ジャニーズ事務所 10月2日に記者会見 何が示される?注目点は

ジャニー喜多川氏による性加害の問題をめぐり、ジャニーズ事務所は、来月2日、週明けの月曜日に都内で記者会見を開きます。

今後の事務所の運営に関わる方向性や、具体的な再発防止策の内容がどこまで示されるのか、注目されます。

被害を訴える声は続々と上がり、周囲からますます厳しい目が注がれる中、事務所はどのような方針を示すのでしょうか。

新たに声を上げた被害者「デビューのはずが…」

来月2日の会見を前に、新たに声を上げた元所属タレントの男性がNHKの取材に応じました。

大阪出身の木村伸一さん(46)です。

高校3年生だった1995年、親戚がジャニーズ事務所に木村さんの書類を送ったところ、ジャニー喜多川氏から突然電話で呼び出され、「ソロでデビューさせたい」などと勧誘されたといいます。

当時は家庭の経済状況が厳しく、高校卒業後は就職する予定だったこともあり、1度は断りましたが、学費の援助をするなどと言われ説得されたとしています。

数日後に東京のジャニー氏の自宅に招かれると、そこで初めて性被害にあったということです。

木村伸一さん
「パニックになりましたし、ショックも大きかった。ただ当時生活に困っているというのがあったので、『耐えなきゃいけない』という気持ちになりました」

ことし4月、元所属タレントが会見で被害を語る姿を見て、自分も告白しようと決めたという木村さん。

「みんな知っていたのに黙認されてきた現状を変えなきゃいけない」と訴えています。

社名変更、被害者への補償… 会見のポイントは

ジャニーズ事務所は今月19日に開いた取締役会で、
▽社名変更、
▽前社長の藤島ジュリー氏が保有する株式の取り扱い、
▽被害補償の具体的な方策、
▽所属タレントや社員の将来などについて、
あらゆる角度から議論を行ったとしています。

来月2日の記者会見では、これまでの議論の進捗(しんちょく)内容や、今月中に発表するとしていた具体的な再発防止策が公表される見通しです。

社名の変更や被害補償、それに新たな経営体制など今後の事務所の運営に関わる方向性や、再発防止策の内容がどこまで示されるのか、注目されます。

新体制 “事務所の影響力排除 どこまでできるか”

この問題をめぐって、事務所は今月7日に初めての記者会見を開きましたが、その後、経済界からは事務所側の対応が不十分だとする声があがり、企業の間では、事務所との取り引きや、所属タレントの広告での起用を見直す動きが広がっています。

会社法が専門の、関西学院大学の伊勢田道仁教授は、「企業の経営にあたっては利益追求だけではなく人権リスクにも配慮することが世界的な流れになっている。日本においても、取引先で生じた人権侵害に対して厳しい目を向ける人が増えていることを示している」と指摘しています。

伊勢田教授は、会社の体制を整える手段としては一般的に、
▽新しい会社を設立したり、
▽すでにある会社に主要事業を譲渡もしくは移管したりしたうえで、
元の会社は特定の事業に専念する方法を取ることが多いとしています。

そのうえで、今後、公表される新たな運営体制について、「ジャニーズ事務所の影響力を排除して、第三者の視点を入れた新体制にどこまでできるのかが注目される」と話しました。

また新体制発足後については、「今回の問題を『ジャニー氏個人の不祥事』と捉えるのではなく、企業の人権リスクという面から捉え直す必要がある。人権問題や不祥事に対しては取引先が継続的に影響力を行使する流れが続くことが望ましい」と話していました。

NHK、民放各局の姿勢は

NHKと民放各局は、先週から29日にかけ、事務所への要望状況やタレントの起用方針などを会見で明らかにしています。

【事務所への要望】
ジャニーズ事務所に対しては、被害者の救済や補償に向けた要望のほか、社名の変更の検討を求めたところもありました。

《NHK》
▽NHKは、事務所の担当者に面会し、補償や再発防止を適切かつ迅速に行うよう要請したとしています。

《日本テレビ》
▽日本テレビは、補償や再発防止策の実施、組織の見直しなどを文書で申し入れたほか、社名変更の検討や、補償とマネージメント組織の分離を口頭で求めたということです。

