NEW2022年07月15日

円安 なぜこんなに急に?

円安ドル高が加速し、円は24年ぶりの水準まで値下がりしています。なぜこれほど急ピッチで円安が進んでいるのでしょうか?

なぜ円安が進んでいるのですか?

背景には、日本と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いがあります。

アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は記録的なインフレに対応するため、金融引き締めを急いでいます。先月(6月)には、およそ27年半ぶりとなる0.75%の大幅な利上げを決めました。

さらに13日に発表された消費者物価指数が9.1%の上昇と、およそ40年半ぶりの記録的な水準となりました。

市場では、FRBが今月(7月)下旬の会合でさらに大幅な利上げに踏み切るのではないかという観測も出ています。

これに対し、日銀は、今の大規模な金融緩和を続ける姿勢を鮮明にしています。

市場では、欧米と日本の金利差が拡大するとみて、より利回りが見込めるドルなどの外貨を買って、円を売る動きが強まっています。

1月には1ドル=115円台でした。こんなに急ピッチな円安は過去に例があるのでしょうか?

外国為替市場で、ことし1月から6月末までの半年間で、ドル円相場は1ドル=115円台から136円台まで21円、値下がりしました。

これは、日銀に記録が残る1998年以降の1日ごとのデータによりますと半年間で最も大きな値下がり幅となります。

そして、7月に入っても円安はさらに進み14日には1ドル=139円台まで値下がりしました。

円安はどこまで進むのですか?

日米の金利差は今後も拡大が見込まれることから、市場関係者の間ではさらに円安が進むという見方も出ています。

ただ、アメリカの急速な金融引き締めで今後、アメリカの景気の減速感が強まる可能性があります。

そうなればある程度、円安に歯止めがかかるのではないかという見方もあります。

モノが値上がりして困っています。これも円安の影響なのでしょうか?

円安のデメリットは石油をはじめとする原材料を輸入する際のコストがかさむことです。

ロシアのウクライナ侵攻以降、原油などのエネルギー価格や穀物などの原材料価格がすでに高騰しています。円安が進めば、この価格上昇にさらに拍車をかけることになります。

このため、今の円安は、メリットよりもデメリットのほうが大きい「悪い円安」だという指摘が出ています。

政府や日銀は、何か手をうたないのでしょうか?

過去には急激な為替の変動に対して政府と日銀が市場介入を行ったことがあります。

円安に歯止めをかけたいときには外貨準備として持っているドルを売って、円を買うことになります。

鈴木財務大臣は、今月12日の記者会見で円安について「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」と述べました。そのうえで「政府として日本銀行と緊密に連携しつつ、為替市場の動向や経済、物価などへの影響を一層緊張感を持って注視していく。各国の通貨当局とも緊密な意思疎通を図り、必要な場合には適切な対応をとっていきたい」と述べ、市場の動きをけん制しました。

また12日には、来日中だったアメリカのイエレン財務長官と会談し、為替の問題について日米が適切に協力する方針を確認しました。

ただ、円安に歯止めをかけるための市場介入は極めて難しいという指摘もあります。アメリカが記録的なインフレに見舞われる中、物価高につながりかねない“ドル安”を容認するとは考えにくいからです。

日銀の黒田総裁も急速な円安について、「先行きの不確実を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり望ましくないと考えている」と述べて金融・為替市場の動向や経済物価への影響を十分注視する必要があるという認識を示しました。

仮に日銀が欧米と方向性をそろえ金融緩和を修正すれば円安の進行に歯止めがかかる可能性があります。

ただ新型コロナからの回復途上にある今は日本経済を下支えるために大規模な金融緩和策を続けることが重要だと強調しています。