写っていて、イスラエル軍は「ハマスの兵器製造施設を標的にした」と主張しています。

ガザ地区から約10Kmの場所に軍用車両が集結

ガザ地区から10キロあまり離れたイスラエル南部のアシュケロン郊外には、イスラエル軍の戦車や軍用車両が続々と集まり、近く行われるとみられる地上侵攻に向け態勢を整えていました。イスラエル軍は、畑などが広がる地帯を部隊の集結場所にしていて、戦車や装甲車のほか、土木工事に使うショベルカーのような車両も運び込んでいました。アシュケロン周辺の上空には戦闘機やヘリコプターが飛んでいるのが確認でき、ガザ地区の方角からは時折、爆発音のようなボンという音が聞こえていました。

ガザ地区南部ハンユニスには避難した人が続々と

イスラエル軍がパレスチナのガザ地区北部の住民に対し、南部に退避するよう通告する中、ロイター通信は、南部のハンユニスに避難した住民の状況などを14日、撮影した様子を伝えました。このうち病院には空爆で両親を含め親族14人を失った4歳の女の子が搬送されていました。女の子は足や顔などにけがをしていて、祖母に頭をなでられながらベッドで目を閉じていました。祖母は「何の警告もなく、イスラエル側は家を爆撃し、生き残ったのはこの孫娘だけです。彼女が回復することを願っています」と話していました。

さらに、国連機関が運営する学校には、避難してきた多くの人が身を寄せていて、中には、屋外にテントを張って過ごす人の姿も確認できます。子どもを連れて避難した男性は「イスラエル軍は『南に行け』と言ったが、交通機関もない。渋滞も発生し、通りはいっぱいだった。夜中、子どもたちが私を抱きしめて『助けて、助けて』と泣き叫んだ。どうやって子どもたちを守れるのか」と話していました。そして「世界は私たちがいま、どのように暮らしているかを見てほしい。私たちは守られるべきで、平和を求めていて、戦争は求めていない」と訴えていました。また男性の娘は「誰かがそばにいないと怖いです。空爆から隠れる場所はありません。どうやって生きていけばいいのか分かりません」と涙を流しながら話していました。

国連は、12日の夜の時点で、ガザ地区全体の人口の5分の1ほどにあたる42万人以上が家を追われていると発表していますが、その数は大幅に増えていて、正確には把握できないとしています。

ガザ地区 保健当局“これまでに2329人死亡” 2014年上回る規模に

ガザ地区の保健当局は15日、イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの衝突で、これまでにガザ地区で2329人が死亡したと発表しました。

イスラエル軍がガザ地区に最後に地上侵攻した2014年の死者数は、軍事作戦の開始から停戦までの50日間で2251人に上りましたが、今回、1週間ほどですでにこれを上回る規模で犠牲が広がっていることになります。また、イスラエル側では少なくとも1300人が死亡し、双方の死者は3600人を超えています。

こうした中イスラエル軍は15日朝にかけて、ガザ地区にある指揮所や発射台など100以上の軍事施設を攻撃したとしたほか、ハマスの幹部1人を殺害したと発表しました。

またイスラエル軍は、ガザ地区の北部のすべての住民に対し南部に退避するよう通告しているものの、ハマスが住民の退避を妨害していると主張しました。ロイター通信がガザ地区南部のハンユニスで14日に撮影した映像では、空爆で両親を含め親族14人を失った4歳の女の子が病院に搬送されたり、国連機関が運営する学校に多くの人が避難したりしていて、イスラエル軍が退避を通告する中で混乱が広がっている様子が映し出されています。

イスラエルの軍事力は

イスラエル軍は、装甲車や誘導兵器、サイバーセキュリティーなどが特にすぐれているとされ、中東地域で際立った軍事力を誇っています。

イギリスのシンクタンク、国際戦略研究所が発行する「ミリタリー・バランス」によりますと、現役の兵士は16万9500人で陸軍が12万6000人、空軍が3万4000人、海軍が9500人となっています。また、予備役は46万5000人いてこのうち40万人が陸軍の予備役となっています。現役と予備役の兵員を合わせると全人口の6%に上りますが、今回の報復作戦では大規模な動員が行われていて36万人の予備役が招集されています。

