NEW2022年01月18日

なんで硬貨に手数料がかかるの?

十円玉や百円玉を貯金箱でコツコツためている人、結構いるんじゃないでしょうか? ゆうちょ銀行では今月17日から、硬貨を窓口やATMで預け入れる際などに枚数に応じて手数料がかかるようになりました。こうした動きは、ほかの金融機関でも相次いでいます。
これまで無料だったのに、なんで硬貨を預けるとお金がかかるようになったの? ゆうちょ銀行を担当している永田真澄記者、教えて!

小銭をコツコツためている人、多いと思うんですが、どのくらい手数料がかかるんですか?

永田記者

ゆうちょ銀行の場合、硬貨で預け入れや振り込みを行うと、硬貨の種類にかかわらず、ATMだと1枚から、窓口だと51枚から手数料が必要になりました。

こちらが手数料の詳細です。

結構お金がかかるんですね。例えば五円玉を100枚、窓口で預けようとすると、手数料が550円かかって、手数料の方が高くなっちゃいますよね?

永田記者

そういう計算になりますよね。

これまでは無料で預かってくれたのに、なぜ、手数料がかかるようになったんですか?

永田記者

人口減少や低金利などで銀行の収益環境が悪化し、これまで無料だったサービスを維持するのが難しくなっていることが背景にあります。

ゆうちょ銀行のほかにも、ここ数年、大手銀行や地方銀行で相次いで手数料が導入されているんです。

例えば三菱UFJ銀行とみずほ銀行では、硬貨の窓口での入金は100枚までは無料ですが、101枚から500枚までは550円。

三井住友銀行では300枚までは無料ですが、301枚から500枚までは550円などという手数料を設定しています。

なんで硬貨だとお金がかかるようになったんですか?

永田記者

硬貨の取り扱いには、お札よりコストがかかるからなんです。

入金された硬貨は、専用の機器で種類や枚数を計算しますが、古くなって変形したり汚れたりした硬貨があるうえ、中には外国の硬貨やコインゲームのメダルが混ざっていることもあるんだそうです。

このため、機器が故障することもあり修理費がかかるほか、重くてかさばる硬貨の輸送や保管にも費用が必要になります。

ゆうちょ銀行でかかるコストは年間数億円に上るということです。

年間数億円ですか…。けっこう、コストがかかってるんですね。

永田記者

さらに、これまで預け入れが無料だったゆうちょ銀行には、手数料がかかるほかの金融機関を避けて、硬貨を持ち込む顧客が年々増えていたということなんです。

また、新型コロナウイルスの感染拡大の時期とも重なり、在宅時間が増えて自宅の「小銭貯金」を持ち込む人が増えたことも拍車をかけました。

このため機器を動かす回数が増えて故障が多くなり、コストがさらに膨らんだという事情もあるようです。

小銭の貯金は、これまでどおりとはいかなそうですけど、硬貨の取り扱いが多い商店街のお店などでは影響が大きいんじゃないですか?

永田記者

そうなんです。

私が取材したのは東京・江戸川区の駄菓子屋さん。

この店には、夕方になると子どもたちが毎日、五円玉や十円玉を握りしめてあめやガムなどのお菓子を買いに来るため、すぐに硬貨がたまるといいます。

小銭を持った子どもたちでにぎわうお店ですから、客1人の1回あたりの支払い、いわゆる客単価は200円前後。

これまでは、売上金の小銭を毎日ゆうちょ銀行に行って入金していましたが、限られた利益の中から手数料を支払う余裕はないということで、経営の痛手になると困惑していました。

確かに、駄菓子屋さんに行って、お札で代金を払った記憶はないです…。

永田記者

最近はキャッシュレス決済を導入する動きも広がっていますが、スマートフォンを持っていない子どもも多いですよね?

仮に導入しようとしても決済事業者に支払う手数料の負担も重く、導入は現実的ではないと話していました。

また、硬貨というとすぐに思い浮かぶのが、街なかで行われている募金活動ですよね。

永田記者

そうなんです。

例えば盲導犬の育成を行っている「日本盲導犬協会」は、運営費の多くを寄付や募金で賄っていて、全国およそ1万8000か所の商店などに募金箱を置いています。

集まった募金は、商店などの協力者に郵便局から協会に振り込んでもらっていて、年間1億5000万円ほどを集めています。

ただ、募金箱に入れられるのは一円玉や五円玉がほとんど。

手数料だけで募金額の1割から2割になるおそれがあるといいます。

2割というと、1億5000万円の募金に3000万円の手数料がかかるということになりますよね…。

永田記者

とても大きな金額ですよね。

盲導犬協会には協力店舗から「手数料をとられるなら募金箱の設置をやめたい」という相談も来ていて、切実な問題となっています。

硬貨の取り扱いにコストがかかるのは分かるんですが、公益性の高い募金活動でも考慮はされないものなんでしょうか。

永田記者

ゆうちょ銀行は、例えば大規模災害の被災者に対する義援金などについては手数料の対象外にする方針で、今後は義援金や寄付金ごとに個別の事情を考慮して判断するとしています。

日本盲導犬協会 横江涌真さん

盲導犬協会の担当者は「1円や10円の積み重ねで成り立っている事業なので、募金してくれた方の善意に対して、硬貨だからという理由で手数料を引かれてしまうのは非常に残念だ」と話していて、協会は手数料なしで募金を取り扱ってもらえるよう、ほかの金融機関に要請することにしています。

キャッシュレスの時代で硬貨の取り扱いが少なくなるのは必然的な流れですが、募金活動などにもしわ寄せが及んでしまうとなれば、なんだかすっきりしませんよね。

募金に託された一人一人の善意がしっかり届くような仕組みも必要だと感じました。