なぜ?世界で深刻化する水不足

なぜ?世界で深刻化する水不足
ことし11月、エジプトで開かれた気候変動対策の国連会議「COP27」。
主要なテーマのひとつが「水」でした。いま世界各地で干ばつが深刻になっていて、気候変動の影響が指摘されています。そして、水不足の地域が増えれば、その影響は、日本にも及ぶ可能性があるんです。

世界で相次ぐ異常気象

記録的な猛暑や干ばつに、大雨による洪水。世界各地では極端な気象現象が起きていて、気候変動の影響が指摘されています。
いまや地球規模の課題となっている気候変動。中学入試でも取り上げられているほどです。そのひとつを見てみましょう。

異常気象が偏り被害が深刻化

なかでも注目したいのが、渇水や洪水です。
ことし、ヨーロッパでは「過去500年で最悪」ともされる干ばつに見舞われました。
一方、パキスタンでは「国土の3分の1が水没した」ともいわれる洪水が発生しました。
UNDRR=国連防災機関によりますと、この20年とその前の20年を比較した場合、干ばつは1.29倍洪水は2.34倍も増えています。とりわけ干ばつに見舞われた地域では、大地はひび割れ、ダムが干上がるなど、深刻な水不足も起きています。
何が起きているのか、水と気候変動に詳しい東京大学大学院教授の沖大幹さんに話を聞きました。
沖教授
「水は、ある国とない国、多い時期と少ない時期と偏って存在しているので、たくさんあるように見えても、実際に使える水が足りなくなるような季節や場所があるということになります。雨の降り方が気候変動の影響などによって変化すると、強く降るところと、今までになく乾燥したところが出て、うまく対処できないということで、問題が生じつつあります」
つまり、異常気象が起きる地域が偏ることで、被害は深刻化しやすいのです。

“水不足で争いに”

人口の増加も水不足に拍車をかけています。
ことし11月、国連は世界の人口が80億に到達したと発表しました。WMO=世界気象機関が去年公表した予測では、地球温暖化や人口増加などによって2050年までに世界で50億人、2人に1人が水不足の状態に陥るといいます。
沖教授
「人口が増えて、しかも増えている人口がどんどん豊かになると、私たち一人一人が使う水の量が増えるので、十分に供給できなくて水不足が生じる事態になりつつあります。水があるかないかというのは、いざとなると、自分たちの食べる食料を作る、生死をかけた問題なので、非常に深刻な争いに発展します」
暴力をともなう争いが起きたとみられる国もあります。中東のイラクです。
干ばつで国土の6割が乾燥し、700万の人々の暮らしが脅かされています。
数年前には、水不足が深刻化した地域で、武装した人々による銃撃戦が起きました。農業用水などをめぐる部族どうしの対立から発展したものとみられています。

水不足 影響は日本にも

水不足は干ばつに見舞われている地域だけの問題ではありません。農業生産が落ちる地域が増えれば、その影響は日本にも及ぶことになると、沖先生は指摘します。
沖教授
「日本はたくさんの食料を輸入していますが、その食料を作ってくれている地域、特に小麦やトウモロコシなどを作っている地域で干ばつで不作になると、私たちの暮らしに影響が出てしまいます。その不作の理由として、気候変動による異常気象が危険性として考えられるわけです」

水不足どう防ぐ?

では、水不足を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
沖教授
「水の供給を安定させることと、需要を減らすことです。この2つを技術と社会の仕組みとして取り入れていくことではないかと思います。社会がぜい弱な国では、豪雨の影響も水不足の影響も受けやすいんです。日本はなんだかんだ言って社会がしっかりしていて、同じような豪雨や干ばつに対しても、対応ができるような社会をつくってきたと思います。その経験や知恵、技術を、いま水で困っている地域の人たちに教え、世界全体の水の安定に日本も貢献していくことが、自分たちにとっても利益になるのではないかと思います」。
さらに、沖さんは、世界の水の需要を減らすために、私たちが直接できることもあるといいます。
沖教授
「私たちが毎日食べているものを作るのに、飲む水の1,000倍にあたる2,000~3,000リットルが必要と推計されます。私たちが食べている食料は、半分以上が海外から来ているわけですが、それをむだにすることは、実は水をむだにすることと同じです。だから日本での食生活で食品ロスを出さないということも、実は世界の水を大事にすることと同じということになります」
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