「ミリタリー・バランス」によりますと、イスラエル軍は2200台の戦車のほか戦闘機についてもアメリカのF16戦闘機やステルス戦闘機F35など300機以上を保有しています。核兵器についてもイスラエルは保有を公式に認めていませんが、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は、80発の核弾頭を保有していると推計しています。

また、周辺国などからの攻撃に対処するため、ミサイル防衛システムを構築していて、短距離ミサイルなどを迎撃するミサイルシステム「アイアンドーム」を各地に10基配備しているほか、最大の脅威と位置づけるイランによる弾道ミサイル攻撃を想定し「アロー2」や「アロー3」といった弾道ミサイルの迎撃システムも配備しています。

イスラエル軍 再びシリアの空港を攻撃か シリアで報道

シリアの国営通信は、14日に北部アレッポの国際空港がイスラエル軍による攻撃を受け、施設などに被害が出たと報じました。今のところけが人は確認されていないということです。シリア側は12日にもこの空港のほか、首都ダマスカスの国際空港がイスラエル軍による攻撃を受けたとしています。イスラエルは、これまでもシリア国内に展開するイランが支援する民兵組織の関連施設などに対し、たびたび空爆を行っています。

上川外相 中東和平担当特使を中東諸国に派遣へ

上川外務大臣は緊迫の度合いを増すイスラエル・パレスチナ情勢を受け、事態の早期沈静化に向けた外交努力を進めるため、元サウジアラビア大使で、中東和平担当特使の上村司 政府代表を中東諸国に派遣することを明らかにしました。

上川外務大臣は記者団に対し「日本政府として引き続き、事態の早期沈静化に向けて、各国、国際社会と連携しつつ、関係者に働きかけるなど尽力をしていきたい」と述べました。また上川大臣は、現地の日本人の状況について「イスラエルには14日時点で1000人強の在留邦人が滞在していて、これまでのところ生命・身体に被害が及んでいるという情報には接していない」と述べました。その上で情勢は流動的だとして、出国を希望する人は民間の航空機が運航されている間に早期に出国するよう呼びかけました。

一方、ガザ地区について「個別の事情により、少数の邦人が滞在している。緊密に連絡を取り合っており、引き続き、安全確保に全力を挙げて対応していく」と述べました。そして「ガザ地区および周辺では、すでに多くの死傷者が発生し、緊張度は刻一刻と増しており、情勢は全く予断を許さない状況で、日本政府としては深刻な懸念を持って注視している。今後も国際社会と連携しつつ事態の早期沈静化に向けた外交努力を続けていく」と述べました。

上川外相 韓国外相と電話会談 邦人出国支援に対し謝意

上川外務大臣は、韓国のパク・チン(朴振)外相と電話で会談し、韓国軍の輸送機によるイスラエルからの日本人の出国支援に謝意を伝えるとともに、事態の早期沈静化をめぐり協力していくことで一致しました。

会談で上川大臣は「イスラエルからの日本人の出国に際し、韓国政府から支援を受けたことに率直に心から感謝する」と述べ、謝意を伝えました。そのうえで、両外相は引き続き緊密に意思疎通を行い、事態の早期沈静化と自国民の出国をめぐり、双方が協力していくことで一致しました。

双方の死者 計3500人超に

イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの衝突ではこれまでにガザ地区で2215人、イスラエル側で少なくとも1300人が死亡し、双方の死者は3500人を超えています。イスラエル軍は14日、日本時間15日未明に「軍は現在、陸、海、空からの連携した攻撃を含む幅広い軍事作戦を実行する準備を進めている。兵士たちは地上作戦に重点を置き、次の段階の作戦を実行する態勢を強化している」とSNSに投稿し、近く大規模な地上侵攻に踏み切るという見方が強まっています。

一方、イスラエル軍によるガザ地区全域への激しい空爆は続いていて、ガザ地区の保健当局は、14日だけで300人が犠牲になったとしています。ガザ地区ではイスラエルによる封鎖が続く中、イスラエル軍が北部のすべての住民に対し南部に退避するよう通告しています。

これについてWHO=世界保健機関は、14日に声明を発表し「患者や医療従事者の強制的な退避は現在の人道上、公衆衛生上の大惨事をさらに悪化させるだろう」として強く非難しました。国連などは繰り返しイスラエル側に対応を求めていますが、地上侵攻が迫っているとみられる中、どこまで住民の保護を重視するかは不透明で、犠牲をいかに防げるか緊迫した状況が続いています。

