【16日詳細】ガザ地区100万人が家を追われる 人道回廊調整続く

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イスラム組織ハマスへの報復としてイスラエルによるガザ地区への地上侵攻の可能性が高まっています。

ガザ地区では、100万人が空爆や退避によって自宅を追われたとみられ、人道危機が深刻化する中、境界を接する隣国エジプトとの間に人道回廊を設置することをめぐって関係国の調整が続いています。

※16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

目次

双方の死者4100人超に 人道回廊の設置めぐり調整続く

イスラエル軍とハマスの衝突は16日も続き、犠牲となる人の数が増え続けています。

ガザ地区の保健当局によりますとこれまでに2750人が死亡した一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、双方の死者は4100人を超えています。

イスラエルのネタニヤフ首相は15日の声明で「イスラエルの目標はハマスの壊滅であり、パレスチナ人と戦っているわけではない」としてガザ地区の住民に避難を求めていると主張しています。

イスラエル軍は16日もガザ地区の北部から南部への避難経路を示し、日本時間のきょう午後6時までの4時間、危害を加えないとする一方、ガザ地区北部に激しい空爆を続けています。

また、ガザ地区南部のラファにいるNHKのスタッフによりますと、16日朝から爆発音が何度も聞こえているということです。

国連はガザ地区で空爆や退避によって家を追われた人はこの1週間で100万人に達していて、多くの人が避難場所としての環境が整っていない場所に身を寄せ、衛生環境も悪化しているということです。

ICRC=赤十字国際委員会のガザ地区事務所のウィリアム・ションバーグ代表は15日、「ガザ地区全域で食料や電気、水が不足している。医療物資も急速に底をつき始め、病院機能の維持が難しくなっている」と述べ、一刻も早い人道支援の必要性を訴えています。

ガザ地区南部のエジプトとの境界にあるラファには、外国人を含む多くの人が避難してきているほかエジプトからの人道支援物資の搬入に向けても関係国の調整が続いています。

アメリカのブリンケン国務長官は16日、再びイスラエルを訪れ、民間人の避難や支援物資の搬入のための人道回廊の設置について改めて協議を行うものとみられ、イスラエルによる地上侵攻が懸念される中、民間人の犠牲を防ぐための各国の働きかけが活発化しています。

エジプト外相「イスラエル 支援物資に必要な対応行わず」

エジプトのシュクリ外相は、首都カイロでフランスのコロナ外相と行った会談の後、記者会見で「残念ながらいまのところイスラエル政府は支援物資をガザ地区に入れるために必要な対応も、外国人の退避に必要な対応も行っていない」として、イスラエル政府に対しガザ南部のラファ検問所を通じた人道支援を認めるよう求めました。

イスラエル軍報道官 “人質は199人”

イスラエル軍の報道官は、16日、これまでにガザ地区でハマスにとらわれていることが確認された人質は199人にのぼると発表しました。その上で「人質の問題については最優先課題として取り組んでいる」などと述べ、人質の解放に向けて情報収集などを急いでいると強調しました。

国連人道問題調整事務所のトップ エジプトと交渉へ

ガザ地区での人道危機が深刻化する中、OCHA=国連人道問題調整事務所のトップを務めるマーティン・グリフィス国連事務次長は17日からエジプトを訪れて、人道支援物資の搬入についてエジプト政府と交渉を行うことを16日、明らかにしました。

具体的にはエジプトの境界にあるラファ検問所からガザ地区南部への物資の搬入を目指すということです。

グリフィス氏は、「援助物資を届けることは私たちの最優先事項だ。イスラエル側の同意も必要で、彼らとも交渉を続ける」と述べ、イスラエル側とも協議を進めるとしています。

辻外務副大臣 イスラエル駐日大使に人道支援確保を要請

パレスチナのガザ地区での人道危機が深刻化する中、辻外務副大臣は、イスラエルのコーヘン駐日大使と外務省で会談し、「罪のない一般市民の保護が重要だ」として、人道支援活動が可能な環境を確保するよう要請しました。

イスラエルのコーヘン駐日大使は、16日夜、外務省を訪れ、辻外務副大臣と会談しました。

この中で、辻副大臣は「日本はハマスなどによるテロ攻撃を断固として非難してきた。犠牲者の遺族に哀悼の意を表する」と伝えました。

そして、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻の可能性が高まり、人道危機が深刻化していることについて「罪のない一般市民の保護が重要で、すべての当事者が国際人道法に即した対応を行う必要がある」と述べ、人道支援活動が可能な環境を確保するよう要請しました。

