NEW2022年07月14日

携帯電話のローミングって何?他社の通信網が使えるの?

KDDIの通信障害で、電話やデータ通信ができなくて困ったという方、多いのではないでしょうか。
全面復旧まで86時間かかるという前例のない障害となりました。
こうした非常時に、ほかの携帯電話会社の通信網を利用できれば、利用者にとっては安心ですよね。
この仕組み「ローミング」と呼ばれ、今回の通信障害を受けて導入の検討が進められることになりました。
ただ、導入には課題も多いようです。総務省担当の野中夕加記者、教えて!

先日のKDDIの通信障害は本当に影響が大きかったですね。

7月2日未明に発生し、全面復旧までに86時間、およそ3日半かかりました。

全国でauの携帯電話のほか、同じ回線を使っているUQモバイルとpovoでも通話やデータ通信がつながりにくい状況になりました。

119番や110番など緊急通報にも支障が出ましたし、物流や銀行のATMなど社会インフラにも影響が及ぶ事態となりました。

会社は、最大で3915万の利用者に影響した可能性があるとしていて、これだけ大規模で長時間の通信障害は過去に例がありません。

野中記者
野中記者

もし、また同じようなことがことが起きたらと心配になります。

今やスマホがないと仕事も暮らしも支障が出ることばかりですよね。

デジタル化が進めば進むほど、通信網が途切れたときの影響も大きくなってしまいます。

通信障害だけでなく災害時にも、同じような事態は想定されます。

このような非常時の対策として、総務省は「ローミング」という仕組みを導入できないか検討することになったんです。

野中記者
野中記者

ローミングというと、海外旅行のときに使うあれですか?

海外でもふだん使っている携帯電話が使える国際ローミングですね。

それの国内版とイメージしてもらえれば、わかりやすいと思います。

自分が契約している携帯電話会社が通信障害などでつながらなくなった場合、一時的にほかの会社の通信網を利用できるというものです。

この仕組みがあれば、今回のように命に関わる緊急通報さえもつながらないという事態は回避できますよね。

実は、この仕組み、過去に導入の検討が進められたことがありました。

2011年の東日本大震災で携帯電話がつながらなかったことをきっかけに、総務省が検討会で議論したんです。

2011年3月11日 JR渋谷駅前で公衆電話に並ぶ人たち

ただ、当時の3G回線は通信方式が各社で異なっていたため、回線を相互に使うというのは技術的に難しく、結局実現しませんでした。

野中記者
野中記者

でも、もう3Gの時代ではなくなっていますよね。

そのとおりです。

今の4Gや5Gの回線は各社同じ通信方式を採用していて、当時あった課題はクリアされています。

ただ、方式は同じでも、ローミングを導入するとなると、やはり通信設備の改修が必要になります。

また、実際の運用にあたっての課題も指摘されています。

例えば、どのような状況になればローミングを行えるのか、また状況がどこまで回復すればローミングを終えるのかといった問題です。

また、契約していない会社の通信網を使うわけですから、料金の精算をどうするのかというのも検討が必要です。

さらに、もし今回のような大規模な通信障害が起きた場合、多くの利用者が別の会社の回線を利用すると、今度はその会社の回線が混雑しパンクしてしまうおそれがあります。

そのためには設備を増強しなければならず、それが携帯料金に跳ね返ってくる可能性もあるんです。

野中記者
野中記者

国はどう対応しているのでしょうか。

総務省はまず、あらゆる課題を整理して、どのような方法であればローミングが導入できるのか事業者の意見も聴きながら検討していくことにしています。

また、海外の事例についても詳しく調べる必要があるとしています。

ただ、導入するには設備の改修などが必要ですからそう簡単ではなく一定の時間はかかるとみられます。

通信障害や災害が発生したとき、速やかに復旧させて影響を最小限にとどめるのは携帯電話各社の責任です。

ただ、今回のようにそれができなかった場合に備えて、ローミングというバックアップ手段を国と各社が連携して用意しておくことも必要だと思います。

野中記者
野中記者