新型コロナ「定点把握」全国の感染状況データ 初の発表 厚労省

新型コロナの「5類」移行に伴い、厚生労働省は、指定した医療機関からの「定点把握」による全国の感染状況を初めて発表しました。
5月14日までの1週間の1医療機関当たりの平均の患者数は2.63人で、前の週の1.46倍に増加していて、厚生労働省は「4月以降、緩やかな増加傾向が続いている」としています。

全国約5000の医療機関からの週1回の報告

新型コロナの感染症法上の位置づけが「5類」に移行したことに伴い、厚生労働省は流行状況の把握方法をすべての感染者の報告を求める「全数把握」から、指定した全国およそ5000の医療機関からの週1回の報告をもとにした「定点把握」に変更しました。

1医療機関当たりの平均患者数2.63人 前週比1.46倍増

19日は「定点把握」による全国の感染状況が初めて公表され、5月14日までの1週間に報告があった患者数は合わせて1万2922人でした。

また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は2.63人でした。
厚生労働省は、感染の推移を分析するため、去年10月から5月7日までの週ごとの感染者数についても「定点把握」で集計し直していて、それによりますと、前の週と比べて1.46倍の増加となりました。

前の週より増加するのは6週連続で、厚生労働省は「比較的、低い水準ではあるが、4月以降、緩やかな増加傾向が続いている。大型連休の影響もあるので今後の推移を注視したい」としています。
都道府県別では多い順に
▽沖縄県が6.07人
▽石川県が4.90人
▽北海道が4.36人
▽新潟県が4.30人
▽山梨県が4.22人などとなっていて
40の都道府県で前の週より増加しています。

「新規入院者数」の発表 新たに始める

厚生労働省は「定点把握」への移行に合わせ、流行状況を継続的に把握する指標の一つとして「新規入院者数」の発表を新たに始めました。

5月14日までの1週間に新たに入院した人は全国で2330人で、前の週と比べて55人の減少とほぼ横ばいとなり、厚生労働省は入院が必要な人が急増するような流行状況ではないとしています。

医療ひっ迫の指標は

厚生労働省は新型コロナによる医療のひっ迫状況を把握するため、感染症法上の位置づけが「5類」に移行する前から毎週、「入院者数」と「重症者数」を発表しています。

それによりますと、17日の時点では新型コロナに感染して入院している人「入院者数」は、全国で4512人でした。

5類移行後の先週10日の時点からは63人増え、6週連続で前の週より増加となっています。

また、確保病床の使用率は、都道府県別では
▼沖縄県が最も高く19%(-6%)
▼富山県が16%(+2%)
▼宮城県が15%(+1%)などとなっています。

一方で、集中治療室での治療や人工呼吸器が必要な「重症者」は97人で、先週10日の時点と比べると2人減っています。

「定点把握」でどの程度の流行状況の把握が可能か

「定点把握」は、患者数の増減の傾向と水準を把握するために、指定した医療機関の状況を継続的に監視していく方法で、新型コロナウイルスについては、都道府県が指定した全国およそ5000の医療機関が、週に1回報告を行います。

厚生労働省は「定点把握」で、どの程度の流行状況の把握が可能かを検証するため、これまで行ってきた「全数把握」の感染者数と、同じ期間中に「定点把握」で指定した医療機関から報告された患者数をもとに、全国の総数を推計したデータを比較しました。

対象としたのは、いわゆる「第8波」で感染が広がった去年10月から5類に移行する前日の5月7日までの期間で、統計上の差のばらつきの幅が目安とする10%以内の差であれば許容される範囲だということです。

その結果、統計上の差のばらつきの幅は2.5%で、厚生労働省は全国でも都道府県でも許容される範囲だとしています。

そのうえで、比較の対象とした期間について「定点把握」を行うおよそ5000の医療機関での1週間ごとの1医療機関当たりの患者数を集計し直して、参考として公表し、前の週と比較して傾向を分析できるようにしています。

注意報や警報などの基準 データ蓄積ないため当面作れず

一方で、同じように「定点把握」を行っている季節性インフルエンザでは「注意報」や「警報」などの流行状況の基準を設けていますが、新型コロナについてはデータの蓄積がないため当面は基準を作れないとしています。

このため、流行状況を継続的に把握する指標の一つとして、新たに「新規入院者数」の発表を始めました。

厚生労働省は今後「定点把握」による1医療機関当たりの患者数や「新規入院者」に加え、これまでも発表していた「入院者」や「重症者」の数の推移もみながら、流行や医療ひっ迫の状況を把握していくということです。

鈴木感染症疫学センター長「トレンドやレベルを見ることが重要」

新型コロナの感染状況の分析にあたった国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は、「定点把握は、これまでの全数把握とはコンセプトが異なる。全体として感染者数が増えているのか減っているのかという『トレンド』や、以前の感染拡大時と比べた『レベル』を見ることが重要なポイントだ。今の状況はことし4月以降、緩やかに増加傾向が続く中で、さらに増加しているので拡大局面にはあるが、それほど大規模な流行ではないとも言える」と話しています。

そして、「対策は、個人個人の判断が基本となる。感染状況が拡大傾向になり、過去と比べても高いレベルになった時には、重症化リスクが高い高齢者や合併症のある人は、混雑する場所を避けたり、マスクを着用したりといった予防策をとった方がいいし、適切なタイミングでワクチンを接種する必要があると思う」と述べました。

国立三重病院 谷口院長「インフルエンザで考えると流行初期」

感染症に詳しい国立三重病院の谷口清州院長は、「患者数は増加しつつあり、今後も増加していくだろうと考えられる。インフルエンザに当てはめて考えると流行初期で、これから感染が広がる時期にあたる。重症化リスクの高い人は注意する必要がある」と述べました。

そのうえで、定点把握のデータを読み解く際の注意点として、「たとえば、定点あたり『2』というのは、1週間に1つの医療機関で2人の患者を新型コロナだと診断したことを示している。ある程度の症状が出た人が医療機関を受診し、その中で検査が行われて陽性になった数だ。軽症者は受診しないだろうし、診断されていない感染者がいる可能性がある。数値が上がっていくのか下がっていくのか、急激に上がるのかといった『トレンド』を把握することや、過去の状況との比較、入院者数の推移なども考えることが大切だ」と指摘しました。