ジャニーズ事務所会見のポイントは?社名 補償 再発防止策は?

ジャニー喜多川氏の性加害問題でジャニーズ事務所は2日、都内で記者会見しました。

現在の社名を「SMILE-UP.(スマイルアップ)」に変更し、将来的に会社を廃業すると発表しました。
「ジャニーズ」の名称がついた所属グループについても名称を変更する考えを明らかにし、元社長で創業者でもあるジャニー氏の名前が、消えることになります。

会見は午後2時から都内のホテルに設けられた会場で始まり、社長の東山紀之氏と副社長の井ノ原快彦氏、顧問弁護士の木目田裕氏、CCO=チーフ・コンプライアンス・オフィサーに就任した弁護士の山田将之氏のあわせて4人が出席しました。前社長の藤島ジュリー氏は会見に出席しませんでした。

ポイント【1】ジャニーズ消滅・廃業

《ジャニーズ社名変更》

この中で東山氏は、現在の「ジャニーズ事務所」という社名について、10月17日付けで『SMILE-UP.』に変更しこの会社で被害者への補償を担っていくことを明らかにしました。

東山氏は「社名を変更し、タレントのマネージメント、および育成の業務からは完全に撤退させていただきます。被害に遭われ今もなお苦しんでいらっしゃる方々の補償、救済、心のケア、これを時間がかかっても最後までまっとうさせていただきたいと考えております」と述べました。

《ジャニーズ補償後に廃業》

また、東山氏は、名称を変更した『SMILE-UP.』でも引き続き代表取締役社長を務め、被害者への補償を行ったうえで、将来的には廃業すると発表しました。

東山氏は「スマイルということばに違和感を感じていらっしゃる方もいるとは思いますが、まずは被害に遭われた方々への謝罪や補償を少しでも早く進めていくことが『SMILE-UP.』の社会的責任と考えております。私が社長を務め、藤島ジュリー氏は100%株主として取締役にとどまります。今後、法を超えた補償を行うには第三者の資本を入れるとできなくなるからです。そして被害を受けられた方々への補償をきちんと最後まで行い廃業いたします」と述べました。

《ジュリー氏手紙『ジャニーの痕跡この世から一切なくす』》

井ノ原氏は会見に出席しなかった前社長の藤島ジュリー氏の手紙を読み上げました。

手紙では「ジャニーズ事務所は名称を変えるだけではなく、廃業する方針を決めました。おじジャニー、母メリーが作ったものを閉じていくことが、加害者の親族として私ができる償いなのだと思っております」

「私は4年前に母親であるメリーからジャニーズ事務所を相続いたしました。ジャニーズ事務所は、ジャニーだけではなく、私の母であるメリーも権力を握っていたと思います。ジャニーと私は、生まれてから1度も2人だけで食事をしたことがありません。ジャニーが裁判で負けた時も、メリーから『ジャニーは無実だからこちらから裁判を起こした。もしも有罪なら、私たちから騒ぎ立てるはずがない。本人も最後まで無実だと言い切っている。負けてしまったのは弁護士のせい』と聞かされておりました。当時、メリーの下で働いていた人たちも、同じような内容を聞かされて、それを信じていたと思います。そんなはずないだろうと思われるかもしれないですが、ジャニーがある種、天才的に魅力的であり、皆が洗脳されていたのかもしれません」

「今回、なぜ私が100%の株主で残るのかと多くの方々から批判されました。実は多くのファンドや企業の方々から、有利な条件で買収のお話もたくさんいただいております。そのお金で相続税をお支払いし、株主としていなくなるのが、補償責任もなくなり、一番楽な道だとも何度も何度も多くの専門家の方々からアドバイスされました。しかし、100%株主として残る決心をしたのは、ほかの方々が株主で入られた場合、被害者の方々に、法を超えた救済が事実上できなくなると伺ったからでした。そういう理由で現在の会社には株主100%として残りますが、今後、私は、補償とタレントの心のケアに専念し、それ以外の業務には、一切、当たりません。また今後、私はすべての関係会社からも代表取締役を降ります」

「ジャニーとメリーから相続をした時、ジャニーズ事務所を維持するためには、事業承継税制を活用しましたが、私は代表権を返上することでこれをやめて、速やかに納めるべき税金をすべてお支払いし、会社を終わらせます」

「ジャニーズ事務所を廃業することが、私が加害者の親族としてやり切らねばならないことなのだと思っております。ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたいと思います」

《「ジャニーズ」の名称ついたグループすべてで変更》

東山氏は会見で、「ジャニーズ」の名称がついた所属グループや関連会社についても名称を変更する考えを明らかにしました。

元社長で創業者でもあるジャニー氏の名前が、なくなることになります。

東山氏は「本当にみんな、たくさんのファンの方に愛されてきた名前ですから、本人たちも葛藤はあると思う。ただやはり変えていくということは聞いております。本人たちも苦渋の決断をしたと思うんですが、そういう形になっていくと思います。すべてジャニーズと名が付くものはなくなります」と述べました。

また、井ノ原氏は「ジャニーズ事務所という名前を残してほしいという意見もあったと思いますが、僕が聞いた中では、ジャニー喜多川氏を思ってのことではなく、ジャニーズという場所で輝いていた先輩たちに憧れて入ってきたという思いが一番強かったと思います。名前が変わっても自分がしっかり気持ちを持っていればいいと僕も思っていますので、だからこそ新体制の中で今まで以上に頑張らないといけない」と述べました。

ポイント【2】新会社は?名称は?

