いくつか申し上げたいと思いますが、先程、橋本会長のお話を伺っていて、危機感はあるのだけれども、本当にそういうふうに思っているのかという、そのへんの度合いが少し薄いかなと感じながら伺っていました。
というのは、最初に2つ申されました、不祥事の発覚と公共放送の存立の問題。その上で、NHKの経営課題について、2点プラス1、すなわち「受信料の公平負担」と「デジタル時代への対応」という二本柱、それに加えて「価値観の変化への対応」という、その中身は間違いないですが、私はその中でかなり欠けている部分が危機感の足りないところにつながっていると敢えて申し上げたいと思います。
その上で、一つは、今、金澤さんからもお話がありましたが、時代背景、それから時代変化、これがやはり変わったのです。このタイトルは、「デジタル時代のNHK懇談会」という、ものすごい時代変化を入れているのですが、生活の変化と視聴者・国民の意識変化というのはどう変わったのかというところをつかまえていかないと、受信料の問題には完全に遅れてしまうのではないか。
私の子どもの頃、ご近所でテレビの入っている家は無かったのです。夕飯が終ると、みんな集まって、その家に、「こんばんは」と言って、正座してテレビを見せてもらったのです。それくらい生活の一つのステータスです。町のテレビ屋さんでは、街頭テレビに人だかりがしました。今は、あって当たり前の時代ですが。当時のそういう中で受信料を払うことはものすごく名誉だった部分がある。その変化についていけなかったのではないかというのが一つ。そのなかで言われていたように、払わなくてもよかったのだということがわかってしまったということ。それに対して、どう立ち向かうのか、はっきり打ち出さないといけない。
これは江川さんが“焦り”という言葉を使われたのですが、その上での危機感、どういうふうに見せていくのかどうか、見せることばかりに気をつかってしまうと取り繕うことになるから、本質的な問題をどういうふうにやるのかという抉り方をするのが、この懇談会ではないかと思います。
そのうえで、不祥事が発覚してよかったと思います。「皆さまのNHK」と言いながら、じわじわと、NHKに対する批判が高まり、内在をしていた。これが一挙に爆発した。だから、私は逆に、膿を出すのに、ちょうどいいショック療法だったのではないかと思うのです。
そのうえで、まず一つは、先程のお話のなかで欠けている部分、少し補われたところもあるのですが、NHKの不祥事の始末をどうするかということに対する経営の体制と、体質の問題が浮き彫りにされて、それがものすごい批判になっているということです。
体制と体質の問題について、まず自ら、どういうふうに直すのかはっきりさせる。そのことに対して意見をもらう。そのうえで、受信料という公共料金でやっているわけですから、この公金というものをどう扱うか。予算だけではなくて、使う側の現場の問題も含めた、いわゆるモラルも含めた問題についてどういうふうにするのか。
そのうえで、3つ目は、番組の評価をすべきだということです。これは、民間放送にはできない部分、視聴率にはとらわれない部分、そして、いろいろな層の方々に提供できる番組は、視聴率が少なくても仕方がないという部分で、その番組の評価に対して、「だから、NHKは受信料でいいのです」というところにつなげられるかどうか。それをやったときに、初めて、公共放送としてのあり方という問題に行くのではないか。
たまたま、昨日までG8の労働サミットでロンドンにいて、ブレア首相と会談をしたのですが、そこでも話が出たのは、日本の民営化問題、構造改革の問題でした。イギリスは猛烈に「官」から「民」へと移行させた国です。その中で、公共として残している部分が2つあります。国家公務員と地方公務員は当然ですが、その他、2つしかない。一つは、「ロイヤル・メール」、つまり郵便局です。もう一つが、女王陛下が 10 年ごとに認可をする公共放送BBCです。この2つが、なぜ残っているのかというのが、イギリスの一つの制度のあり方です。日本に、そのことをきっちりと入れると、私は、この「公共放送として」というのは明確になって行くのではないかと思います。
そのうえで、政治との関係、ここは、BBCは明確に意識しています。一時期、大変問題があったようですが、日本の場合、ここが非常にあやふやで、逆に統治されているような感じになっているところが不信感にもつながるのではないかという部分、これをどういうふうにクリアにするか。
それから最後は、金澤さんも触れられたのですが、経営委員会、“約束”評価委員会、この懇談会、理事会、この4者がNHKの再生・新生に対してどういうふうにもっていくのかという、その一番の最後のところを書く役はどこか、明確に、その関わり方をしていかないといけないのではないかと思います。できればここがなるのがいいのかと、メンバーを見て思いました。
その上で、一番欠けているのが労使関係問題です。私の立場だからということではないのですが、「職員一丸となって」というのは、この一年間、よく使われてきましたが、本当にそうなっていたのかどうか。若い人を使う部分が出てきたのですが、職員全部で、組合員も非常に苦労して対応してきたと思います。
そのなかで、2つ資料を持ってきたのですが、一つは、労働組合の立場から、全国の支部・分会が意見討論をしたのがこのくらいの厚さになって出ています。この現状について、どう対応するのか。公共放送として、我々はどういう対応をして存立させていくのか。本当に真面目な職員論議をやっています。見事に出ています。そのうえで、職員が視聴者、市民の皆さんにいろいろな問い合わせをして、NHKに言いたいことを聞こうではないかと、自ら調査した物もあります。
これも、本当に生の声がよく出ている。これは去年の秋にやって、今年の4月までの分ですが、「継続してやる」と言っていますので、こういう物も、ぜひ資料に入れていただいて、討議のなかに加えていただければと思います。
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