5. NHKの現状説明と各委員からの問題提起 (2)
 

辻井座長 

 

 ありがとうございました。音委員がお見えなのでご挨拶いただけますか。

 

音委員 

 

 音です。よろしくお願いします。

 

辻井座長 

 

 長谷部委員がお見えになりました。先ほど欠席裁判で申し訳ないのですが、座長代行をお願いして、皆さんご了解いただきましたので、ぜひお願いしたいと思います。

 

長谷部委員 

 

 長谷部です。代行の件、身に余ることですが、謹んでお受けします。

 

辻井座長 

 

 今皆さまにお配りしているのは、欠席された梶原委員がご自分のご意見をファックスで送っていただいた「NHK再生に向けて」と、お帰りになった山野目委員の所見メモです。これはお読みいただくことにいたしましょう。

では、お一人ずつ、 2 分くらいお話をいただいて、時間が余れば補足していただくことにしたいと思いますがよろしいでしょうか。家本委員からお願いします。

 

家本委員 

 

 一番若輩者ですが、どうぞよろしくお願い致します 。私がこの委員会の委員に 選んでいただいて一番使命を感じているところを申しますと 、おそらくこのまま受信料の仕組みが続けば、私たちの世代は、50 年、60 年と、受信料を払っていく世代ですので、そういう意味では、これから先、社会の中核になっていく世代が、NHKの公共放送をどう見ているかというのは大切な問題だと考えています。

 簡単に2つだけポイントを申し上げますが、今の若い世代の受信料に対する、あるいはNHKに対する、公共放送に対する見方や声をもっと拾いたいと思っています。

 今、私は慶應義塾大学の環境情報学部という、藤沢にあるキャンパスの、学部の4年の籍が残っていますが、今回のお話をいただいて、周りの学生に受信料を払っているか、一人暮らしをしている学生が多いから聞いてみたのですが、払ってない学生が圧倒的に多い。そもそも受信料がいくらなのかということも知らないということで非常に驚きました。これから先、払っていく習慣を付けてもらうという意味でも、若い世代の理解を取り込んでいくかということは大切なことで、払いやすい、学生でも関心を持てるという仕組みが必要だと思います。

 それに伴って番組の編成上の問題で、もちろん、いくつか若い世代にヒットしている番組が実際にあるということですが、我々の世代、特に 10 代から 20 代ぐらいの世代に向けた番組も、もう少しあってもいい。実際、若い世代に向けて番組を作っていらっしゃると思いますが、きっとこの番組は私たちより 20 歳ぐらい上の方が考えているのかな、ちょっとセンスがずれるな、という番組も感じられるところがあります。

 そういう意味では、若いNHKの職員の方々が、若い世代に向けて発信するというダイレクトな番組の編成も期待しています。

 もう一つは、私自身の仕事に関わることですが、インターネットのサーバーコンピューターを運用管理するという企業向けのアウトソーシングの仕事をしています。これから先、必ずIP化との問題も放送の世界と関わってくるだろうと思います。たとえば映像がどんどんIPの上で乗っていくようになる。レンタルビデオ屋さんに私も行かなくなりましたが、いろんな映像がIPでどんどん家に届くようになるという時代の中で、電波との役割はどういうふうに共生できるのか。それとも別々の役割があるのか、ぜひ議論させていただきたいと思っています。

 つい最近まで、名古屋の民放で、経営の規模もぜんぜん違いますが、アドバイザーの仕事をしたり、あるいは関西の民放でニュースのキャスターの仕事を手伝ったり、小さな経験をさせていただきながら、しかし非常に影響力の大きい放送という世界はインターネットと比べて影響力がさらに大きいということも実感しています。

 そういう中で、とくに若い世代が、NHKにそっぽを向かないという方向を考えることができればいいなと思っています。

 

江川委員 

 

 先程、NHKの中川理事から報告がありましたが、それを聞いただけではなく、最近のNHKの方とお話をする中で感じているのは、NHKは焦っているなと思うのです。今回の懇談会の1回目を催すのも、何とか6月にやりたい。とにかく目に見える形で何かをやりたい。対外的にこれだけ変わった、これだけやっていることを何とか見せたいという焦りを感じるのです。