また、現地にいる日本人の安全確保に協力を求めました。

このあとコーヘン大使は記者団に対し「イスラエルは、この数日、日本人の出国を援助してきた。あらゆる場所にいる日本人の安全を確保することに全力を注ぐ」と述べました。

中国とロシアの外相が会談 人道回廊確立など急ぐべき

中国の王毅外相とロシアのラブロフ外相が会談しました。

イスラエルによる大規模な地上侵攻への緊張が高まる中、王外相は人道回廊の確立など外交的な努力を急ぐべきだとの認識を強調しました。

中国の王毅外相は北京を訪問中のロシアのラブロフ外相と16日、会談し、イスラエル・パレスチナ情勢について意見を交わしました。

イスラエルによるガザ地区への大規模な地上侵攻への緊張が高まる中、中国外務省によりますと、王外相は「より大きな人道的な被害を防ぐため、緊急の人道回廊を確立することが急務だ」と述べました。

その上で、根本的な解決策はイスラエルとパレスチナの「2国家共存」をできるだけ早く有効にすることだなどと述べ、外交的な努力を急ぐべきだとの認識を強調しました。

イスラエル軍と国防省 北部レバノン国境2キロ圏内の住民を避難へ

イスラエル軍とイスラエル国防省は、16日、北部のレバノン国境から2キロ圏内に住む住民を避難させる計画だと発表しました。

イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの間ではハマスが今月7日に大規模な攻撃を開始して以降、散発的に衝突が起きていて、死者も出るなど、緊張が高まっています。

また、イランのアブドラヒアン外相は15日、中東の衛星テレビ局、アルジャジーラとのインタビューでイスラエルがガザ地区への地上侵攻に踏み切ればヒズボラによるイスラエル北部への攻撃が激しくなる可能性を示唆していました。

自衛隊機1機がジブチに到着 ほか2機は中東周辺国も検討

イスラエルにいる日本人などを輸送する場合に備えて派遣された自衛隊機3機のうち1機が16日、アフリカのジブチに到着しました。

ほかの2機はイスラエルにより近い中東の周辺国に向かうことも検討されているということです。

イスラエル・パレスチナ情勢が緊迫の度合いを増すなか、防衛省は14日、航空自衛隊の
▽KC767空中給油・輸送機1機と
▽C2輸送機2機を派遣しました。

防衛省によりますと、このうちC2輸送機1機が日本時間の16日午後、自衛隊の活動拠点があるアフリカのジブチに到着し、輸送が命じられた場合に備えて準備を進めているということです。

関係者によりますとほかの2機は経由地にいて、関係国から領空通過の許可が得られるのを待っているということです。

2機はイスラエルにより近い中東の周辺国に向かうことも検討されているということです。

外務省によりますと、今月14日の時点でイスラエルとパレスチナにはあわせて1000人余りの日本人が滞在していて、14日には日本政府のチャーター機で8人、韓国軍の輸送機で51人がそれぞれ出国しています。

ICRC ガザ地区事務所代表 “病院機能の維持が困難に”

ICRC=赤十字国際委員会のガザ地区事務所のウィリアム・ションバーグ代表は15日、エジプトとの境界に面しているガザ地区南部のラファから動画を公開し、一刻も早い人道支援の必要性を訴えました。

この中で、ションバーグ氏は「ガザ全域にいる民間人には生活していくために必要な食料や電気、水が不足している。医療物資も急速に底をつき始め、病院機能の維持が難しくなっている」と指摘しました。

そのうえで「ガザのニーズに応える準備は整っているが、それを行うには安全が保障され、物資を運び込む必要がある」と強調しました。

ICRCは医薬品や衛生用品など6000世帯分の援助物資のほか、医療スタッフなどを派遣する準備を整えていて、エジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、安全状況が確認できた際にはこれらをガザ地区に運び込む予定だとしています。

バイデン大統領 ガザ地区占領は「大きな過ちだ」反対の姿勢

アメリカのバイデン大統領はCBSテレビのインタビューの中で、イスラエルがガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスに攻撃を続けていることに支持は表明しつつも、大規模な軍事作戦によってガザ地区を占領することについては「大きな過ちだ」と述べ、反対する姿勢を示しました。

