中国 GDP4月~6月は去年比+6.3% 景気回復の勢いは減速

中国のことし4月から6月までのGDP=国内総生産の伸び率は、去年の同じ時期と比べてプラス6.3%となりました。ただ、前の3か月の期間と比べた伸び率としてはプラス0.8%にとどまり、「ゼロコロナ」政策の終了を受けた景気回復の勢いは減速しています。

中国の国家統計局が17日に発表した、ことし4月から6月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、去年の同じ時期と比べてプラス6.3%でした。

伸び率は、前の3か月のプラス4.5%から拡大しました。

去年の同じ時期は、新型コロナウイルスの感染対策として、上海など各地で厳しい外出制限が行われ、その影響が広がっていた反動で高めの伸びとなりました。

一方、前の3か月の期間と比べたGDPの伸び率は、プラス0.8%にとどまり、「ゼロコロナ」政策の終了を受けた景気回復の勢いは減速しています。

この間の中国経済は、飲食などのサービス業は回復が続いた一方で、節約志向も根強く、家電や家具など耐久財の消費は低調でした。

また、不動産市場の低迷が長期化していることや、海外経済の減速が懸念される中、輸出が減少していることから、企業の生産も伸び悩みました。

中国の中央銀行は6月に、経済を下支えするため、10か月ぶりに事実上の利下げに踏み切りましたが、企業の景況感が悪化し、若い世代の失業率が高止まりする中、経済の先行きには不透明感が強まっています。

中国国家統計局 “正常な軌道に戻り回復傾向”

中国経済の現状について、中国国家統計局の付凌暉報道官は会見で「ことしに入って中国経済は、新型コロナの影響から徐々に脱していて、正常な軌道に戻り回復傾向になっている。ことしの経済社会発展の目標を実現する条件は整っていて自信を持っている」と述べ、中国政府が掲げる5%前後という年間の成長率目標の実現は可能だと強調しました。

一方、「世界の政治経済情勢は複雑で、中国経済の持続的な回復と発展の基礎はまだ固まっていない。経済を持続的な回復に向かわせるには、さらなる力が必要だ」と述べ、先行きに不透明感があるという認識も示しました。

不動産市場の低迷 長期化

中国経済の足を引っ張っている大きな要因が、関連産業を含めるとGDPの4分の1ほどを占めるとも試算される不動産市場の低迷の長期化です。

不動産業界はすそ野が広く、さまざまな建築資材のほか家具などの商品の売り上げにも影響があり、そのしわ寄せは中国各地で仕入れや販売を担ってきた中小企業に広く及んでいます。

北京に隣接する河北省廊坊にある鋼材の取り引きを行う市場のある地区には、資材を仕入れて建設会社に販売する卸売り業者などが集まっています。地区の業者によりますと、最も多い時でおよそ400社ありましたが、住宅の新規の建設が伸びず、工場などの設備投資も低調なことから廃業が相次いでいて、今はおよそ100社にまで減っているということです。

取り扱う鋼材の量が半分以下に減ったという業者は「新型コロナの3年間で多くが経営を続けられなくなり、その後もたくさん倒産したが中小企業への支援はない」と話していました。

また、以前は3人から4人の従業員を雇用していたものの、今は家族だけで経営する業者は「コストを考えるとどの業者も人を雇えない。新型コロナが終わった時はよくなる感じもあったが全然よくなっていない」と話していました。

17日発表された全国の不動産の販売面積はことし1月から先月までの累計で、去年の同じ時期と比べて5.3%減少し、市況の悪化が続いています。

住宅需要が高まらない背景には景気の先行きが不透明なことや、人口の減少傾向が今後も進むという見方があると指摘されていて、不動産市場の低迷はさらに続く懸念が出ています。

日系ショッピングセンター 客足戻るも節約志向

中国では飲食や旅行などのサービス消費は回復が進んだ一方で、家電などの耐久財は振るわず、景気回復が鈍くなる要因となっています。

内陸部の四川省成都にある日系のショッピングセンターでは感染対策の緩和を受けて客足が戻り、食品や衣服などの日用品を中心に売り上げは去年より増えているということです。

一方で、家電や家具など比較的価格が高く買い替えの頻度が少ない商品の販売は伸びていないことから、売り上げはコロナ前の水準には届いていないということです。

店側は消費者の間で節約志向が強いことが要因だとみています。

客の男性は「コロナで収入も減少したのでなるべく節約して浪費しないようになった。買わなくても済むものは買わないようにしている」と話していました。

店では売り上げの増加をはかるため、食品や寝具などで利益の幅が大きい自社ブランドの新商品を開発していますが、先行きに対して不安も抱えています。

成都イトーヨーカ堂の安西太志経営企画室長は「コロナの3年間で客の購買習慣が大きく変わってしまった。しっかり貯蓄しておこうと消費に対して防衛的な部分が出てきているのではないか」と話しています。

宝くじが人気に 売り上げ増加

景気回復の勢いが鈍化し節約志向が広がっていると指摘される中、中国で人気が出ているのが宝くじです。

中国財政省によりますと、ことし1月から5月までの全国の宝くじの売り上げは2251億人民元、日本円でおよそ4兆3000億円と去年の同じ時期と比べておよそ1.5倍になっています。

中国メディアは背景に人々の間で景気に対する不安が広がり収入が減少する中で、少ない出費で高額の当せん金をねらいたいという心理が働いているという専門家の分析を伝えています。

北京市内にある宝くじを売る店舗の店員は「売れ行きはよくて宝くじを買ってストレスを発散している人が多いのではないか」と話していました。

また、数か月前から宝くじをよく買うようになったという男性は「毎回、日本円で80円くらいを遊びで買っているけど、あたればうれしい。多くの人が仕事で疲れているから宝くじにちょっとした希望を託しているのではないか」と話していました。

焼き肉店 売り上げが伸びず

中国では「ゼロコロナ」政策の終了後、飲食などのサービス消費が景気回復の原動力となりましたが、その勢いにもかげりが見え始めています。

内陸部の四川省成都で3年前に開業した焼き肉店では、コロナ禍で多いときには1か月間で130万円以上の赤字を出すなど、苦しい経営が続きました。

ことしに入り「ゼロコロナ」政策の終了で売り上げが急上昇し、景気回復に大きな期待を寄せていましたが、その後は売り上げが伸びず利益があがらない状態が続いていて、店を経営する濱谷東志さんは「3月から6月は大変苦しく、正直、コロナ期間中と変わりない印象だ」と話しています。

店では値段の高いメニューを安くしたり、調理スタッフが皿洗いも兼ねるなどして従業員を6人から4人に減らしたりして、赤字にならないよう工夫しているということです。

濱谷さんはコロナ禍を経験した中国の消費者の節約志向が強まっていると感じていて、当初計画していた新しい店舗の開設についても再検討せざるをえないということです。

店を訪れた家族連れからは「消費を節約している。コロナ禍で収入が少なくなり貯蓄に回したほうがいいと思っている」といった声が聞かれました。

濱谷さんは「『値段が高いね』と言うお客さんがずいぶん多い。今は安くておいしい料理を、おなかいっぱい食べていただく方向に、かじを切らなければいけない時期かもしれないと思って対策を取っている」と話しています。