「国境なき医師団」北部から避難し南部での状況など語る

国際NGO「国境なき医師団」はパレスチナのガザ地区の広報担当者が14日の朝に、北部から避難した南部の都市で避難の状況などを語った音声を公開しました。

それによりますと、「国境なき医師団」のスタッフなどは、イスラエル軍が13日、パレスチナのガザ地区北部の住民に対し、24時間以内に南部に避難するよう通告したあと、すぐに北部から南部の国連機関の拠点があるハンユニスに避難したということです。

拠点には、13日の時点でおよそ1万人が避難していて「階段や廊下、教室、食堂などいたるところにマットレスや毛布を敷いて寝ている人がいる」として、市民が厳しい状況での避難を余儀なくされていると説明しています。

また、イスラエル軍の空爆の状況について「きのうは爆弾が落ちる音が聞こえたが、ガザ市内よりは確実に少ない」としています。

米海軍の別の空母打撃群も地中海東部展開へ

アメリカ国防総省は14日、オースティン国防長官が海軍の空母「ジェラルド・フォード」に続いて、「アイゼンハワー」を中心とする空母打撃群についてもイスラエルに近い、地中海東部に展開するよう指示したと発表しました。

発表では「アメリカ軍の態勢の増強は、イスラエルの安全保障への厳格な責務と、この戦争をエスカレートさせようという国家や勢力を抑止する決意の表れだ」としていて、イスラム組織ハマスを支援してきたイランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどの動きを封じ込めるねらいがあります。

空母「ジェラルド・フォード」はすでに10日に現場海域に到着していますが、バイデン政権はこれまで「アイゼンハワー」については「以前からの計画にのっとって地中海に派遣する」と述べるにとどめ、具体的な海域については明らかにしていませんでした。

空母「アイゼンハワー」は14日に南部バージニア州の港を出て現場海域に向かっています。また、アメリカのABCテレビは政府高官の話として、イスラエルへの追加の支援物資を運ぶため、強襲揚陸艦「バターン」についても、イスラエル近海に派遣することが検討されていると伝えました。

WHO声明「南部の医療施設に患者退避は死刑宣告と同じ」

イスラエル軍がガザ地区北部の住民に対し南部に退避するよう通告したことについてWHO=世界保健機関は、14日、声明を発表し「患者や医療従事者の強制的な退避は現在の人道上、公衆衛生上の大惨事をさらに悪化させるだろう」として強く非難しました。

WHOによりますと、ガザ地区北部の医療施設では、多くのけが人を受け入れ続けていて、一部の患者は、病床が不足しているために廊下や屋外で治療を受けているということです。

また、南部の医療施設でもすでに最大限稼働していて、患者数が劇的に増加すれば受け入れられないとして「2000人以上の患者を南部の医療施設に退避させることは、死刑宣告と同じだといえる」と述べ、イスラエルに対し北部の病院への退避の通告を撤回するよう求めています。

バイデン大統領 ネタニヤフ首相 アッバス議長とそれぞれ電話会談

アメリカ・ホワイトハウスは14日、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ暫定自治政府のアッバス議長とそれぞれ電話で会談したと発表しました。

それによりますと、このうち、ネタニヤフ首相との会談で、バイデン大統領は、イスラエルへの揺るぎない支援を強調するとともに、アメリカによる軍事支援について最新の情報を提供したということです。

一方、アッバス議長との会談で、バイデン大統領は、イスラム組織ハマスを非難し、ハマスはパレスチナ市民の尊厳や自決権のために戦っていないと強調したということです。

そのうえで、バイデン大統領は、アッバス議長に対し、ガザ地区をはじめとするパレスチナの人々に必要な人道支援が届けられるよう全面的な支援を申し出たということです。

EU 緊急首脳会議開催へ

イスラエル・パレスチナ情勢をうけてEU=ヨーロッパ連合は緊急の首脳会議を今月17日にオンライン形式で開くことになりました。

会議の開催を呼びかけたEUのミシェル大統領は、イスラエルの人々への連帯を示す一方でガザ地区の状況について「包囲され、基本的な必需品が欠乏し、さらに砲撃で破壊されているというガザ地区の悲劇的な状況は国際社会に警鐘を鳴らしている」として、人道支援を含めEUが一致した対応をとることが極めて重要だとしています。