《新会社設立へ社長には東山氏就任》

東山氏は社名を変更する現在のジャニーズ事務所に代わってタレントのマネージメント業務などを行う新会社を設立するとしたうえで「自分たちでジャニーズ事務所を解体し、被害者と真摯(しんし)に向き合いながらファンの方々と未来を切り開いていく」と述べました。

そして、新会社の代表取締役社長にはみずからが、副社長には井ノ原氏が就任すると明らかにしました。

《新会社は「エージェント会社」》

東山氏は、新会社を希望するタレントらと個別に契約を結ぶ「エージェント会社」と位置づけ、タレントは「会社にすべてを委ねたり、縛られたりすることはなく、みずからが活動の方向性に応じて自分自身で活躍の場を求めていくことになる」と説明しました。

そのうえで「現在、ジャニーズ事務所に所属するタレントのうち、新会社に移って活動したいという意思確認ができているメンバーからはそれぞれがファンクラブを通じてお知らせをする」と述べました。

《社名はファン公募で決定へ》

新会社の社名については、副社長に就任する井ノ原氏が「われわれが未来を切り開いていくには、ファンの皆さんと改めて二人三脚で進んでいくべきだと考えている」と述べ、ファンクラブからの公募で決めていく考えを示しました。

《前社長・藤島氏は出資せず》

新会社の経営体制について、東山氏は「法人としての新会社は、約1か月以内に設立し、徐々に機能を拡大させていきたい」と述べる一方、ジャニーズ事務所の前社長の藤島氏は一切出資せず、取締役にも入らないと説明しました。

東山氏は社長として自身に求められていることについて「もっとふさわしい社長、経営のプロもいると思うが被害者の気持ちをくんだり、タレントの気持ち分かったり、そういうことを僕に望んでくれたと思う。どうやったら被害者と向き合えるのか。温かい目で見ていただければと思う」と語りました。

《岡田准一さんの質問も》

一方、2日の会見では所属タレントの岡田准一さんが、ジャニーズ事務所を退所するという一部報道についても質問が出ましたが、東山氏は「やはり、自分たちの声でしっかりと伝えていきたいという思いが強いと思う。ファンの皆様には待っていただきたい」と述べるにとどまりました。

ポイント【3】被害の申告や補償は?

ジャニー喜多川氏による性加害についての「被害者救済委員会」には、9月30日までに478人から連絡があり、このうち325人が補償を求めているということです。

さらに、この中で現時点で、過去、現在、ジャニーズ事務所への在籍が確認できたのはおよそ150人としています。

被害者に対する補償は11月から開始したいとしていて、CCO=チーフ・コンプライアンス・オフィサーに就任した弁護士の山田将之氏は補償額について「被害者救済委員会から補償額の提示を受けて、それを被害者に和解案として提示し被害者の方とお話をしながら最終的に補償を行っていく。被害を受けられた方に対する早期の補償を実現したいということから補償金額の総額や補償をした人数については適切な時期に適切な方法で皆様にもお知らせをしたい」と述べました。

また、9月21日以降、社長の東山紀之氏が被害を訴えている3人と直接面会し、これまでのジャニーズ事務所の対応について謝罪するとともに、補償や再発防止の取り組み状況について説明したということで、東山氏は「対話をすることで、きちんと向き合っていきたい。今後、会いたいという方とはぜひ、会いたい。話を聞いて欲しいという方は、手を挙げてくれれば僕自身が足を運んでいきたい」と述べました。

325人が補償を求めていることについて東山氏は「これほどだったのかという思いが強いです。やはりケアをしていくことをさらにきちっと考えていかなければならないと思います。今後、人数が増えるかもしれないということなので、補償と救済に特化した事務所にするという判断をしました。廃業したあとも補償は続けていきます」と述べました。

所属しているタレントかどうかで補償の程度が変わるのかという質問に対しては「本当に被害に遭われていたとしたら補償しなければいけないと思います。みなさんの協力のもとしっかり考えていきたい」と回答しました。

また、被害の立証について顧問弁護士の木目田裕氏は「ジャニーズJr.の管理が網羅的になされていない時期もあった。当時の資料を確認しているが、状況証拠、他の人の話、それらを含めて確認する作業をしている。なるべく幅広に補償できるよう、被害者に立証責任を転嫁しない」と述べました。

