私は、「この懇談会のメンバーにどうか」と言われた時に、メンバーの方々のお名前を伺って、いわゆる新聞、放送、通信の業界から入っている人が私しかいないので、これは非常にむずかしい立場かな、冒頭申し上げたように、何か物言いが難しいこともあろうかという感じがいたしました。そういうことも踏まえて申し上げますが、私は、つい最近、現業から足を洗いました。 42 年間、マスメディアの世界におりましたが、報道と経営の両面から、NHKとは非常に至近距離におりまして、非常に悩んでおられる、苦しんでおられる、やっておられることを身近につぶさに見聞きしてまいりました。それだけに、昨年の夏以来起こったことについて、いろいろ思うところがございましたし、自分なりの意見も多少はございます。
その中で、ぜひ、基本で押さえておかなければいけないと思うのは、公共放送として、それを支える基盤が受信料である。その受信料で番組を作り、公共放送を支えていることは事実ですが、もう一つ、一番大きく支えているものがあって、それは受信料で成り立っているわけですから、時の政治とか圧力に左右されないで、国民の立場で必要なものを提供できるという「政治的中立性」です。このことは私もジャーナリズムの世界におりましたから、非常に重要なことで、そのことが徹底して行われることによって、国民が受けるメリット、利益というのは非常に大きいことを積極的に考えていいのではないか。
先程、笹森さんもおっしゃいましたが、英国で民営化の流れの中で、あの国が公共放送としてのBBCを残した意味は何かということを、しっかり勉強して、ぜひ、国民にもいろいろな形でわかってもらう機会にすべきではないかとつくづく思います。
その点で、きょう拝見した文書でも、いろいろ不祥事があったせいでしょうか、政治的中立性とか、いま、申し上げたようなことが文言ではっきり出てこないのです。それを言うと跳ね返りがあるのではないかというふうなことを心配されているのかという気もしますが、それはそれとして、基本的に受信料制度が持っている、そういう意味合い、政治的な中立性を担保することの意味の大きさを、ぜひ、私は、評価して、議論の基礎の一つに据えていくべきではないかという気がしております。
それから、永井さんは「プラス評価を踏まえて」というようにおっしゃったけれども、私も大賛成でありまして、マイナスの部分だけを見ていると、固くなって発想の視野が狭くなりますが、 79 %も支持しているというのは内閣支持率と比較すればわかるように大変なことでありまして、その中で何をすべきか。先程の政治的中立性の問題もそうですが、私も現業を退いて、時間ができたせいか、NHKの番組をかなり多角的にたくさん見るようになりました。以前にもましてこういうこともやっている、これは面白い、ぜひたくさんの人に見てもらった方がいいのではないか。たまたま、戦後 60 年という節目で、アーカイブスを見る機会が多いものですから、そういうことを感じるのです。
つまり、そういうことをたくさんの人に見ていただいて、その評価を聞いて、次にどうつなげるかという議論をして、それをもう一回、理解していく作業を。実はNHKは、政治的な中立性もそうですが、俺たちは俺たちとして十分わかっていて闘っているじゃないかと、たとえば、先程、江川さんがおっしゃっていたと思うのですが、国会対策というのはそういうものを確保するために闘っているのだということでやってきたと思いますが、独りよがりというか、説明しないから、わからないのです。
いろいろな手段、手法、いろいろな場で、そういうことも政治的中立性を担保するために闘っているのだと、がんばっているのだということを知らせる努力、わかってもらう努力をした方がいいのではないか。
それから、いい番組もたくさんあるわけですから、それを独りよがりというと失礼ですが、自分たちの中だけで評価するのではなくて、もっと、国民全体の評価を聞くような仕組みを積極的に作っていってほしい。そういう議論を、ぜひ、していきたいと思います。
最後に一つ申し上げたいのは、受信料制度の問題ですが、冒頭申し上げたように、それが支えている非常に大きな意味があると思いますが、時代環境、経営環境、技術環境の変化で、一律的な受信料制度のあり方ではもたない部分が出てくる。やはり、サービスの多様性、個別性が出てきて、一方でサービスを受ける側の価値観も変わり、受益の度合いも変わるわけですから、基礎的に一律で受信料を払う部分と、サービスと公益性において課金していく部分と、その辺を噛み合わせるような議論が、この懇談会でも、そういう仕組みを議論する場があるのかもしれませんが、あまり画一的にいまの制度を守るためにどうすればいいかとか、そこだけに特化した意見交換はよくないのではないかという気がします。 |