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「郵便受けを勝手に開けられた」さらにフカボリしてみたら

ある日、家に帰ったら、郵便受けに荷物が。

「え、なんで、こんなに大きい荷物が入ったの?カギはかけたはずなのに…」

カギは、確かにかかっていました。
ではなぜ、荷物は入ったのか。
郵便局の配達員が、ダイヤルロックを開けて、荷物を入れたのです。
先月、私たちがこのニュースをお伝えしたあと、テレビを見た人、ネットの記事を見た人から、さまざまな情報や意見が寄せられました。

「私も同じような目に遭った」
「勝手にカギを開けるなんて、おかしい」
「再配達頼むの面倒。無理矢理でも入れて」
「配達員の苦労を考えるべきだ」

この問題、あなたは、どう考えますか?

(社会部記者 橋本尚樹)

“私もカギを開けられた”

先月の報道後、複数寄せられた「私もカギをかけた郵便受けを開けられた」という情報。

そのうちのいくつかを、ご紹介します。
「ダイヤルロック式の郵便受けですが、数回、入らないものが投函されていました。管轄の郵便局に電話したところ、『不適切な配達だった』とお詫びがありましたが、その後も入れられていました」(横浜市)

「報道のあと、どう考えても入らない郵便物が入っていて、『ニュースで見たのと同じことをされた』と思いました。全国に注意喚起されたのか疑問で、不信感を抱かざるを得ない」(福岡市)
情報を寄せた1人、東海地方に住む大石さん(仮名)が電話取材に応じてくれました。

大石さんが郵便受けを開けられる経験をしたのは、おととし2月のことです。この頃、新型コロナウイルスの国内での感染拡大が懸念され、マスクを手に入れるのが難しくなっていました。

そのため、親せきに、マスク1箱を送ってもらうことにしました。

大石さんに、マスクの箱と郵便受けを並べて、写真を撮ってもらいました。
どう考えても、差し入れ口から、マスクの箱は入りません。
しかも、カギをかけていた。
それなのに、マスクは、郵便受けの中に届けられていたのです。
大石さん
「うちの郵便受けもダイヤルロック式で、数字を合わせるダイヤルは、うちの敷地に入れないと回せないんです。勝手に敷地に入ったうえ、カギも開けて荷物を入れるなんて許せないと思いました」

なぜカギを開けた? 郵便局の説明は

大石さんは管轄する地元の郵便局に連絡。何度かやりとりを重ねた結果、2か月近くたって、郵便局長名の「顛末書」を受け取りました。

顛末書には、「発生原因」として、こう書かれています。
大石さんが受け取った顛末書
「敷地内に入り、鍵のかかっているダイヤルを解錠し、郵便物を投函いたしました。発生者(配達員)は、不在連絡票を入れる手間と、不在連絡票を入れたあとの再配達の手間を少しでもなくそうと思い、その行為を行いました」

「それと、管理者の周知徹底不足で、規則を遵守しなくてもかまわないと思わせてしまうような指導しかできていなかったことが原因です」
大石さん
「『このような行為は絶対にしないよう指導する』と言っていたのに、ニュースをみて、同じことがまだ行われていることを知って、憤りを感じました。日本郵便は『ほかに同様の事例を確認していない』と伝えられていましたが、間違いなく、私の事例があります」
大石さんの件について、日本郵便に確認したところ、私たちが取材するまで、本社には報告が上がっていなかったということです。
日本郵便は「改めて適切な投函を指導します」としています。

大事なのは“1回転以上”回すこと

カギは、どうして開いたのか。

日本郵便によると、配達員は「ダイヤルを2、3回ずらしたら開いた」と話したそうです。同じような被害を訴える人たちの郵便受けも、私たちが把握している限りでは、どれも、ダイヤルロック式でした。

そこで、いくつかのメーカーのダイヤルロック式の郵便受けの説明書を見てみると、こう書いているものがありました。
複数の説明書の記述をもとに作成したイメージ
「1回転以上回さないと、開く場合があります」

どういうことなのでしょうか。

多くのダイヤルロック式の郵便受けは、左右にダイヤルを回し、2つや3つの番号を合わせてカギを開けます。
そのあと、ダイヤルを回してカギをかけますが、この時、「1回転以上」回さないと、最後の番号を1つ合わせるだけで、カギが開いてしまう可能性があるのです。

