【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(5月16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

スウェーデン NATO加盟申請を正式決定

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてNATO=北大西洋条約機構への加盟の申請を検討していた北欧のスウェーデンは16日、NATOへの加盟を申請することを正式に決定しました。
スウェーデンは、およそ200年にわたって、軍事的に中立の立場を続けてきただけに、政策の大きな転換となります。
NATOへの加盟をめぐっては、隣国フィンランドも申請することを15日、明らかにしたばかりです。
両国は、加盟の申請をそろって行いたいとしていて、近く正式に申請するものと見られます。

英国防省 “ベラルーシ軍 ウクライナ国境に部隊展開を発表”

イギリス国防省は16日、最新の戦況分析を公表し、ロシアの同盟国ベラルーシが軍の特殊作戦部隊をウクライナとの国境沿いに展開させることなどを発表したと明らかにしました。

そのうえで「国境近くでのベラルーシ軍の存在によってウクライナ軍の部隊は足止めされ、東部ドンバス地域での作戦支援のために展開することが難しくなる可能性が高い」と分析しています。

一方、ベラルーシ領内はロシア軍が当初、ウクライナの首都キーウなどに侵攻する際の中継地点や、空爆やミサイル攻撃の拠点として使われたものの、「ベラルーシ軍はこれまで戦闘に直接関与はしていない」という見方を示しています。

これについてイギリス国防省は、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアの軍事侵攻への支持と欧米の制裁やウクライナ側の報復といったリスクを伴う直接的な軍事参加は避けたいという思惑とのバランスをとっていると見られるとしています。

プーチン大統領 “NATO拡大に対抗”

ロシアのプーチン大統領はCSTO=集団安全保障条約機構の首脳会議の中で、フィンランドとスウェーデンがNATO=北大西洋条約機構の加盟に向けた手続きを本格化させていることについて「NATOの拡大は、アメリカの外交的な利益のために行われている。アメリカは、NATOを外交政策の道具としてきわめて攻撃的に利用している」と述べました。
そのうえで「フィンランドとスウェーデンによる拡大は、われわれにとって直接的な脅威ではない。しかし、両国の領土で軍事的なインフラが拡大する事態になれば、確実にわれわれは対応するだろう」と述べ、対抗する構えを示しました。
また「ウクライナでの軍事作戦では、生物兵器の開発が国境のすぐ近くで行われていたという証拠が得られた」と述べ、アメリカの支援によってウクライナが生物兵器を開発していたと一方的に主張しました。

ロシアが主導する軍事同盟 CSTOの首脳会議 モスクワで始まる

ロシアが主導する軍事同盟のCSTO=集団安全保障条約機構は、条約が初めて調印されてからことしで30年となり、これにあわせた首脳会議が16日、ロシアの首都モスクワで始まりました。

会議には、ロシアをはじめ、旧ソビエトのベラルーシ、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、それにアルメニアの、6か国の首脳が全員出席しています。
CSTOの首脳会議が開かれるのは、ことし2月、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから初めてで、ウクライナ情勢についても話し合われる見通しです。

ロシアに対する欧米の制裁が強まり、国際社会で孤立を深めるなか、プーチン大統領としては、加盟国の結束をアピールし、欧米をけん制する狙いがあるとみられます。

UNHCR ウクライナから国外避難 約622万人に(15日時点)

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシアの軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、15日の時点でおよそ622万人に上っています。
主な避難先は、
▽ポーランドがおよそ335万人、
▽ルーマニアがおよそ91万人、
▽ハンガリーがおよそ60万人、
▽モルドバがおよそ46万人などとなっています。
また、
▽ロシアに避難した人はおよそ83万人となっています。

ロシア大統領府報道官 「深刻な問題」

ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受けて北欧のフィンランドに続きスウェーデンもNATO=北大西洋条約機構の加盟に向けて手続きを本格化させる見通しとなったことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は16日、「フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟することで、われわれの大陸の安全保障が強化され、より良くなるとは考えていない」と述べました。

そのうえで「これは深刻な問題であり、われわれの関心事でもある。両国のNATO加盟が、安全保障の観点から現実的にどのような影響があるか注視していく」と述べ、今後の両国の動向を注視する考えを示しました。

仏の自動車大手ルノー ロシア事業から全面撤退すること明らかに

発表によりますと、ルノーはモスクワ工場を運営するロシアの現地法人の株式のすべてをモスクワ市に譲渡するとしています。
また、グループの傘下にあるロシアの自動車メーカー「アフトワズ」の株式を現地の自動車研究所に譲渡するとしています。
ルノーはことし3月、ウクライナのゼレンスキー大統領から名指しでロシアからの撤退を求められたあと、モスクワ工場の操業を停止しましたが、これでロシア事業から全面撤退することになります。
ロシア撤退の損失はおよそ22億ユーロ、日本円にしておよそ2950億円に上るということです。

中国外務省「対話と交渉で枠組みの構築を」

北欧のフィンランドとスウェーデンがNATO=北大西洋条約機構への加盟に向けた動きを進めていることについて、中国外務省の趙立堅報道官は16日の記者会見で「関係各国が、互いの正当な懸念を尊重するという前提に立ち、対話と交渉を通じて、有効かつ持続可能な地域の安全保障の枠組みを構築することを願う」と述べ、NATOの東方拡大に反対してきたロシア側の立場にも配慮すべきだという姿勢を示しました。