 もちろん迅速に対応できることを、迅速にやっていくことはとても必要ですが、その一方で、最初に小林委員がおっしゃったように、根本的なところもじっくり問い直すということに、もっとエネルギーを向けるべきではないかという気がします。

 たしかに、今の受信料不払いの理由は不公平感ということが統計上は多いのかもしれませんが、体質批判というのでしょうか、体質に対する不信感も根強くあって、そういうことを抜かしてどうやって不公平を無くして受信料を払ってもらうかということにあまり集中しても、それも大事ですが、よくないのではないかという気がします。

 体質と絡んで、NHKとしては“約束”というところで、最初に、豊かでよい番組というものをあげていますが、どうやって、若い層にも、年配の層にも、それぞれ受信料を払うことを納得するようないい番組を提供するかということが、すごく大きな課題だと思います。

 とくに今は、情報源が多様化しています。ブログなどもいろいろなところで普及しています。多様化した一方で、現在に生きる人たちは非常に忙しいので、やはり質の高い信頼できる情報源を求める気持ちはあるのではないかと思います。

 それに対してNHKがどの程度応えているか。もちろん一本一本の番組で、とても質の高いものを作っていることは私も同感ですが、たとえば、報道系の番組とか、社会の問題を扱ったりするときに、政治との距離がどうなっているのか、やはりきちっとしておかなければいけないことではないかと思います。

 私は、時々、NHKの番組に出る機会があるのですが、その時も、トップの方針もあったのでしょうが、生番組にこだわるあまり、たとえば、子どもを出演させた討論番組のときに、突飛な発言が出て困るということもあってでしょう、生番組だとどうしても無難な発言をする子を選びがちになったりして、勿体ないと思ったこともありました。それにNHKはリハーサルが多くて、リハーサルを重ねているうちにくたびれて、本番でカメラが回り出したときには、何か読み上げているような感じに私自身もなったことが何度かあったのです。番組作りのあり方についても、この場がふさわしいのかどうかわかりませんが、せっかく外部の人間がこれだけ集まっているので、番組を作るうえでの問題点についても議論をするといいのではないかと思います。

 特に、先程も言いましたが、政治の問題については、NHKとして変わりたいのだけれども、たとえば、法律や制度だとか、あるいは国会や政治家だとか、いろいろなしがらみや制度があって、変わりたいのに変われないという部分もあると思います。そういうものはむしろNHKの側から、「こういうところが、実は、非常に苦労しているところである」と、たとえば、国会対策ということがどれだけ大変なのかということについても、本音のところを出していただきたいと思います。

 今回出す提言は、形の上ではNHKに向けて出すことになると思います。でも、もちろんこれは全部発表されることでしょう。そうすることで、国民に向けての提言でもあると思います。つまり、こういうところを制度として変えなければいけない。NHKだけの努力では変えられない点を国民に対して示し、共に考えてもらう材料にしたい。あるいは法律を変えないといけないかもしれない。あるいは政治家の対応を変えてもらわないといけないかもしれない。いろいろなところにも問題提起をするものができればいいのではないかと思います。

 

音委員 

 

 今回、この懇談会にお話をいただいたときに、外部のさまざまな人たちの意見をNHKにぶつけるということでしたので、考えましたのは、おそらくNHK内部では、昨年からの一連の流れの中で、自らのあり方について相当いろいろ論議しているのでしょうが、それは外からみるとどういうふうに見え、また、どうあるべきと考えているのか、率直に話をしてほしいということだろうと、受け取りました。

 率直に申し上げますと、私はメディア研究をやっている立場からNHKをずっと見てきたのですが、内部でご議論をされているのと、外から見えているのとは随分違うのではないかという印象を持っています。NHKのあり方、特にその信頼性が問われる中で、内部ではNHKを何とか変えようと、やっていらっしゃるのでしょうが、受信料を払っている側、一視聴者の側からは、そこがよく見えない気がします。