さらにミシェル大統領はイスラエル・パレスチナ情勢が、ヨーロッパの社会での緊張を高め、治安にも影響を及ぼす可能性があることや、大勢の移民や難民がヨーロッパに向かう可能性があることを指摘し、各国に結束を呼びかけています。

また、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は14日、ガザ地区への人道支援を7500万ユーロ余り、110億円余りとこれまでの3倍に拡大すると発表しました。

ヨーロッパ委員会は「イスラエルが国際人道法を順守したうえで自衛する権利を支持する。ガザ地区の罪のない市民が支援を受けられるよう取り組んでいく」としています。

イスラエル軍“日本時間14日夜10時までは危害加えず”

ネタニヤフ首相は14日、ガザ地区との境界線に展開する軍の部隊を視察し、兵士たちを激励しました。

一方、イスラエル軍は14日、ガザ地区北部の住民に対して南部に避難するための2つの経路を示し、日本時間の14日夜10時までは危害を加えないとしていました。

しかし、ガザ地区南部のハンユニスにいる弁護士のラジ・スラーニさんはNHKの電話取材に対し「昼夜を分かたず空爆を受け、避難中の人々も吹き飛ばされている」と述べ、住民が避難している最中に空爆の巻き添えになっていると話しています。

また南部のラファには大勢の住民が避難しているほか、エジプトとの境界にある検問所に外国人を含む多くの人が押し寄せていますが、スラーニさんはラファに対しても空爆が行われていると話していました。

一方、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスも14日、ロケット弾による攻撃を続けています。

また、イスラエル軍によるガザ地区への空爆で外国人4人を含む人質9人が死亡したと発表し、イスラエル側をけん制しています。今後イスラエル軍がガザ地区への地上侵攻に踏み切れば、ハマス側との市街戦でさらに多くの住民が犠牲になることが懸念され、事態は緊迫の度合いを増しています。

ハマス最高幹部「パレスチナ人は土地を出ることはない」

ハマスの最高幹部のハニーヤ氏は14日、公表された演説で「侵略者の暴力に立ちはだかるガザの住民を称賛したい。どんな暴力を加えられてもパレスチナ人は土地を出ることはない。決してガザからエジプトに出ることはない」と述べました。

また「ガザで民間人が殺害されていることになぜ誰も声をあげないのか」と訴えて、国際社会を非難しました。

さらにハニーヤ氏は今回の攻撃の目的について「奪われた土地、捕らわれている仲間を取り戻すためだ。私たちはパレスチナ国家を樹立させるまで戦い続ける。そしてそれはもう目前だ」と主張し、徹底抗戦の構えを示しました。

ガザ地区で人権擁護活動の弁護士「私たちの土地で死ぬ」

ガザ地区で長年パレスチナ人の人権擁護活動に携わってきたラジ・スラーニ弁護士が14日、NHKの電話取材に応じ、ガザ地区で昼夜を問わず空爆が続いている状況を明らかにしました。

スラーニ弁護士の事務所はイスラエル軍がガザ地区の住民に避難先として指定した南部のハンユニスにあり、周辺の様子について「昼夜を分かたず空爆を受け、避難中の人も吹き飛ばされている」と述べ、避難している人も攻撃に巻き込まれていると証言しました。

さらにエジプトとの境界の検問所がある南部のラファに国連のスタッフも避難しているとしたうえで、検問所の近くでも13日夜と14日朝に空爆があったとして「ガザに安全な場所はどこにもない。私は避難せずに私たちの土地で死ぬ。従順な犠牲者になるつもりはない」として、イスラエルに対する不服従を貫く姿勢を示しました。

また、イスラエルが電力の供給を停止するとしている中でも、あらかじめ太陽光パネルを用意していたため携帯電話は充電できているものの、インターネットの通信状況は悪いということで、SNSのアプリを使用した通話も途中で切れました。

9年前の前回は住民に退避通告から1週間後に地上侵攻

イスラエル軍が前回、ハマスとの衝突を受けてガザ地区に大規模な地上侵攻を行ったのは9年前の2014年です。
この時は、住民に退避するよう通告が行われてから1週間後に地上侵攻が始まりました。