《テレビ朝日》
▽テレビ朝日は、被害者への謝罪や補償、再発防止策の徹底のほか、社名変更の検討についても申し入れたことを明らかにしました。

《TBS》
▽TBSは、被害者の救済や補償などの具体的な施策の実施と、人権に関する行動指針を策定を求め、いずれも公表することなどを文書で要望したとしています。

《テレビ東京》
▽テレビ東京は、社内ガバナンスの確立や補償や再発防止の実行、それに社名の変更について、文書で申し入れを行ったことを明らかにしました。

《フジテレビ》
▽フジテレビは、救済と再発防止に加え、社名の変更の検討、それに救済を担う会社とタレントのマネージメントの会社との分離の検討を求めたとしています。

【タレント起用の方針】
事務所の所属タレントの起用についても各テレビ局が方針を示しています。

《NHK》
▽NHKは、番組などへの契約がすでに決まっているタレントはこれまで通り継続する一方、NHK紅白歌合戦も含め新規の出演依頼は、被害者への補償や再発防止への取り組みが着実に実施されていることが確認されるまで当面行わないとしています。

《日本テレビ》
▽日本テレビは、起用について変更する考えはないとしつつ、来月2日の事務所の会見の内容を注視するとしています。

《テレビ朝日》
▽テレビ朝日は、番組の企画内容を踏まえて総合的に判断する方針に変わりはないとしたうえで、来月2日に示される内容を注視するとしています。

《TBS》
▽TBSは、現在契約をしているタレントの出演については変更しない一方、今後については改善状況を確認して判断するとしています。

《テレビ東京》
▽テレビ東京は、新たな起用については極めて慎重に判断するとして事務所にも伝えたとしたほか、来月2日の発表の内容を確認し、改めてその後の対応を検討するとしています。

《フジテレビ》
▽フジテレビは、被害者への対応が着実に実施されていることを確認しながら、適切に判断するとしています。

【“メディアの沈黙”の検証】
今回の問題の背景の一つに“メディアの沈黙”が指摘されたことについては、社内でのヒアリングの実施や検証の動きも徐々に出始めています。

《NHK》
▽NHKは、引き続き番組の中で取り上げることで検証するという考えを示しました。

《日本テレビ》
▽日本テレビは、過去の報道対応などについて社内でヒアリングを進め、結果について何らかの形で公表する考えを示ししました。

《テレビ朝日》
▽テレビ朝日は、報道局などの関係者に話を聞いているとしたほか、人権の方針をまとめ、社員に研修会などを実施するとしました。

《TBS》
▽TBSは、当時の担当者に話を聞いたとした上で、報道番組の中で適宜考えていくとしました。

《テレビ東京》
▽テレビ東京は、1か月ほど前から検証作業のためのヒアリングを社内で行っているということです。

《フジテレビ》
▽フジテレビは、当時の報道担当者に聞き取りを行っているとしました。

“各メディアは厳しいスタンス取るべき”

メディア論が専門の、同志社女子大学の影山貴彦教授は、ジャニーズ事務所に対するテレビ各局の姿勢について、「所属タレントの起用を『慎重に』という言い方はしているが、『これまで通り』ということばも並ぶ。厳しい目を向けてうみをしっかり出すことで、タレントの活動やファンが安心して応援できるまでの道のりが早まるはずで、今こそ各メディアは厳しいスタンスを取り、厳しい声明を出すべきだ」と述べました。

また、今回の問題の背景の一つに“メディアの沈黙”があると指摘されていることを踏まえ、「テレビ局は今回の件の紛れもない当事者であるにもかかわらず、自己検証が現在のところほとんどない。一日も早くしっかり検証を重ねることが大切で、そうしないと、テレビに対する信頼度はますます落ちるということに、各局のトップは気付かなければいけない」と指摘しました。

そして、来月2日に開かれるジャニーズ事務所の会見について、「これで幕引きにしてはならず、あくまでもスタートラインで、その後の経過こそが大事だ。真摯(しんし)にシビアにしっかり見ていく必要がありメディアにもその責任の多くがある。今回の問題は一朝一夕で解決することではないが、健全なエンターテインメントを構築する方向に進んでいってほしい」と話していました。