2. NHK会長あいさつ
 

橋本会長

 

 本日は委員の皆様には大変お忙しい中をお越し賜りましてありがとうございます。また、懇談会の参加を快くお引き受け賜りましてありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 後ほどの議論、意見のほうに時間を回したいので、できるだけ私の挨拶はコンパクトにさせていただきます。

 ご承知のようにNHKは昨年夏の不祥事の発覚以来、視聴者、国民の世論の厳しいご批判を浴び、全国で受信料の支払いの拒否あるいは保留という方が相次いでいます。本年5月末の段階ではこの不祥事をきっかけにしました受信料支払い拒否あるいは保留という件数が 97 万件に上っているという状況です。

 平成 16 年度の決算では、受信料収入が平成 15 年の決算、 6,478 億円でしたが、これに比べておよそ 1.05 %、 68 億円の減収ということになっています。受信料収入が前年を割ったのは初めてのことです。NHKの歴史以来初めてということです。このような状況の中で、番組二次使用等の副次収入の増加や経費の削減によって何とか収支均衡を維持してまいりましたが、やはり 17 年度に入っても受信料収納が引き続き大変厳しい局面を続けているということでございます。

 受信料不払いの理由は、当初の不祥事へのお怒りから、次第にお隣も払っていないから私も払いたくない。払わなくて済むのだったら払わないという方が増えております。

 受信料のお支払いを始めたばかりの方々と、長年にわたって継続してお支払いいただいている皆さんへの対応がまったく同じでは、不公平だという考え方、ご感想もいただいております。

 不祥事が引き金となってしまった不払いの動きですが、受信料の収納のあり方、あるいは、さらに公共放送の存立というところまで、より根本的な問題を我々NHKに投げかけられているというふうに考えております。ご承知の通り、NHKの受信料は、公共放送を維持運営するための特殊な負担金という性格に、位置づけがされており、この中では不払いに対する罰則はございませんし、NHKを信頼していただける視聴者の皆様の善意によって支えられてきました。

 この日本独自の受信料システムというものが大きく揺れて、NHKが今重大な岐路に立っていると私は考えております。視聴者の皆様との信頼関係を基礎とした公共放送は、今後、どう生きていくべきなのか。真正面から問われているという状況だと考えています。私は、NHKの現在の経営課題は大きく二点あると考えています。

 第一点は直面する課題として、いかにして受信料の収納の不公平感をなくし、信頼を回復するかという問題です。 6 月 21 日に発表しましたNHKの“約束”、これは視聴者に対して“約束”をさせていただくわけですが、このマニフェストは、受信料の公平負担の徹底、あるいは信頼の回復ということを1つのテーマにしています。

 このためには、受信料をお支払いいただいている方々に、いかにしてNHKと結びついていることによる受益感、NHKを支えることによる受益感をもっていただけるかという施策を考えることが大変大事ではないかと考えています。

 二点目のテーマは、NHKの公共放送としての将来への展開についてです。

 今、世界の放送界は急速なデジタル化の流れにあります。この歴史的潮流を直視して、視聴者の要望に応え、最新のデジタル技術を使い、様々な新しいサービスを提供していきたい、デジタルの効用を視聴者、国民の皆様に還元するという視点から新しいサービスを提供していきたいと思っています。

 当然、この経費負担をどうするかという問題等もありますが、先端的なサービスの提供に対応した合理的な受信料体系はいかにあるべきかというテーマについても検討していく必要があると思っています。これからの放送通信融合といいますか、完全デジタル時代にも、NHKの必要性を視聴者の方々にどう納得してもらうのか。そのためにはどうすればいいのか、この席にお集まりの視聴者各層を代表する皆様方に、公共放送の原点に立ち返って、幅広い観点からご意見を頂き、検討していただく必要があると考えまして、この懇談会を開催させていただくことにしました。

 放送界、あるいはもっと広くメディア界は、多メディア、多チャンネルという時代を迎えて、視聴者の皆さまのNHKに対する評価も当然変わると思います。

 この懇談会には、 20 代から 40 代にかけての比較的若い方々にも加わっていただいています。NHKが将来にわたって、日本社会の中で必要な存在であり続けるために、皆さま方の価値観、若い世代の価値観の変化についても、ぜひご議論をいただきたいと思います。私どもは、委員の皆様のご意見を尊重しまして、今後の改革に生かしてまいりたいと考えております。

   来年の5月ごろにはご提言をまとめていただきたいと思っています。どうかよろしくお願いします。
 
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