イスラエル軍がガザ地区への本格的な空爆を開始したのは7月8日。
イスラエル軍はこのあと地上侵攻の可能性があるとしてガザ地区の住民に退避を呼びかける通告を行っています。

OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、退避の通告が行われたのは7月10日。

イスラエルとの境界近くに住むガザ地区全域のパレスチナ人、およそ30万人が対象で、人口が密集する市街地に移動するよう事前に録音した音声を電話で伝える形で通告したということです。
通告はその後、繰り返し行われています。

3日後の13日には、イスラエル軍が上空からビラをまく形でガザ地区の北部の住民に対しその日の正午までに家を出て退避するよう通告しています。
さらに電話へのメッセージなどでガザ市近郊の住民およそ10万人に対し、16日の午前8時までに家を出て退避するよう警告します。

翌17日の午後10時半、イスラエル軍は地上侵攻を開始したと発表しました。

日本政府手配のチャーター機 邦人8人乗せドバイに到着

情勢が緊迫する中、イスラエルからの出国を希望した日本人8人を乗せた政府のチャーター機が、日本時間の15日未明、UAEのドバイに到着しました。

外務省によりますと、イスラエルとパレスチナにいる日本人は今月9日の時点で、およそ1300人で、イスラエル軍が大規模な軍事作戦に向けた準備を進めているとみられる中、日本政府は日本人の出国を支援するため、チャーター機1機を手配しました。

チャーター機には出国を希望した日本人8人が乗り、日本時間の14日夜11時半すぎ、テルアビブの空港を出発しました。

そして、日本時間の15日午前2時40分ごろ、UAE=アラブ首長国連邦のドバイに到着しました。

ドバイから先の目的地には、各自で移動手段を確保してもらうということです。

イスラエルから退避 日本人51人搭乗 韓国軍機がソウル近郊到着

イスラエルからの出国を希望した日本人51人を含む、200人以上を乗せた韓国軍の輸送機が14日の夜遅く、ソウル近郊に到着しました。

韓国軍は、イスラエルからの出国を希望する韓国国民のために輸送機を派遣し14日にイスラエルのテルアビブの空港を出発したあと経由地のスリランカを経て、昨夜11時前に、韓国・ソウル近郊の軍用空港に到着しました。

輸送機には、韓国国民163人のほか、定員に余裕があったことから、日本人51人とシンガポール人6人も搭乗していました。

スーツケースなどを手にしてタラップを下りてきた人たちは、滑走路で並んで出迎えた家族と抱き合うなどして喜びをあらわにしていました。

また、搭乗していた日本人たちは、韓国にある日本大使館の職員の案内を受け、入国手続きなどにあたっていました。

イスラエル南部の都市アシュドッドに住んでいた30代の日本人の女性は、「比較的ガザ地区に近い地域に住んでいたので、避難もしていました。出発が決まった時点で安心しましたが、現地の空港では出発まで爆発音が聞こえていました。韓国に着陸したときには機内で拍手が起きていました」と話していました。

外国人の被害状況

【アメリカ】
アメリカ国務省は14日、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃でこれまでにアメリカ人29人が死亡し、15人が行方不明になっていると発表しました。

【フランス】
フランス外務省は14日、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃でこれまでにフランス人17人が死亡し、15人が行方不明となっていると発表しました。行方不明者の中には、人質になった可能性が高い人もいるとしています。

【ロシア】
在イスラエルのロシア大使館の報道官は14日、ロシア国営のタス通信に対し、これまでにイスラエル国内でロシア人16人が死亡し、8人の行方がわからなくなっていると明らかにしました。

【中国】
国営の中国中央テレビは14日、中国政府の中東問題特使の話として、これまでに中国人4人が死亡、6人がけがをしたほか、2人の行方が分からなくなっていると伝えました。そのうえで特使は「けが人の対応や行方不明者の捜索に全力を尽くすとともに、現地に残る中国人の安全の確保やすみやかな避難に向けて対応を続ける」としています。

“米情報機関 衝突激化の可能性 事前に把握” 米メディア

アメリカのCNNテレビは13日、複数の関係者の話としてアメリカの情報機関が政府内でイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が激化する可能性があると事前に把握していたと伝えています。

それによりますと、先月28日に、アメリカの情報機関がハマスがロケット弾による攻撃をエスカレートさせる準備をしていると分析し、ハマスがイスラエル側に奇襲攻撃を仕掛ける2日前の今月5日には、CIAがハマスによる暴力が増大する可能性があると政府内で警告していたということです。

