先程、NHKの中川理事から報告がありましたが、それを聞いただけではなく、最近のNHKの方とお話をする中で感じているのは、NHKは焦っているなと思うのです。今回の懇談会の1回目を催すのも、何とか6月にやりたい。とにかく目に見える形で何かをやりたい。対外的にこれだけ変わった、これだけやっていることを何とか見せたいという焦りを感じるのです。
もちろん迅速に対応できることを、迅速にやっていくことはとても必要ですが、その一方で、最初に小林委員がおっしゃったように、根本的なところもじっくり問い直すということに、もっとエネルギーを向けるべきではないかという気がします。
たしかに、今の受信料不払いの理由は不公平感ということが統計上は多いのかもしれませんが、体質批判というのでしょうか、体質に対する不信感も根強くあって、そういうことを抜かしてどうやって不公平を無くして受信料を払ってもらうかということにあまり集中しても、それも大事ですが、よくないのではないかという気がします。
体質と絡んで、NHKとしては“約束”というところで、最初に、豊かでよい番組というものをあげていますが、どうやって、若い層にも、年配の層にも、それぞれ受信料を払うことを納得するようないい番組を提供するかということが、すごく大きな課題だと思います。
とくに今は、情報源が多様化しています。ブログなどもいろいろなところで普及しています。多様化した一方で、現在に生きる人たちは非常に忙しいので、やはり質の高い信頼できる情報源を求める気持ちはあるのではないかと思います。
それに対してNHKがどの程度応えているか。もちろん一本一本の番組で、とても質の高いものを作っていることは私も同感ですが、たとえば、報道系の番組とか、社会の問題を扱ったりするときに、政治との距離がどうなっているのか、やはりきちっとしておかなければいけないことではないかと思います。
私は、時々、NHKの番組に出る機会があるのですが、その時も、トップの方針もあったのでしょうが、生番組にこだわるあまり、たとえば、子どもを出演させた討論番組のときに、突飛な発言が出て困るということもあってでしょう、生番組だとどうしても無難な発言をする子を選びがちになったりして、勿体ないと思ったこともありました。それにNHKはリハーサルが多くて、リハーサルを重ねているうちにくたびれて、本番でカメラが回り出したときには、何か読み上げているような感じに私自身もなったことが何度かあったのです。番組作りのあり方についても、この場がふさわしいのかどうかわかりませんが、せっかく外部の人間がこれだけ集まっているので、番組を作るうえでの問題点についても議論をするといいのではないかと思います。
特に、先程も言いましたが、政治の問題については、NHKとして変わりたいのだけれども、たとえば、法律や制度だとか、あるいは国会や政治家だとか、いろいろなしがらみや制度があって、変わりたいのに変われないという部分もあると思います。そういうものはむしろNHKの側から、「こういうところが、実は、非常に苦労しているところである」と、たとえば、国会対策ということがどれだけ大変なのかということについても、本音のところを出していただきたいと思います。
今回出す提言は、形の上ではNHKに向けて出すことになると思います。でも、もちろんこれは全部発表されることでしょう。そうすることで、国民に向けての提言でもあると思います。つまり、こういうところを制度として変えなければいけない。NHKだけの努力では変えられない点を国民に対して示し、共に考えてもらう材料にしたい。あるいは法律を変えないといけないかもしれない。あるいは政治家の対応を変えてもらわないといけないかもしれない。いろいろなところにも問題提起をするものができればいいのではないかと思います。
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