ブラックホール研究 最前線

ブラックホール研究 最前線
「天の川」を見たことがありますか?
よく晴れた、月の無い暗い夜に空を見上げ、徐々に目が慣れてくると、ぼーっと淡い光の帯が見えてきます。
今回は、その天の川に潜む謎の天体、「ブラックホール」に迫ります。

中学入試でも出題

そもそも、天の川とは何なのか。そして、なぜ川のように見えるか知っていますか?
中学入試でも天の川について出題されています。
問題
天の川は、銀河系の中心部を見たものですが、なぜ全天を横切る川のように見えるのでしょうか。
(頌栄女子学院中学校 2020年 改題)
問題文の中に出てくる「銀河系」についても説明を加えながら、答えを見ていきます。

「銀河系」は、数千億個もの恒星などの天体の集合体です。
円盤状の平べったい形で中心部にはたくさんの星が密集し、明るく輝いています。
私たちの住む地球も銀河系の中にあり、中心部から離れた、端のほうに位置しています。
実は、銀河系の中心部こそが天の川の正体です。
地球のある銀河系の端から明るく輝く中心部を見ると、銀河系の平べったい形ゆえに、空に細い川が流れているように見えるのです。
ということで、問題の答えは「星が密集している銀河系の中心部分を、銀河系の内部から見ているから」となります。

ブラックホールの「輪郭」撮影成功!

銀河系の中心部には星が密集し、明るく輝いていますので、意外に思われるかも知れませんが、その真ん中には、SF映画や小説にも登場する謎の天体、「ブラックホール」があります。

2022年5月、天文学の国際研究グループが、銀河系の中心部にあるブラックホールの「輪郭」の撮影に成功したと発表しました。
公開された画像にはオレンジ色をしたドーナツ状の輪が写し出されています。

研究グループによりますと、輪の内側の部分がブラックホールの輪郭で、オレンジ色の部分は、周辺に漂う高温のガスから発せられた光などが写ったものだということです。

しかし、なぜ「輪郭」を撮影したのでしょうか。

直接見ることができないブラックホール

ブラックホールの輪郭を撮影した国際研究グループのメンバーに話を聞きました。
国立天文台水沢VLBI観測所の教授、本間希樹さんです。
本間さん
「ドーナツ状の輪の穴のところにブラックホールが隠れているというのが正しい言い方です。ブラックホールは物質でも光でも何でも吸い込んでしまい、吸い込んだものは絶対に外に出さない天体です。このため、真っ暗にしか見えず、ブラックホールは直接見ることができない天体なんです」
つまり、本間さんたちは、ブラックホール周辺に漂うガスから発せられた光などを捉えることで、本来は見えないブラックホールの輪郭を撮影したのです。
本間さん
「撮影の成功によって、ブラックホールが確実に存在するということが間違いなくなったと言えます」

予言から始まったブラックホールの研究

ブラックホールの研究が始まったのは100年余り前からです。
有名な物理学者、アインシュタインが発表した「一般相対性理論」を元に、ブラックホールの存在が予言されたことが発端でした。
その後、観測機器の発達に伴い、理論上だけではなく、実際に観測を通してブラックホールの存在は証明されるようになりました。

しかし、ブラックホールを見ることは長いあいだできませんでした。

光を発しないことに加え、あまりに遠い場所にあるため、地球からの見た目が小さすぎたのです。

国際協力で撮影を可能に

天体を観測する望遠鏡の1つに電波望遠鏡があります。
天体が発するかすかな電波を観測し、可視化することができます。
しかし、その高性能な電波望遠鏡でも1つだけでは、ブラックホールの観測には不十分。

そこで研究グループは、チリ、ハワイ、南極、アリゾナ、スペイン、メキシコにある、合わせて6か所の電波望遠鏡をつなぐことで、地球サイズの超巨大望遠鏡の性能を実現したのです。

本間さんたちは、6か所の電波望遠鏡から得られる膨大なデータをもとに画像を作り出すプログラムを独自に開発し、撮影を成功に導きました。
本間さん
「撮影に成功した瞬間は、みんなで『やった』と喜び合い、本当にうれしかったですね。その日はおいしいお酒を飲みました」

ブラックホール研究その意義とは

初めて目にすることがかなった銀河系のブラックホールの姿。
本間さんは、ブラックホールの研究は、私たち人類を含め、宇宙の歴史を知ることにつながる可能性があると話します。
本間さん
「宇宙の始めに銀河ができるときに、最初のブラックホールがいわば“タネ”になって、周りのガスなどを集めて何らかの役割を果たしたんじゃないかと考えている人もいます。そのあと銀河系ができて、太陽や地球ができて、生命が誕生したという流れです。ブラックホールは、そういう流れの中で、ある一時期、重要な役割を果たしたかもしれません。そういう意味では、人類の存在にも間接的に関わってくる、そういう天体だと言ってもいいかもしれません」
本間さんによりますと、ブラックホールは、「ホール」と言う名前がついているものの、「穴」ではなく「球体」だということです。

ただ、仮に手を伸ばしたとしても、空間が球体になっているために触ることはできないということでした。
どうでしょう、想像できますか?

まだまだ謎の多いブラックホール。
その全容が解明される日がいつの日か来るのでしょうか。
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