さらに、今後の相談のあり方について井ノ原快彦氏は「いきなり誰か分からないところには飛び込んでいけないと思う。たとえばセラピールームを作り、そこでできるだけ1対1の対話で、少しずついろいろな真実を話していただけるのであれば。できるだけみなさんに来ていただきたい」と述べました。

また、東山氏は「元裁判官の方3人にいきなり話すというのは本当に難しいことだと思いますので、まず心のケアをしっかりと、心を癒やしてあげるということを大事に考えて、そこから本人たちの意思をちゃんとくんでいきたい」と話しています。

ポイント【4】被害への認識や謝罪は

《被害者への謝罪など》

会見冒頭で被害者への謝罪の発言が相次ぎました。

社長の東山紀之氏は「喜多川氏によって、被害に遭われた方々、今も苦しんでいる方々に改めて謝罪させて頂きます。辛い思いをさせて申し訳ありませんでした」と被害者に改めて謝罪しました。

井ノ原快彦氏は「被害に遭われた方は本当につらい思いをして1人でずっと抱え込み、ようやく声を上げられた。その勇気があったからこそ、この会社が大きく変わろうという動きになった。なにとぞ、誹謗中傷はやめていただきたい」と述べました。

井ノ原氏が読み上げた前社長の藤島ジュリー氏の手紙では「ジャニーズ事務所に所属するタレントを、これまで応援してくださった世界中のファンの方々のお気持ちを考えると、本当に本当に申し訳なく、言葉にもなりません。また関係各社の皆様、ご迷惑ご心配をおかけして大変申し訳ございません。改めて、被害者の皆様、ジャニーのしたことを私も許すことができません。心から申し訳ないと思っております。またタレント、社員の皆さんがこれから新しい道に思いっきり羽ばたき、みんなが幸せになれるよう、私はそれを後押しできるような形になるよう、精いっぱい頑張っていきたいと思っております」としています。

《補償規模「これほどとは」》

補償の受付窓口にこれまでに478人から申し出があり、325人が被害を申告して補償を求めていることについて、東山氏は「これほどだったのかという思いが強いです。やはりケアをしていくことをさらにきちっと考えていかなければならないと思います。今後、人数が増えるかもしれないということなので、補償と救済に特化した事務所にするという判断をしました。廃業したあとも補償は続けていきます」と述べました。

また、井ノ原氏は「私も同じ意見ですが、やはり、これほどの人数だったんだと。本当に勇気を出して名乗り出てくださったということと、まだ今、1人で勇気が出せなくてずっと悩みを抱えている方もいると思います。どうやったらその方が対話をしてくださるのか、これからもずっと考えていかなければいけないことだと思います。これで十分だとはわれわれも思っていません」と述べました。

《東山氏の責任は?セクハラ疑惑は否定》

ジャニー喜多川氏の性加害について東山氏の責任を追及するほか、東山氏自身にセクハラがあったと疑われているという質問に対し、東山氏は「私はセクハラをしたことはありません。パワハラを感じていた方はいらっしゃるかもしれませんが35年から40年ぐらい前のことですし、僕自身が性加害について理解することは難しかったと思います。喜多川の犯罪は新聞で読んだが、世の中的にも騒ぎにならず、これはどういうことなのかなと感じていた」などと回答しました。

《性加害への認識》

東山氏は喜多川氏の性加害について、「結論的に見て見ぬふりをしてきたということになるのかなと思います。どう行動するべきかよくわかっていなかった。今であればいろんな人に言えると思うが、当時は家庭と仕事場と、学校ぐらいしかなく、その中で誰に言えるのか、その勇気が僕にはなかったです」と語り、「被害者が感じた恐怖をどうしたら救っていけるか、何をしたら癒やされるのか常に考えています。社長をやって自ら動くという行動で示していきたいと思います」と述べました。

そして、会見の最後に「さまざまなジュニアの子たちが被害を受けた。僕はいちタレントとして合宿所にはいましたが、触れてはならない部分のような、立ち入ってはいけないような感じがありました。僕個人の力が及ばないという年齢でもありましたし、それを『見て見ぬふり』だと言われたらそれまでだと思うんですね。心に負った傷は癒やすことができないと思いますし補償だけで済む問題でもない。できることはやはりジャニーズの名前がついたものはすべて捨て去ること、(被害者を)癒やしていくことなのかと感じています」と述べました。

また、井ノ原氏は「絶対的な支配のなかにいたと思います。巧妙な手口だと思います。僕ら子どもたちが気づかないうちに支配下にあり、当時いた大人たちの中にはそういう人たちもたくさんいたのかもしれません」と述べました。

そのうえで「1人が勇気を出してくれたおかげで何人もの人たちが告白できたんだと思いますし、それをむだにしてはいけないと思ってます」と述べました。