分析では、ハマスの攻撃作戦の詳細や規模には触れられておらず、イスラエル側に事前に情報が共有されたかは不明だとしています。

中国外相 米に建設的な役割果たすよう求める

中国の王毅外相はアメリカのブリンケン国務長官と14日、電話で会談し、緊迫の度合いを増すイスラエル・パレスチナ情勢をめぐってアメリカが建設的な役割を果たすよう求めました。

中国外務省によりますとこの中で王毅外相は「みずからの安全を守るために罪のない民間人を傷つけることがあってはならない」と述べ、イスラエル軍が準備を進めているとみられるガザ地区への地上侵攻をけん制しました。

そのうえで「問題の根本的な解決策は『2国家共存』にあり、独立したパレスチナ国家を樹立してパレスチナとイスラエル双方の平和共存を実現することだ」と主張したということです。

そして、王外相は、国際的な和平会議をできるだけ早く開催するよう呼びかける考えを示す一方、アメリカが建設的な役割を果たすよう求めました。

これに対し、ブリンケン長官は「情勢の緩和と人道支援に関する国連の役割を支持するとともに、中国側と意思疎通や連携を強化していきたい」と述べたということです。

このほか、両外相は来月アメリカで行われるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議にあわせ、両国の首脳会談の実現が取り沙汰される中、関係を安定化させていくことを確認しました。

国連「ガザ地区のほぼ全員水不足の危機」

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は14日、声明を発表し「ガザ地区のほぼ全員にあたる200万人以上が水不足の危機に直面していて、生きるか死ぬかの問題となっている」と強い危機感を示し、給水所などを稼働させるために必要な燃料を直ちに供給するよう訴えました。

声明によると、ガザ地区では給水所などを稼働させるために必要な燃料の供給をイスラエルが打ち切ったため、水道網が機能しなくなっていて、安全に飲める水が枯渇しているということです。

またガザ地区で今月11日から続いている停電も水の供給を難しくしていると指摘しています。

このため、住民は汚れた井戸水を使わざるをえず、UNRWAは、感染症のリスクも高まっていると懸念を示しています。

UNRWAは「ガザ地区に直ちに燃料を届けなければ、深刻な脱水症状で命を落としてしまう人が出てくるだろう。その中には、子ども、お年寄り、女性も含まれる。人道支援に対する包囲網を直ちに解除してほしい」と訴えています。

米国務省 緊急性ない政府職員と家族 出国を認める措置

アメリカ国務省は14日、アメリカ国民向けの渡航情報を更新し、これまでに、エルサレムにあるアメリカ大使館とテルアビブにある事務所から緊急性のない政府職員と職員の家族について出国を認める措置をとったと発表しました。

理由は、イスラエルの治安状況が予断を許さないためだとしています。

英 パレスチナ系住民ら数千人規模の抗議デモ

ガザ地区をめぐる緊張が高まる中、イギリスの首都ロンドンでは14日、パレスチナ系の住民などによる数千人規模の抗議デモが行われ、イスラエル軍の地上侵攻をやめさせるよう政府に求めました。

参加者たちはパレスチナの旗を振ったり「パレスチナを解放しろ」などと声を上げたりしながら官庁街を行進し、首相官邸前に設けられたステージの周りに集まりました。

そして、イスラエルへの全面的な支援を表明しているイギリス政府の対応を批判するとともに、ガザ地区への攻撃の停止を訴えました。

ロンドン出身でパレスチナ系の人権活動家、リアヌ・モハマドさんは「友人の家族がいまもガザ地区にいて、私たちは皆恐怖におののいている。これは人道に反しているし、世界が見過ごし、イギリス政府が積極的に支援しているのは恥ずべきことだ。日本を含む国際社会にはこの残虐行為に対して声を上げてほしい」と話していました。

一方、ロンドン警視庁はイスラム組織ハマスを支持したりユダヤ人の安全を脅かしたりする行為は取締まりの対象になると警告し、周辺では1000人以上の警察官が警戒に当たっていました。

同様の抗議活動はこの日、世界各地で行われ、ガザ地区への地上侵攻を含む大規模な軍事行動への懸念の声が高まっています。