終戦から78年 全国戦没者追悼式

終戦から78年を迎えた8月15日、犠牲になったおよそ310万人の戦没者を慰霊する政府主催の全国戦没者追悼式が東京の日本武道館で開かれ、全国から遺族の代表などが参列しました。

ことしは新型コロナウイルスの感染拡大以降、4年ぶりに47都道府県すべてから遺族が参列する予定でした。

しかし、台風7号の影響で10の府県の遺族が参列を見合わせることになり、参列者数は、1855人でした。

式典では、天皇陛下が皇后さまとともに式壇に着かれたあと国歌が演奏されました。

感染防止のため、ことしも斉唱は行われませんでした。

まず、岸田総理大臣が、「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを今後も貫いてまいります。いまだ争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携え、世界が直面するさまざまな課題の解決に、全力で取り組んでまいります」と式辞を述べ、正午の時報を合図に参列者全員で1分間の黙とうをささげました。

そして、天皇陛下が、「終戦以来78年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。過去を顧み、深い反省の上に立って再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」とおことばを述べられました。

このあと、遺族を代表して昭和20年5月に中国で父親を亡くした熊本県の横田輝雄さん(83)が「世界の情勢に目を向けてみますと、依然として紛争が絶えることはなく幾多の尊い命が犠牲となり、ひいては飢餓や貧困をもたらしています。特に、今般のロシアによるウクライナへの侵攻は、言語道断の行いであり、現地の惨状を目の当たりにするにつけ、かつての戦争を思い出さずにはいられません。こうした状況の中、我が国が平和の実現に向けて果たすべき役割は決して小さくありません。私たち遺族は戦争の悲惨さと平和の尊さを孫、ひ孫の世代へと永遠に語り継ぐことを英霊にお誓い申し上げます」と追悼の辞を述べました。

終戦から78年を迎え、参列者の高齢化が進み、参列した遺族の75%以上が70歳以上となりました。

最年長の参列者で神奈川県に住む竹内笑子さん(104)は、陸軍兵長だった夫の繁一さんが中国で負傷し、陸軍病院で治療を受けたものの33歳で亡くなりました。

竹内さんは、繁一さんへの思いとして「亡くなったことを知った時は戦争中だったので悲しいもなにも思わなかった。もう亡くなってから何年になるのか。会いたいです。それだけです」と話していました。

また、戦争の記憶を受け継いでいこうと最年少の遺族として参列した秋田県の小学2年生で7歳の市川唯人さんは、曽祖父の石川兼治郎さん(当時30歳)がフィリピンのルソン島で戦死しています。

市川さんは「戦争は人の命だけではなく人の心をうばうもの。悲しくなるので絶対にしてほしくない。参列して思ったことを先生や友達に教えたいです。参列するのをきっかけに、絵本を読んで平和の意味を考えました。戦争のない日がずっと続いてほしいです」と話していました。

式典では、参列者が式壇に菊の花を手向け、戦争の犠牲になったおよそ310万人の霊を慰めるとともに、平和への誓いを新たにしました。