「岡田阪神」はどのような野球をやるのか。
シーズン前、漠然としたイメージしかなかった中、守備について語ったことがありました。
“岡田節”で振り返る阪神の強さ “普通”にたどりついた先に
ファンが待ち望んだ18年ぶりの歓喜。阪神の岡田彰布監督はみずからの「野球哲学」を選手やスタッフに伝えていました。
その“岡田節”の数々を一番近くで聞いてきた担当記者が振り返るとチームの結束力がかいま見えてきました。
(大阪放送局 記者 中村拓斗)
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阪神 18年ぶり優勝の要因は“攻守両面の成長”岡田監督の指導
阪神 18年ぶり優勝 各地での応援 動き 喜びの声
“ファインプレーは必要ない”
「ビッグプレーとかファインプレーはいらない。まぁ、たまにファインプレーもあってほしいけどね(笑)」
“ファインプレーは必要ない”
少し大げさかもしれませんが、そのことば通り、選手たちに徹底して基本練習をさせたうえで、堅実なプレーを求めました。
特に重点を置いたのがセカンドとショートの二遊間を中心にダブルプレーを確実にとることでした。
「バッテリーがゴロを打たせてゲッツーをとろうとしている時、そういう打球がいった時に確実にゲッツーをとれるというかね。堅実なプレーですよね」
キャンプでは、何度も何度もひたすらダブルプレーの練習を繰り返しました。
その成果はシーズンに表れました。
“相手に流れを渡したくない”
選手たちは、ここぞの場面で幾度となくダブルプレーをとってきました。
その成功率は昨シーズンに比べて大きく格段に上がり、ピンチの芽を確実に摘み取っていきました。
優勝マジック 初点灯の試合でも…
優勝へのマジックナンバーが初めて点灯した8月16日に口にしたことばにも表れていました。
「当たり前のことを当たり前にやったらええ結果が出るだけやんか。自分らで崩れていくのは、そらあかん」
“当たり前のことを当たり前にできるかどうか”
岡田監督自身が大切にしてきた野球観です。
攻撃では、ボール球を振らずにバントなどでしっかりとランナーを送り点を取れるときに取る。
投手陣には無駄なフォアボールを絶対に与えないことを求めてきました。
選手たちに口酸っぱく言い続けてきた結果、チームがフォアボールを選んだ数はすでに昨シーズンを大きく上回り12球団で断然トップです。
出塁率も上がり、地道に得点につなげてきました。
17年もの間、優勝を逃していた古巣に“勝つための方法”を説き、浸透させてきた岡田監督。
18年ぶりの“アレ”が現実味を帯びてきたシーズン終盤、幾度となく口にするようになったのが『“普通”にやるだけ』ということばでした。
この『普通』という何気ないことば。
そこには、これまでに伝えてきた勝つための方法を20代が中心の選手たちに、十分理解してもらい、チーム全体に浸透しているという自信が込められているように感じました。
そして、浮足立つことなく、これまでやってきた自分たちの野球を続けていくんだという決意の表れのようにも聞こえました。
選手たちの成長を実感
今月8日、マジックナンバーを「12」として迎えた2位・広島との直接対決3連戦の初戦。
甲子園球場は満員でメディアも注目するなかでの一戦でした。
先発は今シーズン、大きな飛躍をした3年目の村上頌樹投手。
「気負わず投球ができれば」と臨んだ大事なマウンドで、持ち味のコントロールのよいピッチングで8回途中を1失点の好投。
打線はホームランに加えて、5回と8回にはフォアボールをきっかけに得点し勝ちました。
これまで通してきたふだんどおりの野球で戦った選手たちは、このカードを3連勝で終えて優勝へ前進しました。
去年10月に就任して以来、およそ1年間かけて鍛え上げてきた選手たちの成長を岡田監督は実感していました。
「大したもんと思うよ。おーん。これは地道にな、俺が監督に代わってやることというか、そういうものの積み重ねで、勝ち星を重ねたから。ふだんどおり“普通”にやればいい結果が出るという、そういう平常心というかな。自分らの野球をしたら(勝てる)というのが何か見えるよな、おーん」
ついに…“アレ”
マジックナンバーを「1」として迎えた巨人との試合でも“普通”に戦い18年ぶりの“アレ”をつかみとりました。
「普通にやる」
1年間かけてたどり着いた先に岡田監督の胴上げが待っていました。
その輪に加わった選手たちの姿は、自信と達成感、そして笑顔で満ちあふれていました。