NEW2022年07月29日

経済版「2プラス2」って何?

日米の外務・経済閣僚が、経済分野の議論を行う新たな枠組みができ、今月29日にワシントンで初会合を開きます。経済版「2プラス2」と呼ばれるこの枠組み。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や新型コロナウイルスの感染拡大、さらには米中の対立を受けて注目が集まっています。いったい何を議論するの?山田記者教えて!!

そもそも経済版「2プラス2」って、どんな枠組みなんですか?

日本からは外務大臣と経済産業大臣が、アメリカからは国務長官と商務長官が参加し、経済分野をテーマに、定期的に議論を交わす枠組みです。

ことし1月、岸田総理大臣とバイデン大統領による日米首脳会談で合意し、今回初めて開催されることになりました。

今回はアメリカの首都ワシントンで開かれることになり、日本からは林外務大臣と萩生田経済産業大臣が、アメリカからはブリンケン国務長官とレモンド商務長官が出席します。

山田記者
山田記者

なぜいま日米の閣僚が経済分野で議論するのですか?

それは「経済安全保障」について議論する重要性が高まっているからです。

経済安全保障は、各国が持つ固有の技術や重要物資のサプライチェーン=供給網を維持し、国民生活や経済活動に影響が出ないようにするものです。

新型コロナウイルスの感染拡大や、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、さらにアメリカと中国の対立などで、経済安全保障への関心が高まっています。

最近ではAI=人工知能やドローンなど軍事転用が可能な先端技術が発達し、こうした技術を第三国に流出させず、きちんと保護できるかが重要になっています。

一方で中国は多額の融資を通じて、途上国への影響力を増大させていて、経済と外交・安全保障を一体的に考えなければいけない時代になっているんです。

日本としては、同盟国であるアメリカとこうした課題に協力して対応しようとしています。

このため経済版の「2プラス2」が設けられることになったんです。

山田記者
山田記者

「2プラス2」の必要性はわかりました。
では具体的にどんなことを議論するのですか?

3つのテーマが注目されています。

▼1つは「半導体の供給網の強化」です。

半導体はいま世界的に不足していて、経済安全保障の観点から重要物資になっています。

半導体には多くの製造工程がありますが、日本は製造装置や素材の生産に強みがある一方、アメリカには「インテル」のような世界に名だたる半導体メーカーがあります。

それぞれの強みを持ち寄って協力すれば相互補完の関係となり、半導体の安定供給につながるという見方があり、日米で一致したメッセージを打ち出せるかが焦点です。

▼2つ目のテーマは「ビジネスと人権」です。

アメリカのバイデン政権は、人権侵害を理由に中国への圧力を強めていて、6月には、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働によって生産された製品の輸入を禁止する法律が施行されました。

こうした動きを受けて、日本のアパレル大手などは、新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の使用中止を決めるなど対応を迫られるケースも出ています。

このため今回の会合で、企業の活動から強制労働などの人権侵害を排除するための具体的な枠組みづくりなど、いっそう踏み込んだ対応で合意できるかも注目されています。

▼さらにエネルギーや食料の安全保障についても議論が交わされる見通しです。

アメリカと異なり、日本は海外にエネルギーを依存しています。

こうしたなか6月末、ロシアのプーチン大統領が、日本企業も出資する天然ガスの開発プロジェクト「サハリン2」について、事業主体をロシア企業に変更するよう命じる大統領令に署名しました。

日本がこれまでどおり、ロシアから天然ガスを調達できるか不透明になっています。

またロシアのウクライナ侵攻などを背景に、食料の価格も世界的に上昇しています。

食料価格の上昇が続き、人々の生活が危機にさらされれば、世界情勢は不安定になりかねません。

日本もアメリカから、小麦や大豆、牛肉などさまざまな農畜産品を輸入しています。

こうした背景から、食料をどう安定的に調達していくかについても議論されるものとみられます。

山田記者
山田記者

この会合によって、私たちの暮らしや企業の活動には、どのような影響が出てくるの?

経済安全保障の問題は、私たちの暮らしにも深く関わっています。

新型コロナの感染拡大では、マスク不足やワクチン開発の遅れで、思わぬ事態に見舞われました。

最近では半導体不足の影響で自動車やエアコンなどの生産が遅れ、納入待ちの状況となっています。

エネルギーも含め調達不安が長引けば、製品やサービスの価格がさらに高騰しかねません。

アメリカは世界1位の、日本は伸び悩んでいるとはいえ3位の経済大国です。

世界情勢の先行きが不透明ないま、人々や企業が安心して活動し続けられるようなメッセージを、日米で打ち出せるかどうかにも注目したいと思います。

山田記者
山田記者