これは、15日に放送されたCBSテレビのニュース番組「60ミニッツ」のインタビューでバイデン大統領が述べたものです。

この中で、バイデン大統領は、ガザ地区でのイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの衝突で、多くのパレスチナ市民が巻き込まれる中「停戦すべき時か」と質問され「イスラエルは対応しなければならない。ハマスを攻撃しなければならない」と述べ空爆を続けるイスラエルを支持する姿勢を改めて示しました。

一方、バイデン大統領は、イスラエル軍が1967年の第3次中東戦争の時と同じように、ガザ地区を再び占領することについては「大きな過ちだ」と述べ、反対する姿勢を示しました。

また、バイデン大統領は、イスラエルと、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの双方に同時に支援を続けることができるかどうかについては「アメリカは世界史上、最も強力な国家だ。双方に対応できる」と強調しました。

ガザ地区“1週間で少なくとも100万人が避難余儀なくされる”

イスラエル軍とハマスの衝突は15日も続き、ガザ地区の保健当局によりますとこれまでに2670人が死亡した一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、双方の死者は4000人を超えています。

パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、15日、ガザ地区ではこの1週間で少なくとも100万人が自宅を追われて避難を余儀なくされたと発表しました。

少なくとも40万人はUNRWAの学校や建物に避難しているものの、避難場所としての設備が整っておらず衛生環境も悪いということです。

また、OCHA=国連人道問題調整事務所によりますとガザ地区南部の一部の地域でイスラエルからの水の供給が再開されたものの、海水から真水をつくるための施設は燃料不足で稼働できておらず、脱水症状などの懸念は続いているということです。

さらに、WHO=世界保健機関によりますと、15日、ガザ地区の北部にある4つの病院が、損傷したり標的にされたりして稼働できなくなっているなど、ガザ地区では人道状況の悪化が深刻化しています。

一方、アメリカの複数のメディアは政府関係者の話としてバイデン大統領が今週、イスラエルを訪問する可能性について両国の間で協議が行われていると伝えました。

これについてホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は「大統領の訪問について発表できるものはない」とコメントしています。

このほか、アメリカの国務省は先週、イスラエルを訪問したブリンケン国務長官が16日、再びイスラエルを訪問すると発表しました。

ブリンケン長官は、今回の中東訪問でエジプトなどと協議し、ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所が支援物資を運び込むために開放される予定だと明らかにしています。

イスラエルへの再度の訪問では民間人の避難のための人道回廊の設置などについて改めて協議を行うとみられていて、大規模な地上侵攻が懸念される中、民間人への被害を最小限にするための関係国の外交の動きが活発化しています。

米メディア“米大統領のイスラエル訪問可能性を両国が協議”

アメリカの複数のメディアは15日、両国の間でバイデン大統領が今週、イスラエルを訪問する可能性について協議が行われていると伝えました。

このうちニュースサイト「アクシオス」は、両国の政府関係者の話としてバイデン大統領が14日にネタニヤフ首相と電話会談を行った際に招待を受けたとしています。

また、エジプトの当局者の話としてシシ大統領が今週後半にパレスチナ情勢について話し合う国際会議を主催し、この場にバイデン大統領を招待しているということです。

ホワイトハウスのNSC=国家安全保障会議の報道官は「大統領の訪問について発表できるものはない」とコメントしています。

国連総長“人質解放と人道支援は交渉材料になってはならない”

国連のグテーレス事務総長は15日、声明を出し「中東情勢が奈落の底に突き落とされようとしているいま、私の義務は2つの強力な人道的アピールを行うことだ」とした上で、「ハマスに対しては無条件で人質を直ちに解放するよう求める。イスラエルに対しては、ガザの人たちのために、人道支援物資の迅速かつ無制限な搬入を認めるよう求める」と訴えました。

そして、人質の解放と人道支援について「これらの2つは交渉材料になってはならない。それぞれ正しいことであり、実施されなければならない」と強調しました。

WHO “ガザ地区北部の4病院 稼働できず”

WHO=世界保健機関は15日、ガザ地区の北部にある4つの病院が、損傷したり標的にされたりして稼働できなくなったと発表しました。

また、イスラエル軍からガザ地区内の21の病院に対して退避するよう通告があったということです。

WHOは「医療従事者や医療機関、患者を守るためあらゆる予防策を取らなければならない」と強調するとともに「病院からの退避を強制することは集中治療や救命手術が必要な人たちにとって死刑宣告となり、国際人道法に違反する可能性がある」と批判しています。

