NEW2022年01月13日

東証再編で、株価上がる?

「東証1部」に代わる東証の新たな市場「プライム」などに上場する企業が決まりました。市場再編の狙いは、ズバリ海外を含めて投資の資金を呼び込むこと。アメリカではコロナ禍でも「史上最高値」が更新されてきましたが、それに比べると東証の株価上昇の足取りは重くなっています。今回の再編が株価上昇につながるのか?証券業界を担当する仲沢啓記者、教えて!

東証1部って、「しっかりした会社」というイメージがあります。再編で「プライム」になると、どう変わるのですか?

仲沢記者

今回の再編では、東証1部に代わるプライム市場に、「安定的かつ優れた収益基盤・財政状況を有する銘柄」を選定するため、これまでより上場の基準を厳しくしました。

上場する銘柄を絞り込むことで、より成長が期待できる企業を集めて、海外の投資家も呼び込みたいねらいがあります。

そうなると、プライムに上場している企業の株価も上がりそうですね。

仲沢記者

再編のねらいの先には、そういう期待も確かにあります。

しかし、再編だけで単純に株価が上がるかというと、多くの市場関係者が難しいと話しています。

その理由としては、いまの東証1部に上場している企業の84%が、そのままプライムに上場することがあります。

「市場の名前が変わっただけで中身がほとんど変わらない、“看板の掛け替え”だ」という指摘も出ています。

基準が厳しくなったんですよね?それなのに、どうしていまの1部の企業のほとんどがプライムに上場できるんですか。

仲沢記者

それは、いま1部に上場している企業は、基準をクリアしていない場合でもプライムに移ることができるという「経過措置」があるからです。

プライムの1841社のうち、296社がこの経過措置を活用しているんです。

基準の達成に向けた計画書を作って公表することが条件で、基準達成の期限も設けられていません。

経過措置を活用している企業の多くが、「市場に流通している株式の数に株価をかけた“流通時価総額”が100億円以上」という条件をクリアできていないのですが、各社の計画では達成時期が「5年以上先」としているのが1割、なかには「10年後」としている企業もあるんです。

基準を達成していない企業がそんなに多いというのは、再編のねらいと合致していないのでは?

仲沢記者

それは否めません。そのため東証では、企業に対して計画の進捗状況を毎年、公表するよう求めることにしています。

さらに、計画と業績があまりにかけ離れている場合には計画の見直しなどを求めたり、将来的には経過措置に期限を設けたりすることも検討するということです。

再編した後も、いろいろと課題は残りそうですね。

仲沢記者

はい。東証の山道裕己社長も今回の再編は「持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた長い道のりのスタートラインだ」と話しています。

ニューヨーク市場でダウ平均株価が史上最高値の更新を続けるなど、世界の取引所が投資資金を集めて規模を拡大させて、上場企業のさらなる成長につなげている中、東証も立ち止まってはいられません。

例えば、業績が振るわない企業はプライムに残すのではなく、身の丈にあった市場に移したり、M&Aなどで業界再編を促すような取り組みもあっていいのかもしれません。

また、スタンダードやグロースの有望な企業を育て、プライムへの昇格を促すことも大事です。

企業、そして市場の新陳代謝を促すような取り組みが求められます。