NEW2021年03月11日

震災でコンビニが増えた?

全国で5万5000店あるコンビニ。その数は、東日本大震災をきっかけに急増したと言われています。あれから10年。コンビニは今、コロナ禍でこれまでになかった危機に直面しています。人々の生活インフラともなっているコンビニは、この先どうなっていくのか。経済部で流通業界を担当している茂木里美記者に聞きます。

震災でコンビニの数が増えたんですか?

茂木記者

全国のコンビニの数は、2011年から2014年まで、毎年2000店を超えるペースで増加しました。震災前の2010年から2011年の増加数は1031店だったので、2011年以降の3年間は、震災前の2倍以上のペースで増えたことになります。

なぜ震災でコンビニが増えたのか。コンビニ業界に詳しい東レ経営研究所の永井知美チーフアナリストは、コンビニは震災後も営業を続けている店が多かったうえ、大型店に比べて被災地での復旧も比較的早く、社会のインフラとして広く認知されたためではないかと指摘しています。

コンビニを利用する機会が少なかった高齢者や主婦層も店を訪れるようになり、利用が定着したことで、チェーンを展開する本部側も売り上げの機会を逃したくないと出店を増やしたとみられています。

社会インフラとしての役割が増したということですね。

茂木記者

大手コンビニチェーンは2017年に、NHKなどと同じように、国の要請に応じて災害時に緊急支援を行う「指定公共機関」となりました。その役割は一層高まっていると言えます。

コンビニ側も災害時の体制を強化しています。大災害が起きても生活物資をいち早く住民に届けられるよう、配送トラックがどこを走っているかをリアルタイムで把握し、災害に巻き込まれていないかを確認できるシステムや、店舗の状況や従業員の安否を即座に収集するシステムの構築に取り組んでいます。

災害対策のほかにも、公共料金の支払いや、宅配便の荷物の発送など、多様なサービスを担うコンビニは、日常の生活に不可欠なインフラになっています。

ただ、最近はオーナーの長時間労働なども問題になっているようですが?

茂木記者

そうですね。 サービスを拡充させる一方で、この10年で人手不足の問題が深刻化しました。

24時間営業が前提のコンビニでは、夜間に働く従業員が確保できなければ、オーナーやその家族がみずから働かざるをえず、長時間労働につながります。店舗数が急激に増えたことで、コンビニどうしの激しい競争も招き、オーナーの収入減少につながりました。

人手不足でアルバイトの時給=人件費の上昇も起きています。

こうした状況を背景に、コンビニ各社は、一部で営業時間の短縮を認めるなど、コンビニの象徴とも言える24時間営業の見直しも進めています。

さらに震災から10年で、コンビニの後継者不足という課題も浮かび上がっています。契約期間が10年のチェーンでは、この春以降、多くの店舗がオーナーの契約更新を迎えます。

しかしオーナーは高齢化が進んでいるうえ、経営環境も厳しいことから、さらにこの先も営業を続けることに抵抗を持つ人も少なくないと懸念されています。

事業を継続してもらおうと、ローソンはこの春から契約期間を5年に短縮できるようにするほか、ファミリーマートは高齢化したオーナーの事業をほかの人が引き継ぐ条件を緩やかにする対応を始めています。

そんなコンビニは、新型コロナに見舞われたこの1年、多くの人に利用されたのではないでしょうか。

茂木記者

そういうわけでもないんです。

特に都心の店にとっては逆風でした。在宅勤務の増加や外出の自粛で、オフィス街や駅の近くの店舗は、来店客が大きく落ち込みました。

巣ごもり需要で冷凍食品などの売り上げは伸びて、客1人当たりの購入額=単価は上昇しましたが、業界団体のまとめでは、それでも去年のコンビニの売り上げは前年比4.5%減。比較可能な2005年以降で初めての減少となりました。

これからコンビニはどこへ向かうのでしょうか。東レ経営研究所の永井チーフアナリストは「コンビニがインフラとして不可欠な存在だということに変わりはないと思いますが、震災後の一時期のような大量出店の流れは終わったと考えています。これまでコンビニは全国一律の、どこでも同じフォーマットであることが特徴でしたが、今後は地域によってカスタマイズさせ、消費者の細かいニーズにどれだけ応えられるかが重要になってくるでしょう」と話しています。

拡大路線で走ってきたコンビニ。時代とともに、また新たな道を模索していくことになりそうです。