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10月23日のニュース

福島第一原発 トリチウム含む水の処分めぐる意見を整理

  • 汚染水貯蔵タンク

東京電力福島第一原子力発電所で、たまり続けるトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐり、国の対策チームは、これまで寄せられた意見整理を行い、この中で梶山経済産業大臣は、廃炉を遅延させないため早期に処分方法を決定する考えを改めて示しました。

福島第一原発では、汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む水が増え続け、敷地内のタンクにはおよそ123万トンがたまり、扱いが課題となっています。

これについて専門家でつくる国の小委員会は、ことし2月、基準を下回る濃度に薄め、海か大気中に放出する方法が現実的だとする報告書をまとめ、政府は地元や関係団体などから意見を聞く会を7回、書面による意見募集を4か月にわたり実施してきました。

そして23日に、経済産業省など関係省庁でつくる廃炉・汚染水対策チームの会合で寄せられた意見の整理が行われました。

このうち書面では、1人が複数の意見を述べているものを含めて、
▽安全性への懸念がおよそ2700件
▽国民の合意が取れていないなど、合意プロセスへの懸念がおよそ1400件あったということです。

また、意見を聞く会では、海洋放出による風評被害への心配や、具体的対策を求める意見が多くあったということです。

会合で梶山経済産業大臣は「ご意見に対して何ができるか、検討を深める必要がある」と述べるとともに、廃炉を遅延させないため早期に処分方法を決定する考えを改めて示しました。

国の対策チームの意見整理 詳細

福島第一原発の汚染水を処理したあとのトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐって、政府は、方針の決定に向けてことし4月から地元の農林水産業者や全国の関係団体などから意見を聞く会を開くとともに、書面による意見募集を行ってきました。

意見を聞く会は7回にわたって開かれ、地元自治体や農林水産業者のほか流通や消費者の全国団体など29団体43人が参加してそれぞれ意見を述べました。

この中では、風評被害を懸念して海への放出に反対や慎重な意見が出されたほか、具体的な風評被害対策を示すよう求める声や、国民の理解が進んでいないなどの指摘が出されました。

書面による意見募集は、ことし4月から7月までのおよそ4か月間にわたって行われ、国内外からおよそ8500件の意見が寄せられました。

これらには1人が複数の意見を述べている場合も含まれています。

海洋放出を懸念するものが多く、
▽トリチウムそのものが心配とか薄めても総量は変わらないなど処理水の安全性を懸念する意見がおよそ2700件、
▽福島や漁業への風評被害や復興の遅れを懸念する意見がおよそ1000件、
▽国民の合意が取れていないとか国際社会から批判を受ける可能性があるなど合意プロセスへの懸念がおよそ1400件あったということです。

また、処分方法やトリチウムの分離技術の開発の提案もおよそ2000件と多く、モルタルで固めることも検討すべきとか、福島県外や敷地の外で保管すべきといった意見、それに、タンカーなどで沖合に放出すべきといった意見もありました。

このほか、
▽国民に正確な情報をわかりやすく発信すべきとか、
▽ほかの原発や他国でも放出されているといった意見、
▽政府や東京電力は信用できないといった意見もあったということです。

国は、こうした意見を聞く取り組みに加えて、福島県の内外の関係者や一般向けに数百回説明会や意見交換を行ってきたとしています。

対象には、福島県内のすべての市町村や沿岸部などの15の市町村議会、それに、福島県外の近隣自治体のほか、各国の大使館やIAEA=国際原子力機関なども含まれています。

梶山経済産業相「適切なタイミングで結論」

東京電力福島第一原子力発電所でたまり続けるトリチウムなどの放射性物質を含む水の処分をめぐり、国の対策チームが23日、会合を開いたことについて、梶山経済産業大臣は、閣議のあとの記者会見で「私から各省の出席者に対して、意見を真摯(しんし)に受け止め、処分方法や風評対策、国内外への丁寧な情報発信などの論点について、検討を深めるよう要請した」と述べました。

そのうえで「具体的な決定のタイミングを伝えられる段階にはないが、関係省庁でさらに検討を深め、適切なタイミングで、政府として責任をもって結論を出していきたい」と述べました。

さらに、梶山大臣は「処理水を処分する場合には、風評被害を受ける可能性のあるかたがたに寄り添い、国が前面に立って、風評払拭(ふっしょく)に取り組んでいく必要があると思っている」と述べ、国が前面に立って対策を進める考えを強調しました。

平沢復興相「風評対策が課題 全力で取り組む」

平沢復興大臣は閣議のあとの記者会見で「処分方法は国民の意見にしっかり配慮して決めてほしい。いかなる決定であるにせよ、風評対策が最大の課題になるので復興庁として全力で取り組んでいきたい」と述べました。

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