鳥もことばを話していた!?

鳥もことばを話していた!?
ふだん、何気なく聞こえてくる鳥の鳴き声。実は意味のある会話かもしれません。
日本各地で見られる野鳥のひとつ、シジュウカラが、私たち人間と同じように、ことばを操って話していることが分かってきています。シジュウカラはどんなことを話しているのか、そのことばの謎に迫ります。

中学入試でも出題

そもそも、シジュウカラとはどんな鳥か知っていますか?
森や林のほか、都市部でも広く見られる身近な鳥で、その姿は中学入試でも問われています。
その入試問題です。
複数の鳥の画像から、シジュウカラを選ぶこの問題。
正解は、イです。
白い頬と、胸からおなかにかけたネクタイ模様が特徴です。

操る単語は20以上

このシジュウカラについて、17年にわたり研究をしている人がいます。
京都大学の研究者、鈴木俊貴さんです。
鈴木さん
「森の中に80個、巣箱を仕掛けていて、巣箱を利用して繁殖している親鳥の行動やどういう鳴き声を使って会話しているのかを調べています」
実は鈴木さん、シジュウカラの鳴き声がことばになっていることを初めて突き止めた人なのです。
その研究成果は、中学の教科書にも載るほどで、世界中から注目を浴びています。

では、どうやってシジュウカラがことばを話していることに気付いたのでしょうか?
鈴木さん
「森の中の餌台に4、5羽のシジュウカラが群れていて、そのうちの1羽がある時『ヒーヒーヒーヒー』と聞こえる声を出したんです。そうすると周りのシジュウカラがみんなでバッと一斉にやぶに逃げて、その1秒後ぐらいに『ハイタカ』という天敵がサッと餌台にやってきました。もしかしたら、タカが来たことを仲間に知らせているのかなと思って、いろいろ調べるようになりました」
鈴木さんは森の中にタカの剥製を置いて、シジュウカラの行動を観察するなどの実験を重ね、「ヒーヒー」は「タカ」を意味すると特定しました。
ほかにも、「ヘビ」は「ジャージャー」、「集まれ」と仲間に呼びかけるときは「ヂヂヂヂ」と鳴くなど、これまでの研究で、シジュウカラは全部で20以上の単語を操っていることが分かっています。

“ことば”にはルールがあった

研究を進めていくと、鈴木さんはさらに驚くべき発見をしました。
問題
鈴木さんの発見とはいったい何でしょうか?

A 身振りを加えて話す
B 文を作って話す
C 互いに名前を付けて呼び合う
正解はB。
シジュウカラは単語を話すだけでなく、文を作ることもできることが分かってきたのです。
鈴木さんが森の中にシジュウカラの天敵、モズの剥製を置いてみたところ、シジュウカラが近づいてきました。
そして「ピーツピ ヂヂヂヂ」と鳴きました。
これは「警戒」という意味の「ピーツピ」と、「集まれ」の「ヂヂヂヂ」を組み合わせた「警戒しながら集まれ」という意味です。
数で対抗してモズを追い払うための号令なのです。
では、「ピーツピ」と「ヂヂヂヂ」の順番を逆にすると、どうなるのでしょうか?
鈴木さん
「録音した音声を逆転させて聞かせてみる実験をしましたが、それを聞いたシジュウカラは警戒もほとんどしないし、集まっても来ませんでした。通じていないということですね」
つまり、きちんとした文法のルールを使って会話をしているのです。
単語を組み合わせることで、200パターン以上の文を作ることができるといいます。
人間以外の動物が文法を使って情報を伝え合っていることを証明したのは、世界で初めてです。
鈴木さん
「まだまだ解読しきれていないような鳴き声の組み合わせもたくさんあるので、僕が一生かかっても解読し終わるかなというくらい複雑なことをしゃべっています」

ヒナが“ことば”を覚える方法

さらに、親鳥がヒナにことばを教えていることも分かっています。
ヒナが天敵のヘビを見ていると、親鳥がやってきて、ヘビを意味する「ジャージャー」と鳴くのが確認できました。
するとそれを見たヒナも、親鳥のまねをして「ジャージャー」と鳴いたのです。
このように、わざとヘビに近づかせ、ヒナにことばを教えているのだといいます。
鈴木さん
「ことばが分かると、彼らが本当にいろいろ豊かな思考の中で、試行錯誤しながら生きているということが分かってくるんですよね。そういった世界は、東京都内とか身の回りの自然の中で広がっているんです。そういう世界に気付けるということは、大事なんじゃないかなと僕は思います」
鈴木さんの研究によりますと、シジュウカラのことばは、ほかの動物にも通じているのです。
例えば、シジュウカラが「ヒーヒー(タカだ!)」と鳴くと、近くのリスが逃げ出すそうです。
生きるために鳥のことばを学習していると考えられています。
そこで、鈴木さんはいま「動物言語学」という新しい学問を作ろうとしています。
世界中の研究者でさまざまな動物のことばを解明するための仕組み作りをしていきたいということです。
いずれ動物の会話から、私たち人間にとっても生きるうえで大切なことが分かる日もくるかもしれませんね。
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