解明!ネコのマタタビ反応

うっとりとした表情で、ゴロゴロと転がり、愛らしい姿を見せるネコ。山林に自生するつる性植物「マタタビ」を与えたときに見られる行動で、専門的には「マタタビ反応」と呼ばれます。この反応は何のために行われるのか、その理由が明らかになりました。
問題に挑戦!
まずは、ネコに関する入試問題です。

問題
次の中で、おっぱい(ちくび)の数が最も多いものを選びなさい。
1 ウシ
2 サル
3 ゾウ
4 ネコ
(慶応義塾中等部 2017年)
次の中で、おっぱい(ちくび)の数が最も多いものを選びなさい。
1 ウシ
2 サル
3 ゾウ
4 ネコ
(慶応義塾中等部 2017年)
正解はもちろんネコです。ネコのおっぱいは8つもあるんです。

そのほかの動物は、ウシが4つで、サルとゾウが2つです。ネコは平均で3~5匹の子ネコを産むので、その分、おっぱいもたくさん必要なんです。
マタタビ反応 定説は事実か?
ネコのマタタビ反応は、これまで、「マタタビの匂いで単に気持ちよくなって転がっているだけだ」と考えられていました。
この定説に、疑問を持った人がいました。
この定説に、疑問を持った人がいました。

岩手大学農学部教授の宮崎雅雄さんです。宮崎さんの研究グループは、マタタビ反応を詳しく研究するため、まず、反応を引き起こす、マタタビの成分の特定に取り組みました。
宮崎さん
「マタタビの中の成分を例えば10グループに分けて、ネコがどれに反応するかを調べ、反応したものをさらにグループに分けてまた反応を調べるという方法でどんどん絞り込んでいった」
「マタタビの中の成分を例えば10グループに分けて、ネコがどれに反応するかを調べ、反応したものをさらにグループに分けてまた反応を調べるという方法でどんどん絞り込んでいった」
発見!ネペタラクトール
研究の結果、1つの化学物質の存在が明らかになりました。
それが、「ネペタラクトール」です。マタタビからこの物質が見つかったのは、世界で初めてのことでした。
それが、「ネペタラクトール」です。マタタビからこの物質が見つかったのは、世界で初めてのことでした。

宮崎さん
「マタタビから見つけたネペタラクトールという物質に対し、ネコがコロコロと転がった。すごく強力なマタタビ反応を起こす力があることがわかった」
「マタタビから見つけたネペタラクトールという物質に対し、ネコがコロコロと転がった。すごく強力なマタタビ反応を起こす力があることがわかった」
宮崎さんたちは、このネペタラクトールを使って、実験を始めました。マタタビ反応が定説どおり、「匂いで単に気持ちよくなって転がっているだけ」なのかどうかを調べる実験です。
マタタビ反応 解明に挑む
実験では、まず、ネペタラクトールをしみこませた「ろ紙」を床の上ではなく、かごの天井に貼りつけました。そこにネコを入れてどのように反応するかを観察します。

定説が正しい場合、「天井からのネペタラクトールの匂いでネコは気持ちよくなってゴロゴロと転がる」と考えられます。
逆に定説が間違っている場合、「天井からのネペタラクトールの匂いをかいでも、ゴロゴロと転がることはない」と考えたのです。
逆に定説が間違っている場合、「天井からのネペタラクトールの匂いをかいでも、ゴロゴロと転がることはない」と考えたのです。

実験を開始したところ、ネコは、かごをよじ登り、天井に貼り付けた「ろ紙」に鼻先を近づけて、匂いをかぎ始めましたが、その後、時間が経過してもゴロゴロと転がることはありませんでした。

ただ、熱心に、ネペタラクトールをしみこませた「ろ紙」に顔や首など体をこすりつけ続けました。
マタタビ反応 判明した理由とは
この実験で、マタタビ反応とは「匂いで単に気持ちよくなってゴロゴロと転がる反応」ではなく、「ネペタラクトールを体に付けようと、こすりつける反応だ」ということが示唆されました。
宮崎さん
「ひたすら体をこすりつけていたので、マタタビ反応でいちばん重要なのは、実は、『こすりつけること』だとわかってきた。なぜ、こすりつけるのか、ネペタラクトールになにか機能があるのではないかと思い、いろいろ調べたところ、ネペタラクトールを体に付着させたネコには蚊が寄ってこなくなることがわかった」
「ひたすら体をこすりつけていたので、マタタビ反応でいちばん重要なのは、実は、『こすりつけること』だとわかってきた。なぜ、こすりつけるのか、ネペタラクトールになにか機能があるのではないかと思い、いろいろ調べたところ、ネペタラクトールを体に付着させたネコには蚊が寄ってこなくなることがわかった」

蚊がたくさん入った箱にマタタビの葉を入れた実験です。時間とともに、蚊はマタタビを避け、箱の外へと移動しました。これは、マタタビに含まれる、ネペタラクトールの効果だといいます。

ネコにとって、蚊は血液を吸うだけでなく、寄生虫や病原体などの病気を運んでくるやっかいな存在です。それを避けるために、ネコはマタタビを利用しているのではないかと宮崎さんたちは考えています。
宮崎さん
「ネコ科動物は蚊の多い茂みに潜んで狩りをする性質があることを考えれば、マタタビ反応は、必要不可欠な本能なのではないか」
「ネコ科動物は蚊の多い茂みに潜んで狩りをする性質があることを考えれば、マタタビ反応は、必要不可欠な本能なのではないか」
宮崎さんたち研究グループによってマタタビから見つかったネペタラクトール。
蚊が寄って来なくなると聞き、「虫よけ」として使えるのではないかと質問してみました。
宮崎さんは、「蚊に刺されなくなるのは事実でしょう」としながらも、「ただ、副作用でたくさんのネコが寄って来ちゃいますね」と笑顔で答えてくれました。
蚊が寄って来なくなると聞き、「虫よけ」として使えるのではないかと質問してみました。
宮崎さんは、「蚊に刺されなくなるのは事実でしょう」としながらも、「ただ、副作用でたくさんのネコが寄って来ちゃいますね」と笑顔で答えてくれました。

ちなみにネコの生態を研究している宮崎さんは自宅では5匹の犬を飼う、愛犬家でもあるそうです。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を鎌倉キャスターと考えていきましょう。
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