NEW2022年07月19日

日銀の金融政策決定会合の注目ポイントは?

日銀は、今週の20日から2日間、金融政策を決める会合を開きます。記録的なインフレ抑制のために金融引き締めを急ぐ欧米の中央銀行とは対照的に、日銀は金融緩和策を粘り強く続ける姿勢を示しています。こうした日本と欧米の金融政策の方向性の違いを背景に、円安が急速に進み、これが物価高騰の要因にもなっています。日銀は今回の会合でどういうスタンスを示すのでしょうか。経済部で金融業界を担当する加藤ニール記者、教えて!

今回の決定会合で市場は何に注目しているのでしょうか?

日銀は、今回の会合に合わせて最新の経済と物価の見通しをまとめた「展望レポート」を発表しますが特に物価の見通しに注目が集まっています。

会合では、ロシアのウクライナ侵攻の影響で原油や小麦などの原材料価格の高騰が続いていることから、今年度・2022年度の消費者物価指数の見通しを、前回・4月に示したプラス1.9%から引き上げる方向で、議論することにしています。

日本でもガソリンや電気代、食料品など、身の回りのさまざまなモノが値上がりするなか、日銀は物価の見通しをどのように見ているのか。

市場はここに注目しています。

日銀はデフレ脱却に向けて2013年から2%の物価上昇率の実現を目標としてきましたが、見通しが引き上げられれば、この目標の2%に達することになります。

加藤記者
加藤記者

目標に達したので政策変更につながるのでしょうか?

数字上は目標とする2%に達する可能性がありますが、日銀は、今の原材料価格の高騰を受けた物価上昇は、本来目指している形ではないとしています。

黒田総裁は今月11日の支店長会議で、物価の先行きについて、「当面、エネルギーや食料品の価格上昇の影響により生鮮食品を除く消費者物価の指数は前の年と比べて2%程度で推移すると見られるが、その後は、エネルギー価格による押し上げ効果は弱まり、プラス幅は縮小していく」という見方を示しています。

日銀は、エネルギーなど原材料価格の高騰による物価の押し上げ効果はやがて弱まるのでこれだけでは安定的に2%程度の物価上昇を実現したことにはならないと考えています。

日銀が特に重視しているのは賃金の上昇です。

これが伴わない物価上昇は家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、経済の下押し要因になると考えているのです。

このため黒田総裁は景気を下支えするため、大規模な金融緩和策を続ける姿勢を示していて今回の会合では、こうした方針が確認される見通しです。

加藤記者
加藤記者

日本と欧米の中央銀行の金融政策のスタンスの違いが円安につながっているようですが、今回の会合で日銀の大規模緩和策を続ける姿勢が変わらなければ市場はどう反応するのでしょうか?

市場が政策の違いをどうみるかがポイントです。

市場では、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会がインフレを抑え込むため今月(7月)下旬の会合で、先月に続き、大幅な利上げに踏み切るという見方が広がっています。

またECB=ヨーロッパ中央銀行は日銀の会合と同じ21日に実に11年ぶりとなる政策金利の引き上げを決めるとみられています。

一方、市場関係者の多くは、日銀が今回も大規模な金融緩和策を続けるとみています。

市場はこうした政策スタンスの違いをすでに織り込んでいるとみられますが、日米の金融政策の方向性の違いが際立つ中でこのところ円安が一段と進んでいます。

金融政策に対して市場は敏感になっているのでちょっとしたことでも材料になって円安に拍車がかかることも考えられます。

それだけに今回の金融政策決定会合での日銀の政策スタンスの一挙手一投足、そして記者会見での黒田総裁の発言にはこれまで以上に注目が集まりそうです。

加藤記者
加藤記者