ウクライナへの円借款の調印式

日本政府は、ウクライナ政府に復興や経済対策の財源などとして3億ドル、日本円で390億円規模の借款を行うことを表明していて、JICAは日本側の窓口となります。
16日は、東京・千代田区のJICA本部とウクライナの首都キーウをオンラインでつないで調印式が行われ、JICAの田中明彦理事長とウクライナのマルチェンコ財務相が契約書にサインしました。
田中理事長は「この侵略と人道上の危機は、民主主義の価値観を共有する国際秩序に対する今世紀最大の挑戦だ。この脅威に断固として立ち向かわなければならない」と述べ、支援の意義を強調しました。
これに対し、マルチェンコ財務相は「私たちの歴史にとって重要なこの時期に、日本は経済や軍事などあらゆる分野でウクライナを支援してくれている」と感謝の意を示しました。
JICAによりますと、日本からの借款のうち、まずおよそ1億ドルが今月中にもウクライナ側に送金される予定で、日本政府は、残りの借款についても早い時期に行う方針です。

ウクライナの国民的歌手 チーナ・カーロリさんが岸田首相と面会

ウクライナの国民的歌手として知られるチーナ・カーロリさんが岸田総理大臣と面会し、日本の人道支援に謝意を伝えるとともに、今後の支援に期待を示しました。
チーナ・カーロリさんは、2017年にウクライナ国民を代表するアーティストに選ばれ、2020年にはゼレンスキー大統領から勲章を授与されました。
日本企業の招きで日本を訪れているカーロリさんは16日、総理大臣官邸で岸田総理大臣と面会し「ウクライナは、自由を選んだことによって攻撃され、ロシアは私たちの平和な街を破壊している。私たちは世界の平和のためにたたかっている」と述べました。また、日本の人道支援に謝意を伝えるとともに、今後の支援に期待を示しました。
岸田総理大臣は「歌手活動を通じて平和のために尽力されているカーロリさんに心から敬意を表したい。力による一方的な現状変更は許さないという思いで、わがこととして、しっかり受けとめ、ウクライナの皆さんとともに努力を続けたい」と述べました。
面会のあとカーロリさんは記者団に対し「ウクライナのことを決して忘れないでほしいと支援をお願いした。岸田総理大臣からは『これからもずっとウクライナを支援し続ける』という大事なメッセージがあった」と述べました。

マリウポリ市長顧問「占領者は焼い弾か白リン弾を使用」

ウクライナ東部マリウポリの市長の顧問を務めるアンドリュシェンコ氏は、15日、SNSのテレグラムに投稿し「占領者たちはマリウポリの防衛隊に対して、きのう初めて焼い弾もしくは白リン弾を使用した。燃焼温度はおよそ2000度から2500度となり、消し止めるのはほぼ不可能だ。地獄が地上に降りてきた」と指摘しました。
コメントとともに投稿された映像では、上空からマリウポリの製鉄所とみられる建物に向かって無数の物体が雨のように降り注ぎ、地上に近づくと爆発音とともに光を放つ様子が確認できます。

スウェーデン与党 NATOへの加盟申請支持を決定

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、北欧スウェーデンの与党社会民主労働党は15日、これまでの方針を転換し、NATO=北大西洋条約機構への加盟申請を支持することを決めました。
このあとアンデション首相は記者会見を開き「スウェーデンの安全保障にとって私たちがNATOに加盟することが最善だと信じている」と述べ、16日に議会の審議を経て、その後、政府として正式に方針を決定するという見通しを示しました。

ゼレンスキー大統領「占領者たちに現実を理解させる時が来る」

ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、新たに動画を公開し「私たちはロシアがドンバスでの攻撃やウクライナ南部での動きを強化しようとする新しい試みに備えている。占領者たちは自分たちが行き詰まり、いわゆる”特別軍事作戦”がすでに失敗していることをいまだに認めようとしない。しかし、ウクライナの国民が占領者たちに現実を理解させる時が必ず来るだろう」と述べ、徹底抗戦する姿勢を示しました。

NATO事務総長「ロシアの計画どおりに進んでいない」

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は15日、外相会議のあとの記者会見で、ウクライナ東部の戦況について「ロシアの計画どおりには進んでいない。ロシア軍はハルキウ周辺から退却しつつあるし、ドンバスでの大規模な攻撃は勢いを失っている」と述べました。そして「ウクライナはこの戦争に勝つことができる。ウクライナの人々は勇敢に祖国を守っている」と述べ、引き続きウクライナへの軍事支援を強化していく考えを示しました。

NATO 北欧2か国加盟申請の動き“全加盟国の同意得ること可能”

NATO=北大西洋条約機構はドイツで外相会議を開き、フィンランドとスウェーデンの加盟申請に向けた動きについて協議しました。
一方、トルコのチャウシュオール外相は15日、会議後の会見で、テロ組織に指定しているクルド人武装組織のメンバーがスウェーデンとフィンランドで活動していることを批判したうえで「両国はテロ組織への支援をやめなくてはならない。これは同盟を組むための条件だ」と述べました。
このため、会議のあと会見したストルテンベルグ事務総長はトルコとの協議を続けるとしたうえで「トルコは加盟を阻止する意図はないと明言した。加盟手続きに遅れが出ないようトルコが示した懸念に対処することができると確信している」と述べ、加盟に必要な、30か国すべての同意を得ることは可能だという認識を示しました。

ウクライナ軍“川を渡ろうとした戦車など70台以上破壊”

ウクライナ軍は13日、SNSへの投稿で、ウクライナ東部を流れる川を渡ろうとしていたロシア軍の戦車や装甲車など70台以上を破壊することに成功したと主張しました。軍事支援を続けるアメリカから供与されたりゅう弾砲による成果だとしていて、ウクライナ軍は「極めて精密で、高性能で、効果的な兵器だ。すでに前線で占領軍を打ち砕いている」とその性能を高く評価しています。
ロシア軍はこうした支援物資は攻撃の標的になるとして欧米側を強くけん制していますが、14日までドイツで開かれていたG7=主要7か国の外相会合では、今後もウクライナへの軍事支援を継続する方針が確認されました。