タクシー運転手 4年で2割減 コロナや高齢化による離職が背景に

全国のタクシー会社で働く運転手の数は新型コロナの影響や高齢化による離職が相次ぎ、ことし3月末の時点で23万人余りとコロナ禍前の4年前からおよそ20%減少したことが業界団体の調査でわかりました。

この調査は、全国の5000社余りが加盟する「全国ハイヤー・タクシー連合会」が行いました。

それによりますと全国のタクシー会社で働く運転手の数はことし3月末の時点で23万1938人でした。

これはコロナ禍前の4年前、2019年3月末と比較すると5万9578人、率にして20.4%減少しています。

厚生労働省によりますとタクシー会社で働く運転手の平均年齢は去年時点で58.3歳となっています。

新型コロナの感染拡大で一時、利用客が大幅に減って収入が減少したことや車内での感染への懸念から運転手が離職するケースが相次ぎ、この4年で減少はさらに進んだとみられています。

「全国ハイヤー・タクシー連合会」は「運転手の確保に向けて引き続き取り組んでいきたい」としています。

タクシーをめぐっては新型コロナの5類への移行による外出機会の増加や訪日外国人旅行者数の回復などから利用者の需要が増えていますが稼働できるタクシーが足りないため影響が広がっていると指摘されています。

高齢者などからはタクシー会社に連絡をしても車両が空いていないと言われることが増えて病院への通院などに影響が出ているという声も聞かれます。

人手不足などでバス路線の廃止や便数の減少も相次ぐ中、住民の移動手段をどのように確保していくのかが課題となっています。

専門家に聞く 現状と対策とは

タクシーの運転手不足とその影響、そして今後の課題についてタクシー業界の現状に詳しい計量計画研究所の牧村和彦 理事に聞きました。

Q.タクシー不足が深刻化していると指摘されるが、どう受け止めているか?

A.タクシーはまさにドアツードアの移動を支援する大事なサービスだと思う。

そして、深夜や早朝の時間に利用できるという重要な役割を担っていて、タクシーはまさに移動の最後の生命線だと考えてよいと思う。

これまでは深夜や早朝の時間帯の移動をタクシーが支援してきたが、運転手の不足などから徐々に十分な支援ができない状況となっている。

Q.運転手不足はほかの業界にも広がっているが。

A.タクシーに限らず公共交通全体で運転手不足に陥っている。

ダイヤ改正でバス事業者などで減便や路線の廃止が始まっている。

移動しやすい地域と、そうではない地域でだんだん移動の格差が広がったり、車が利用できる人とそうではない人の差、これは「モビリティーデバイド」と呼ばれるが、それがより一層広がっていくことが大変危惧される。

Q.時間外労働の規制が強化されるいわゆる2024年問題も迫っているが。

A.2024年問題は働く時間が短縮されて、健康な運行管理ができるというプラスの面がある。

一方でこれまで時間外労働で、収入を確保していた人たちが、収入が減ってくるということで懸念の声が出ている。

その結果、同じ時間働くのであれば、別の業界の方が給料が良いかもしれないと転職する動きが加速してしまうのではないかと心配している。

Q.タクシーの運転手不足への対策はどのように進めるべきか?

A.これまでは民間事業者中心にサービスを支えてきたがこれからは官民連携をしていく時代だと思う。

例えば、移動手段を確保するためにバスの車両を民間ではなく行政が購入してそれを民間にリースする形で車両の費用を支援するやり方もあると思う。

また、民間の事業者がタクシー運転手の募集や住居などを行政に支援してもらうこともできると思う。

これまでタクシーや鉄道、バス、それぞれがバラバラで議論していたことを垣根を越えて対策を話し合っていく。

地域ごとに融通し合いながら連携していくことが大事だ。

Q.自治体の間では高齢者が通院の際にタクシーを利用できるチケットを配るなどさまざまな取り組みが行われている。運転手が足りなくなっているが、どういった対応が必要か?

A.タクシーのチケットを配布してもドライバーがいなければ利用ができないという状況が起きている。

タクシーの運転手を育てていくことが大事で、政府としても運転手の給与をほかの産業と同じレベルに引き上げるといった政策目標を掲げて、実現するためにはどうしたらよいかを考えていく必要があると思う。

2030年を1つの目安として事業に取り組んでいる会社も多くあるので、政府としても民間事業者の経営に合わせた形で目標を立てていくことが大事ではないか。

Q.有効な対策はどのようなものがあると考えるか?

A.地域によっては需給のバランスが崩れてきているところもあるので供給をうまく増やす政策も重要だと思う。

タクシー事業は運輸局の許可が必要で営業できる地域が決まっているが、特定のピーク時やイベント時にはほかの地域から乗務員を派遣できるような柔軟な運用も十分検討の余地がある。

さらに、地方都市や中山間地域ではタクシー事業者の廃業が続いているので支援の検討が必要だ。

Q.今後、求められることは?

A.タクシー運転手は5年先10年先を考えたときには地域を支えていく使命感を持ってもらうという役割を新しくつくることが重要ではないかと思う。

タクシーの運転手は地域のことをよく知っているので地域の見守りを代行したり、住民の困りごとを運転手から地域にフィードバックして、地域の交通サービスを良くしていく役割も期待している。