中国経済 景気回復の勢い減速 今後の見通しは?【Q&Aで】

中国のことし4月から6月までのGDPの、前の3か月と比べた伸び率がプラス0.8%にとどまったことについて、中国経済に詳しい丸紅中国の鈴木貴元経済研究チーム長に聞きました。

Q. 中国経済の現状をどうみればいいか?

A. 前の3か月と比べた伸び率はかなりの減速と言える。ことし1月から3月は、「ゼロコロナ」政策が終わり、相当な駆け足で坂を登ってしまったように急回復した。その時は、景気もサービス業を中心に盛り上がると期待感が出たが、今はそれが落胆につながり、失速しているという見方になっている。

背景には若年層を中心とする失業率の悪化や、民間企業の賃金の抑制、企業収益の業種間での格差が大きくなっていることがある。消費者はがっかりし、財布のひもの引き締めを強めてしまっていると思う。

さらに、世界経済の減速で輸出が滞り、新型コロナの間に中国経済を支えた輸出が盛り上がらず、厳しさが非常に強く感じられる。

Q. 今後の見通しは?

A. 今の足踏みからもう1回、駆け足を強めるということは考えにくい。引き続き、横ばい気味で推移するのではないか。

ことしの経済成長率として、政府が目標に掲げる5%前後はなんとか達成できそうではあるが、今の雰囲気からすれば何かしらの追加景気対策が行われることは考えられる。

これまでは、個人消費の大きな担い手である中低所得者の安心感を引き出すような政策があまり打ち出されていないが、今後は、所得対策などがどれだけ打ち出され、国民が明るいムードに変わっていけるのかということがポイントになるのではないか。

Q. 日本経済や世界経済への影響はどうなるか?

A. 日本経済にとって中国は一番の輸出先であり、世界で一番、日本企業が進出している市場で、日本にとって非常に重要な位置づけだ。

去年まで中国経済の下支え役だった設備投資やインフラ投資も減速してきていて、日本からの工作機械や資材の輸出に影響が及んでくる可能性がある。

また、中国は日本企業の生産拠点となっているから、中国から世界への輸出が減速することで日本からの電子部品などの供給が落ちかねないことにも注意すべきだ。中国はアジアの中心となる市場で、中国が減速すれば東南アジアやインドも減速しかない。

日本は中国を拠点としてアジアのビジネスを展開していることもあり、中国が落ち込むとアジア経済全体が減速していく。それが、さらに日本にも及んでくるということになるのではないか。