 NHKは非常に大きな組織であるが故に、内部で相当議論を重ねられているのかもしれませんが、外からみると、どう変わろうとしているのかが見えないのです。そのことが、視聴者不在につながる。

 この9か月くらいの動きというのは、特に受信料に対しての視聴者の不払いなど、ある種の反発といいますのは、今までのNHKのそのような体質に対する反旗と言えるのではないでしょうか。オープンな論議の中でNHKのあり方を論議し、その上で改革を進める。そして、NHKが変わったのだということを明確に示していくことが大事です。そこでも、しっかりと視聴者に説明をしていくことが大事ではないか。

 外から客観的にどう見えるのか、受信料を払っている一人一人、または日本に住んでいる一人一人がどういうふうにNHKを思っているのかを受け止める場、ある種の回路をもっと増やす必要があるのではないかと思います。

 その回路がどういうふうに作られていくのか。どういうふうに開かれたNHKになっていくのか。そのあたりのところもぜひ議論をしていただければと思います。

 もう一つは、最初のお話に戻るのですが、どう変わったのか、明確にしてほしい。たぶん私が到着する前に、懇談会の公開の仕方が議論をされたのかもしれませんが、まさに外から見える、透明性の高いNHKというものをぜひとも作るべきでないか。そしてできるだけ一人一人に説明をしていくような仕掛け、そういうものが必要ではないか。その中で、先程もご説明がありました制度の問題ということも含めて議論がされるべきではないかと思います。

 

金澤委員 

 

 私は制度の問題について長く携わってきておりましたので、制度論として考えてみたいと思います。現在の放送法というのは、NHKと民放、放送大学、この3つの体制によって、放送というものを維持・発展させ、日本文化を向上させていくという形になっております。そのNHKの事業分野を維持するための資金をどういう形で集めるかということで、受信契約の義務付けを行っているわけです。

 そういう意味で、NHKの存在を前提にし、受信契約を強制し、受信料の収納を期待しているということです。今、NHKの不祥事を前提にして、不払いが広がってきているわけですが、この不祥事と受信料の不払いをリンクして考えることは問題なのではないか。不祥事は不祥事として、信頼感醸成のためにNHKとして最大限の努力をしていただきたいと思いますが、不払いに対しては、法律に基づいてきちんと対応していただきたいと思っています。

 ただ、現在のNHKの受信料制度が時代にマッチしたものかどうかという点については、さまざまなご議論があると思います。基本的にはNHKとしては、現在の収納体制、収納努力というものを前提としながら、受信料体系を見直していく考え方のようですが、受信料の制度論まで踏み込むかどうかという点について、私としては、法律的な枠組みの中でやるということであれば、体系の見直しにとどまるのかと思います。そのあたりについても、後ほど、お考えを聞かせていただければと思っております。

 NHKのなかで、「改革・新生委員会」とか、経営委員会、この懇談会、6つの“約束”についての評価委員会、さまざまな委員会、会議を設けられておりますが、それらが全体にどういうふうな形で最終的な結論が出てくるのか、わからないところがありますので、もし、できましたら、それぞれの委員会、会議でのご議論の進捗状況を教えていただければと思います。

 それから、先程も小林委員がおっしゃっていましたが、NHKの外での、たとえば、「規制改革・民間開放推進会議」などで、スクランブル化について議論をしていこうというお話も出ているようですが、NHKについての外でのさまざまな議論についても、できましたら、タイミングを見て、その内容について、お知らせいただければと思います。

 NHKの受信料は、最終的には、NHKの経営そのものに関わってくるわけですが、不払い、未契約者の増大に伴って、NHKの経営に対してかなりのインパクトを与えてくると思います。NHKの経営をこの状況のなかでどういうふうに行っていきたいのか。それから、前の体制のなかで、3か年計画等々を作って、NHKがさまざまな新しい業務をやろうというようなことも考えていらっしゃるようですが、その辺もどういう形になっていくのか、お教えいただければと思います。

 
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