ガザ地区とエジプト境界の検問所 大勢の市民が集まる

パレスチナのガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所には、ガザ地区から出ようとする大勢の市民が集まっています。

ラファ検問所は現在、原則、通行できない状況になっていて15日に撮影された現地からの映像では検問所が開くのを待つ大勢の人々が大きな旅行カバンなどの荷物のそばに座り込んでいます。

ドイツ国籍を持つという女性は「娘がドイツ外務省に連絡し、帰れるようにしたというので来てみたところ、すべて閉まっていた。助けてほしい。とにかくここを去りたい」と話していました。

また、アメリカ国籍を持つという女性は「家屋が破壊され人々ががれきの下で亡くなる状況を目の当たりにすると、ここまで来られたことで命をもうひとつもらった気がします。アメリカに戻りたい」と話していました。

一方、ラファ検問所に近いエジプト側の街では、ガザ地区への人道支援物資を積んだ大型トラックが列を作って待機しています。

ラファ検問所とは

パレスチナのガザ地区は、周囲を壁やフェンスに囲まれていて、人の出入りができるのは南部と北部の1か所ずつで、エジプトの境界にあるラファ検問所は、ガザ地区の南部で人、物資ともに行き来ができる唯一の場所です。

OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、ラファ検問所は、エジプト当局が運営していて、通常、週5日、日中に限って出入りが許されています。

去年は245日開かれ、のべ27万人以上がエジプトとの出入りをしていて食料や燃料もラファ検問所を通ってガザ地区に入りました。

ただ、検問所の開放日数は年によって大きく異なり、2009年はほぼ通年、開かれていたものの、2015年から2017年は、年間で30日ほどしか開かれておらず、ガザの情勢やエジプト側の対応などに左右されています。

米国務長官 “支援物資搬入のため検問所開放される予定”

中東を訪問中のアメリカのブリンケン国務長官はエジプトの首都カイロで15日、記者団に対し、アラブ各国の首脳らとの会談について「すべての国と考えを共有できた。各国は、衝突が拡大しないようにそれぞれの影響力を行使するということだった」と述べ、一連の会談の成果を強調しました。

またブリンケン長官は、ガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所についてエジプトのシシ大統領と協議を行ったと明らかにしたうえで「国連やエジプト、イスラエルなどとともに支援を必要とする人々に届けられるための態勢を整えている」と述べ、ガザ地区に支援物資を運び込むため検問所が開放される予定だと明らかにしました。

また16日に再びイスラエルを訪問することについて「この数日間の訪問で聞いたことを共有し、今後の道筋について協議する機会としたい。困難な状況だが、この状況を乗り越えようという決意は皆同じだ」と述べました。

さらにブリンケン長官は「イスラエルにはハマスの攻撃から自国を守り、二度と同じことが起きないようにする権利、そして義務がある」と述べた一方で「イスラエルがこれをどのように行うかが重要だ。民間人を傷つけないようあらゆる予防策をとらなければならない」と強調しました。

イスラエル軍報道官 “人質155人にのぼる”

イスラエル軍の報道官は15日、これまでにガザ地区でハマスに捕らわれていることが確認できた人質は155人にのぼると発表しました。

また、イスラエル軍がガザ地区の北部の住民に対し南部に退避するよう通告していることについては「ハマスは民間人を人間の盾にしようと躍起になっているが、これまでに60万人以上の住民が南部に移動した」として、退避は進んでいると強調しました。

英首相とヨルダン国王 ガザ地区への人道支援について協議

イギリスの首相官邸はスナク首相が15日、イギリスを訪れたヨルダンのアブドラ国王と会談し、ガザ地区への人道支援などについて協議したと発表しました。

両首脳はイスラエル政府やパレスチナ暫定自治政府だけでなく、中東地域の指導者たちとも協力して事態がさらにエスカレートするのを防ぐための外交努力について話し合ったとしています。

またガザ地区の民間人を保護するための措置を講じるとともに支援が確実に届くようにすることの重要性について合意したとしています。

ネタニヤフ首相「怪物を根絶やしにする準備できている」

イスラエル軍とハマスの衝突は15日も続き、ガザの保健当局によりますと、これまでに2670人が死亡した一方、イスラエル側では少なくとも1400人が死亡し、双方の死者は4000人を超えています。

ネタニヤフ首相は15日、今回の事態を受けて野党とも連携して新たに樹立した緊急政府の初めての閣僚会議を開きました。この中でネタニヤフ首相は「兵士たちは、いつでも怪物を根絶やしにする準備ができている」と述べ、ガザ地区への大規模な地上侵攻を強く示唆しました。