そして、もう1つのポイントが、「最後に回した方向と同じ方向に回す」こと。
方向が逆だと、1回転以上回しても、2つ目や3つ目の番号を合わせるだけで開いてしまう場合があるようです。

SNSなどでは、「自分が開けるときにめんどくさいから、わざと数字1つだけで開くようにしている」という書き込みがよく見られますが、それはリスクのある行為です。

「施錠するときは、最後に回したのと同じ方向に、1周以上ダイヤルを回す」

郵便受けを勝手に開けられないためには、多少面倒でも、これを徹底することが大切なのです。

(ご自宅の郵便受けの施錠方法については、取扱説明書をご確認ください)

“無理矢理にでも入れてほしい”

一方、配達員の行為をそこまで非難するべきではないという意見もありました。

多少、強引な行為があったとしても、郵便受けに入れてほしい、入れてもらわないと困る、という人たちです。
「再配達の依頼が面倒で、無理矢理にでもポストに入れてもらうことで助かっている人は必ずいます。私も助かっています。鍵を開けられたくないなら、もっと大きいものにしたらいいし、通販で購入した製品をすぐに手に入れたいという方にとっては大迷惑です」

「再配達時間には帰宅できない私にとっては、ポストに押し込んでくれる配達員はとてもありがたい存在でした。今回の報道のせいで、今まで受け取れていた郵便物が受け取れなくなります。どうしてくれるんですか?本当に迷惑です。配達物を受け取るために夜9時までに帰宅するような暮らしはできないです」
どちらも匿名で、連絡先も書かれていなかったため、直接お話をうかがうことはできませんでした。

ただ、仕事の都合などで、なかなか自宅で荷物を受け取れないという人にとっては、再配達を頼んだり、受け取るために時間を調節したりするのが面倒なのは事実。
私も帰宅時間は遅い方なので、その気持ち、よく分かります。

「勝手にカギを開ける」のは、日本郵便自身が認めているように、決して適切な行為ではありませんが、ただ「悪事」として糾弾するだけでは、この問題の根本的な解決にはつながらない、そんな難しさを感じました。

“配達員も、大変なんです”

今回、私たちは現場の配達員にも話を聞きました。

都内の郵便局で30年以上、配達を担当している50代の男性です。
自身は、ダイヤルロックを勝手に開けて荷物は届けたことはないと言います。

しかし、「カギを開けてでも入れたくなる気持ちは分かる」とこぼしました。
都内の郵便配達員
「1件の配達の時間にかかる時間はとにかく減らしたい、というのが私たちの思いです。残業をするとコストが増えるので、上司からのプレッシャーもあり、昼休みもほとんどとらず、配達を続けることもあります。決して超えてはいけない一線ですが、正直言って、心理は理解できます」
オートロックや高層のマンションが増えたことで、インターホンを押して、階段やエレベーターを上がって、もう一度インターホンを押す、というように、1件の配達に時間がかかるようになっているといいます。

そのうえ、不在の場合は、不在連絡票をつくる手間もかかります。

利用者の利便性を考えても、簡単にカギが開くなら、入れてしまった方がいいと考えるのもしかたないと、この配達員は言います。
都内の郵便配達員
「ダイヤルロックを勝手に開けていけないというのは、年に何度か、郵便局内で周知されます。それでも無くならないのには、それなりの理由があるんです。ただ『やってはいけない』というだけでなく、なくすための対策をきちんと考えないといけないと思います」

郵便 もっと便利に使うには

「郵便受けのカギを勝手に開けられる」というこの問題。

立場によって捉え方は、さまざまでした。

でも、もっと快適に、そして便利に、荷物を送ったり、受け取ったりできるようになればいいという思いは、誰もが持っているはずです。

実際、駅や街中では、荷物を受け取れる会社共通のロッカーが増えています。

「置き配」を簡単に使えるようにしようという模索も続いています。

長引くコロナ禍でネット通販を利用する人が増えたことで、宅配への関心が高まったという方も少なくないと思います。

この問題、私たちはこれからも取材を続けていきます。

NHKの情報提供窓口「ニュースポスト」まで、情報をお寄せください。

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