ガソリン価格 最高値更新186.5円/Lに たこ漁や物産展も苦境

レギュラーガソリンの小売価格は4日時点の全国平均で、1リットルあたり186.5円となり、2週連続で最高値を更新しました(現在の方法で調査を行っている1990年以降)。

長引く燃料費の高騰によって、運送業にとどまらず、水産業や介護の現場などさまざまな影響が広がっています。

ガソリン価格 2週連続で最高値更新

国の委託を受けてガソリン価格の調査をしている石油情報センターによりますと、レギュラーガソリンの小売価格は4日時点の全国平均で、1リットルあたり先週から0.9円値上がりし、186.5円でした。

これは16週連続の値上がりで、現在の方法で調査を行っている1990年以降では先週に続いて2週連続で最高値を更新しました。

国からの補助金がことし1月以降、段階的に縮小されていることに加え、サウジアラビアの自主的な減産の影響で原油価格が上昇傾向にあること、さらに円安に伴って輸入価格が上昇していることなどが主な要因です。

ただ、政府が、石油元売り各社に支給している補助金を7日から1リットルあたり7.7円増やし今後も拡充することから、ガソリンの小売価格は徐々に値下がりし、10月中には175円程度の水準に抑えられる見通しです。

石油情報センターは「5日にサウジアラビアが自主的な減産を延長すると発表した影響で、原油価格の高騰は続く見通しだが、政府の補助金の効果で、ガソリンの小売価格は来週から値下がりが予想される」と話しています。

“漁に出られない” “出展できない” 価格高騰の影響広がる

運送会社「これ以上できないくらいに節約」

トラックやトレーラーで長距離輸送を行う富山市の運送会社では、利益が昨年度の同じ時期に比べおよそ3割も減少するなど燃料費が経営を圧迫しています。

会社によりますと、トレーラー1台が富山と首都圏を1往復するとおよそ580リットルの軽油を使い、1リットルあたり10円の値上がりで1か月の燃料費は200万円ほど増えるということです。

このため、今年度に入って7月までの利益は昨年度の同じ時期と比べておよそ3割も減少したということです。

「大興運輸倉庫」の古木準一社長は「燃料価格はこれまでと違う次元で、さらに上がると危険な水準だ。経費はこれ以上できないくらいに節約して耐えている」と話していました。

漁師「しんどい」出漁の見送りも

兵庫県明石市の名産「明石だこ」の漁も苦境に立たされています。

明石市の東二見漁港では、兵庫県のブランドとして有名な明石だこや明石鯛など瀬戸内海で取れた新鮮な魚介の水揚げが盛んに行われています。

東二見漁協によりますと、近海で漁を行う船は燃料として1日あたり100リットル程度の軽油を使用していますが、3年前と比べると、燃料代がおよそ1.5倍に増えているということです。

漁協では少しでも燃料の使用を減らそうと、燃費を向上させるため船底につく貝などを頻繁に清掃するよう促したり、漁を終えて帰ってくる際は速度を抑えたりすることなどをアドバイスしています。

しかし、漁業者の中には一定以上の漁獲量が見込めない日は赤字になるとして漁に出るのを見送る人も増えているとしています。

30年以上、漁をしているという男性は「燃料代が上がってしんどい。魚の価格も比例して上がってくれればいいが、そうもいかない」と話していました。

島民の足 連絡船も値上げ迫られ

びわ湖に浮かぶ滋賀県近江八幡市の沖島と対岸を結ぶ連絡船も、燃料費の高騰の影響を受けています。

連絡船のひと月あたりの燃料費はここ2、3か月は65万円前後で推移してきましたが、急激な値上がりで今月の燃料費は70万円に届く可能性もあるということです。

自治会によりますと、料金を値上げする予定は今のところありませんが、燃料費の高騰が長期間続けば値上げの検討を迫られると話しています。

沖島に暮らし漁業を営んでいる男性は「月に4回から5回、連絡船を利用しています。島民にとっては重要な交通手段なので料金が上がると困ります」と話していました。

介護施設 一度の送迎人数増やし燃料節約

介護の現場にも大きな影響が出ています。

山口市の山あいにある「とくぢ苑デイサービスセンター」は12台の車で利用者を送り迎えしていますが、利用者の住居が山間部に点在しており、遠いところでは片道20キロ以上離れた場所にあることから燃費がかかってしまうことが避けられません。

ガソリン価格の高騰分を介護報酬に上乗せすることはできないため、職員は、少しでも距離が短くなるルートを選んだり、一度の送迎に乗せる利用者の人数を増やしたりして、燃料費の節約に努めざるをえないのが現状です。

施設の齊藤奈津子生活相談員は「先月のガソリン価格は前の月に比べて10円くらい高かったので請求書を見るのが恐ろしいです」と話していました。

賞味期限あるので頻繁に輸送 物産展も苦境

名古屋市内のデパートで6日から始まった滋賀県の物産展では、賞味期限が短い商品を扱う業者から頻繁に輸送する必要があるため、ガソリン価格の高騰は苦しいといった声が聞かれました。

このうち、賞味期限が1日の餅菓子を扱う滋賀県内の和菓子店は期間中は毎日、早朝に商品を作り、名古屋まで片道80キロほどの距離を車で運ぶということです。

店の担当者は「愛知県の方々に召し上がっていただきたいが、ガソリン代が高いのでなんとかしてほしい。会社は大変な状態です」と話していました。

主催団体の1つ「びわこビジターズビューロー」によりますと、今回の物産展ではガソリン代の負担増などを理由に4つの業者が出店を断念したということです。

7日から始まる政府の負担軽減策とは

政府の燃料価格の負担軽減策は、ガソリンの小売価格が基準とする価格を超えた場合、その超過分の一部を補助する仕組みで7日から始まります。

具体的には、レギュラーガソリンの場合、小売価格が1リットルあたり、168円から185円までの部分と、185円を超える部分で、それぞれ補助率が変わります。

このうち、185円を超える部分は、9月から12月まで全額を補助します。

一方、168円から185円までの部分は、9月はその30%を、10月から12月まではその60%を補助します。

これらの措置で、政府は過去最高となったガソリンの小売価格が10月中には175円程度の水準に抑えられる見込みだとしています。

松野官房長官「原油市場の安定化働きかけていく」

松野官房長官は6日午前の記者会見で「日本経済に及ぼす影響について緊張感を持って注視するとともに、IEA=国際エネルギー機関や主要消費国との連携を強化し、産油国に世界の原油市場の安定化を働きかけていく」と述べました。

その上で「ガソリンなど燃料油の激変緩和事業については、新たな価格抑制策をあすから発動し、段階的に負担軽減を図っていくことにした。まずは今回の措置を年末まで講じるとともに、必要な対応を機動的に講じていきたい」と述べました。

ガソリンを節約する運転方法って?

値上がりが続くガソリン価格、なんとか出費を抑えるにはどうしたらいいのか。「ガソリン代を抑える運転方法」があると聞いて、JAF=日本自動車連盟を取材しました。