イスラエル軍のハレビ参謀総長も兵士らを前に「ガザ地区に入り、ハマスのすべての指揮官や戦闘員を倒すことはわれわれの責任だ」と述べています。

さらにイスラエル軍は15日、ハマスの治安機関で南部を管轄する指揮官を殺害したと発表しました。

ガザ地区から10キロあまり離れたイスラエル南部のアシュケロン郊外では15日、100を超える戦車や軍用車両が集結し、兵士らが車両を整備したり、物資を運び込んだりしていました。イスラエルに対するハマスによるロケット弾攻撃も繰り返されていて、市内のホテルなどに避難する住民の姿も見られました。

ただ、避難先のホテルもロケット弾の被害を受けていて、ホテルの責任者の男性は「われわれはガザ地区からの攻撃を受けてきた、今回はそれが終わることを望みます」と話していました。

一方、ガザ地区の保健当局は、空爆によって病院が破壊されたり、医療従事者が死亡したりして、けが人の手当てができないケースが増えていると訴えています。

また、地元の救助団体は15日、イスラエル軍の空爆で倒壊した建物のがれきの下に閉じ込められるなどして1000人以上の行方がわからなくなっているとしています。

ガザ地区では飲み水や医薬品も著しく不足し、人道状況の悪化が深刻化していて、民間人の犠牲者が増え続ける中、地上侵攻が始まればさらなる被害の拡大が懸念されます。

仏外相 “国際人道法を順守 民間人保護が必要”

イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相などと会談したフランスのコロナ外相は15日、現地で記者会見し「イスラエルにはハマスとその危険からみずからを守る権利があるが、公正でなければならない。国際人道法を順守し、民間人を保護する必要がある」と述べ、空爆を続けるイスラエルに民間人への被害を最小限にとどめるよう求めました。

また、多くの住民が避難しているガザ地区の南部にも食料などが届けられるべきだとしています。

さらに、イスラム組織ハマスによる攻撃で死亡したフランス人の数が19人にのぼったと明らかにしたほか、人質となっているとみられるフランス人については「すべての人質を即時かつ無条件で解放するよう求める。フランスは誰も見捨てない」と述べ、引き続き解放に向けて尽力する姿勢を強調しました。

米大統領補佐官 “イスラエル側 ガザ地区南部への水供給 再開”

イスラエルによってガザ地区の電力や水、燃料の供給が止められ人道危機が深まる中、アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は15日、CNNテレビに出演し、イスラエル側がガザ地区南部への水の供給を再開したと伝えてきたことを明らかにしました。実際に水の供給が再開されたかは不明です。

またサリバン補佐官は「ハマスとは何の関係もない罪のないパレスチナの人々が、爆撃を受けず、食料や水、医薬品などを手に入れることができる安全な地域にたどりつけるようにしたい」と述べ、民間人の避難のための人道回廊の設置などについて国連や関係国などと引き続き協議していく考えを強調しました。

一方、アメリカ国務省は15日、バイデン大統領がガザ地区での緊急の人道支援をはじめとした中東の人道問題を担当する大統領特使を任命したと発表しました。

国連レバノン暫定軍 “暫定軍本部にロケット弾1発が着弾”

レバノン南部に駐留しイスラエルとの国境地帯を監視する国連レバノン暫定軍は、15日、暫定軍の本部にロケット弾1発が着弾したと発表しました。けが人は出ていないということで、どこから発射されたのかは確認中だとしています。

現場周辺ではハマスが今月7日に大規模な攻撃を開始して以降、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの間で散発的に衝突が起きていて、死者も出ています。

国連レバノン暫定軍は、武力衝突の拡大が続いていると非難した上で「すべての当事者に対し、戦闘を停止するよう求める」と呼びかけています。

国連レバノン暫定軍は1978年、レバノン南部に侵攻したイスラエル軍の軍事作戦の停止と撤退を監視するため、国連の安全保障理事会が設立した平和維持部隊で、ことし8月時点で49か国からおよそ1万人が参加しているということです。

OIC 閣僚級の緊急会合開くと発表

ガザ地区の情勢などについて話し合うため、イスラム諸国でつくるOIC=イスラム協力機構は、本部のあるサウジアラビア西部のジッダで18日、閣僚級の緊急会合を開くと発表しました。ガザ地区で命を脅かされている市民の状況や、エスカレートする軍事的な状況などについて意見を交わすとしています。

ただ、OICに加盟するイスラム圏の各国の間では、イスラエルとハマスの双方に自制を求める国もあれば、イランのようにハマスを支持する国もあるなど、立場に違いがあり、一枚岩となって事態の打開に向けた対応をとるのは容易ではないことが予想されます。

米報道官 “ブリンケン国務長官 16日に再びイスラエル訪問”

アメリカ国務省のミラー報道官は中東を訪問中のブリンケン国務長官が16日に再びイスラエルを訪れると明らかにしました。国務省は当初、ブリンケン長官が12日にイスラエルを訪れたあと、15日にかけてサウジアラビアやエジプト、それにカタールなど中東の各国を訪問すると発表していました。

ブリンケン長官はアラブの各国の首脳らとの会談を踏まえて、民間人の避難のための人道回廊の設置などについて改めてイスラエル側と協議を行うとみられます。

イラン外相 “ガザ地区への攻撃 やめるよう求めた”

中東の衛星テレビ局、アルジャジーラは15日、イランのアブドラヒアン外相がガザ地区への攻撃をやめるようイスラエルに求めたと伝えました。

イランのアブドラヒアン外相は、アルジャジーラのインタビューの中で「われわれはイスラエルに対し、第三者を介してガザ地区での犯罪行為をやめなければ手遅れになると伝えた」と述べ、イスラエルに警告したことを明らかにしました。

また、イランが後ろ盾となりイスラエルと敵対してきたレバノンのイスラム教シーア派組織、ヒズボラの最高指導者のナスララ師から「すべての選択肢が用意されている」と聞かされたとして、イスラエルがガザ地区への地上侵攻に踏み切ればヒズボラによるイスラエル北部への攻撃が激しくなる可能性を示唆し、イスラエルとそれを支援するアメリカをけん制しました。

その上で「この状況ではイランは傍観者のままではいられない」と述べ、具体的な手段には言及を避けながらも、ガザ地区の情勢に関わっていく考えを示しました。

《イスラム圏の国々 立場わかれる》

ガザ地区情勢への対応をめぐってはイスラム圏の国々でも立場がわかれています。

多くの国はイスラエルとハマスの双方に自制を求めていて、このうちトルコはエルドアン大統領が仲介役を務める意欲も示していて「双方からの要請があれば、捕虜交換をはじめとしたあらゆる仲介の準備がある」と述べています。

また、アラブ諸国の中でも早くからイスラエルと国交があり、イスラエルとハマスの過去の大規模衝突でも仲介の実績があるエジプトは双方に自制を求めた上で人道状況の改善に向けて隣接するガザ地区の南部から支援物資を運び込めるよう準備を進めています。

一方、ハマスを支援してきたイランは、ハマスによる攻撃を支持してイスラエルのみを非難し、イスラエルが大規模な軍事作戦を前にガザ地区の住民に避難を呼びかけていることについても「強制移住」だとして受け入れられないという立場を示しています。

また、内戦を通してイランの支援を受けるなど、関係の深いシリアもイスラエルを非難する立場を鮮明にしています。

在留邦人の数は

外務省によりますと、今月14日の時点でイスラエルとパレスチナにはあわせて1000人余りの日本人が滞在しています。

上川外務大臣は15日、記者団に対し「情勢は流動的で刻一刻と変わっている。出国を希望する人は商用機が運航されている間に早期に出国いただくよう改めて呼びかけたい」と述べました。

またガザ地区には国際機関やNGOの関係者など少人数の日本人がいて、全員と連絡はとれているということです。

具体的な人数は明らかにしていません。

上川大臣は12日、エジプトのシュクリ外相と電話で会談した際、ガザ地区からエジプト側に退避を希望する日本人がいた場合には支援するよう要請しました。

危険情報のレベルは

外務省は、今月10日、イスラエルの危険情報のレベルを引き上げ、ガザ地区とその境界周辺に最も高いレベル4の「退避勧告」を出しています。

また、レバノンとの国境地帯はレベル3の「渡航中止勧告」、ヨルダン川西岸地区は不要不急の渡航中止を求めるレベル2を継続しています。

一方、テルアビブやエルサレムなど、このほかの地域については不要不急の渡航中止を求めるレベル2に引き上げています。

外務省は、現地の情勢を見極めながら危険情報のレベルをさらに引き上げるかどうか検討することにしています。